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【学位】放送大学エキスパート その4 学校地域連携コーディネーター


1 学校地域連携コーディネーターとは

1.1.どんな趣旨のプランなのか。

放送大学エキスパートから、もう1つ紹介しておこう。「学校地域連携コーディネーター」である。放送大学によれば、このプランは「学校や地域に関する知識、ボランティアマネジメントに関する知識などを広く体系的に習得し、国が進めるコミュニティ・スクールなどの施策において、学校と地域の連携に際し中心的な役割を担い、要となるコーディネーターを養成する」と説明される。名称・実務性・履歴書に書ける点などを踏まえれば、資格としての側面も有すると言えるかも知れない。

1.2.地域と学校

教育委員会にとって、自治法と匹敵する法律に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」がある。その47条の5に学校に「学校運営協議会」を置くことができると定められており、学校運営基本方針の承認や教育委員会への意見具申を任務とする。この規定は努力義務にとどまるところ、同協議会を置く学校を「コミュニテイ・スクール」と呼ぶ

コミュニティ・スクールは、国の第3期教育振興基本計画で「全公立学校で導入を目指す」とされたので俄に注目された。しかし、考え方は別に新しいものではない。1950年の段階で既にエドワード・オルゼンが「学校は地域を教育の手段として使用するよう学び、学校は地域社会に奉仕するべきだ」と書いている(『学校と地域社会』)。何故、今になって注目されたのか。これは僕の見解だが、我が国が縮小していく過程あることに関係している。人口が減れば行政は今の水準のサービスはできない。金も人もないのだ。つまり、自助・共助・公助でいえば、公助は限界に差し掛かっている。だから今のうちに共助を育て、これまで公助が担ってきたサービスを移そうと考えているのではないか。これは学校だけではなく「自治会」を育てようという施策も同じ発想による。これらは、個人的にはトクヴィルの中間団体パットナムの社会関係資本と響き合う議論ではないかと考えている。もちろん、単なるサービスの事務委託ではないことは強調したい。これは地域主体で創造的に学校を運営していくチャンスでもあるだろう。そういう意欲を持って地域が学校の運営に参加することで、「地域とともにある学校」が実現されるかも知れない。

1.2.必要とされる人材を育成するために・・・

では、どんな人材が学校運営協議会の委員としてふさわしいのだろうか。この点、青山学院大学の山本珠美氏は「学校と教育目標を共有しながら、学校や子どもたちの課題解決や教育活動の充実に向けて建設的な議論ができる人材」としている。

しかし、教職員以外の人は、学校の内情に疎いのが普通だ。学校の様子を知ろうとしてウロウロと敷地に入れば通報されるし、スマホでも出した際には、どんな疑いをかけられても不思議でないからだ。そこで放送大学は、地域住民に対して講座を開き「学校」について学んでもらおうとしているのだ。教育学・社会学・法学・行政学・心理学等の複眼的視点で。加えて、このプランではNPO運営や市民自治の知識も履修する。

2 公務員にとって「学校地域連携コーディネーター」を学ぶ意味

2.1.是非、助成の対象に

目線を公務員に移そう。公務員が取得して何の役に立つか?
行政職員も、やはり地域住民と同様に、学校の内情に詳しくない。なので、教育委員会へ異動したとき、基礎知識を養うのに適している。特に学校管理部局の仕事は、まさに学校と地域住民を結び付け、学校運営協議会の設立や運営を行うことを含んでいる。「学校地域連携コーディネーター」の知識は、必須といっても言い。

近時では役所が公務員の自己啓発向けに資格試験や各種講座受講に対する助成金を交付する例が少なくない。ここで僕は声を大にして言いたいが、放送大学エキスパートは、変な資格やマナー講座よりも遥かに役立つものが多い。特に「データサイエンスリテラシー」や「学校地域連携コーディネーター」はその急先鋒だろう。是非、多くの自治体で助成の対象にしていただきたい。

2.2.複雑な制度と怪奇な文化

「学校」の内情が分からないと言った。これを丁寧に言えば、以下の2つである。
(1)学校や小中学校教職員をめぐる法制度は、極めて複雑多岐にわたる。
(2)学校や小中学校教職員の世界は、行政職とは一線を画す独特の文化に満ちている。

その一端を紹介しておこう。教職員の採用・人事配置・給与は都道府県が行うが、彼らが悪さをすれば、会見で謝るのは市の教育委員会だ。この制度を「県費負担教職員」という。この例のみではなく、「学校」をめぐる法制は、複雑多岐である。

加えて、行政職員や民間の企業人にとって、「学校」という世界は驚きに満ちている。驚くような風習や文化がある。残念ながら、こちらについては、放送大学で学んでも対処できない。
教育委員会に異動になった方は、必要に応じて心理コースから「今日のメンタルヘルス」を履修してもよい。ストレスとのつきあい方が大切である。

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