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【医師論文解説】妊娠中の大麻使用、在胎不当過小児や死産のリスク上昇を示唆【】
背景
米国では再生産年齢の女性の間で大麻使用が増加しているものの、妊娠中の大麻曝露とアウトカムとの関連性は不明確である。大麻使用は胎盤機能不全に関連する可能性があると考えられているが、先行研究では結果が一貫していない。そこで研究チームは、米国8施設の前向きコホート研究「NuMoM2b試験」のデータを解析した。
方法
2010-2013年に8施設で未経産婦9,257例を登録し、妊娠中に3回の尿検体を採取した。検体中の大麻代謝産物である11-ノル-9-カルボキシ-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC-COOH)を測定し、評価した。また大麻曝露パターンを、妊娠初期のみの使用か、初期以降も継続使用かに分類した。主要なアウトカムは在胎不当過小児、人工早産、死産、妊娠高血圧症候群の複合指標とした。
結果
610例(6.6%)が大麻使用ありと判定され、その内訳は妊娠初期のみの使用が32.4%、初期以降も継続使用が67.6%であった。大麻使用群では主要アウトカムが25.9%と、非使用群の17.4%に比べて有意に発生率が高かった。在胎不当過小児と死産が大麻使用群で顕著に多く認められた。妊娠初期のみの使用ではリスクの上昇はみられず、初期以降の継続使用でリスクが上昇することが示された。
論点
生物学的検体を用いて大麻曝露を評価できる点が強みである。在胎不当過小への影響は一貫しているが、死産への影響は新たな知見である。また妊娠段階によって影響が異なることも示唆された。
結論
本研究は大麻使用が胎盤機能不全関連の有害な妊娠アウトカムを増加させることを実証した。母体と新生児のアウトカムを最適化するためにも、妊娠中の大麻使用は避けるべきだと研究者は指摘している。
文献
Metz, Torri D et al. “Cannabis Exposure and Adverse Pregnancy Outcomes Related to Placental Function.” JAMA vol. 330,22 (2023): 2191-2199. doi:10.1001/jama.2023.21146
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所感
今回の研究結果は、妊娠中の大麻使用が胎児の発育や生存に深刻な影響を及ぼす可能性を示唆しています。
在胎不当過小児や死産は、胎盤機能不全に起因することが推測されます。大麻が胎盤形成や機能に影響する生理学的メカニズムがあるとすれば、今回の知見は納得できるものだと思います。
特に妊娠初期だけでなく、妊娠期間中に大麻使用を継続するとリスクが高まるとの結果は注目に値します。妊娠中の大麻使用は避けるべきであることを支持する結果だと言えるでしょう。
今後、大麻が解禁される未来が来たとしても、妊婦さんにはできる限り大麻を遠ざけることを強く勧めたいと思います。
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