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【医師論文解説】尿でわかる!?日本人の高血圧リスク評価の新基準【OA】
背景:
高血圧は心血管疾患による早期死亡の主要な予防可能なリスク因子であり、障害調整生命年の原因として第1位にランクされています。
特に東アジアおよび太平洋地域では高血圧の負担が最も大きいとされています。ナトリウム(Na)とカリウム(K)の摂取は高血圧発症の主要な修正可能な決定因子です。高Na摂取は過剰な体液貯留、動脈コンプライアンスの低下、レニン-アンジオテンシン系機能の障害、糸球体濾過率の低下などを引き起こし、高血圧の負担を悪化させます。一方、食事由来のKはNaの排泄を促進し、Na吸収を抑制し、塩分感受性を低下させ、血管拡張を促進することで血圧を下げる効果があります。
これまでの研究から、尿中ナトリウム/カリウム比(Na/K比)が血圧、高血圧発症、心血管疾患リスクとの関連において、尿中NaまたはK排泄単独よりも優れた指標であることが示されています。しかし、日本人を対象とした具体的な目標値は定められていませんでした。
方法:
日本高血圧学会の尿中ナトリウム/カリウム比に関するワーキンググループが、疫学研究や介入研究のエビデンスを総合的に検討し、日本人のための尿中Na/K比の最適な測定戦略と目標値を提案しました。
結果:
測定戦略:
少なくとも週4日間、様々な時間帯にランダムに採取したスポット尿のNa/K比の平均値を用いることを強く推奨しています。
この方法により、個人内の日内変動や日間変動を考慮した信頼性の高い推定が可能となります。
目標値:
最適目標値:尿中Na/K比 2.0
この値は、日本人の食事摂取基準2020年版におけるNaとK摂取の両方の目標を同時に満たすことができる値です。
実行可能な目標値:尿中Na/K比 4.0
日本の一般集団における尿中Na/K比の平均値を下回る値として設定されています。
対象者:
これらの推奨は主に明らかな健康問題のない個人に適用されます。
重度の腎機能障害や鬱血性心不全などの特定の状態にある患者、長期介護を必要とする高齢者、Na・K代謝に影響を与える特定の薬剤を服用している個人には適用されません。
関連因子:
BMI、腎機能、年齢、降圧薬の使用、社会経済的要因(教育水準、世帯支出、職業)、生活習慣因子(野菜・果物・乳製品の摂取頻度、塩分制限習慣)がNa/K比と関連することが示されました。
介入研究の結果:
尿中Na/K比の自己モニタリングデバイスを用いた研究では、Na摂取量の減少とK摂取量の増加、血圧低下への効果について一貫した結果が得られていません。
さらなる研究が必要とされています。
議論:
尿中Na/K比の優位性:
推定塩分摂取量と比較して、実測値であり複雑な計算を必要としないため、医療・公衆衛生分野での使用が容易です。
NaとK両方の摂取の影響を同時に評価できるため、血圧や心血管疾患リスクとの関連がより強いとされています。
変動性の考慮:
食後2時間以内に尿中Na/K比に反映される食後変化や、睡眠中に最も高くなる日内変動、季節変動などを考慮し、複数回の測定が推奨されています。
アジアにおける重要性:
塩分摂取量が特に中央アジアと東アジアで高く、高血圧の有病率も上昇していることから、アジアにおける尿中Na/K比の臨床・公衆衛生での応用が期待されています。
結論:
尿中Na/K比は高血圧の予防と管理において重要な役割を果たす可能性があります。日本人の健康的な食事パターンを考慮し、最適目標値を2.0、実行可能な目標値を4.0と設定しました。ただし、特定の疾患を有する患者への適用については、さらなる研究が必要です。
今後は、尿中Na/K比の測定が生活習慣の改善努力を支援し、塩分摂取量の低下とカリウムを含む食品の摂取増加を促進し、結果として高血圧リスクを低下させるかどうかを調査する研究が求められます。
※注意: この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的なアドバイスではありません。具体的な治療や生活習慣の改善については、医師に相談してください。
参考文献
Hisamatsu, T., Kogure, M., Tabara, Y. et al. Practical use and target value of urine sodium-to-potassium ratio in assessment of hypertension risk for Japanese: Consensus Statement by the Japanese Society of Hypertension Working Group on Urine Sodium-to-Potassium Ratio. Hypertens Res (2024). https://doi.org/10.1038/s41440-024-01861-x
この記事は後日、Med J SalonというYouTubeとVRCのイベントで取り上げられ、修正されます。
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