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【医師論文解説】9歳がピーク!? 子どもの耳の中の隠れた脅威:子どもの耳を蝕む外耳道真珠腫の衝撃的実態【OA】


背景:

外耳道真珠腫(EACC)は、1850年にToynbeeによって初めて報告された稀な疾患です。

EACCは角化重層扁平上皮が剥離した角質を蓄積し、骨を侵食する性質を持ちます。原因によって原発性と二次性に分類されます。小児のEACCに関する研究は少なく、診断の見落としや誤診につながる可能性があります。本研究は、小児EACCの特徴を分析し、早期診断と正確な分類方法を改善することを目的としています。

方法:

2017年1月から2022年5月までの間に深圳子供病院でEACCと診断された44人の患者の臨床記録とCT画像を後ろ向きに調査しました。

臨床所見、聴力障害、症状、身体検査所見を分析し、病変の進行度と比較しました。EACCの異なるタイプと臨床症状の発生率の相関関係を分析し、CTを用いて聴力障害の程度と骨壁破壊の割合を調べました。

結果:

  1. 患者基本情報:

    • 平均発症年齢: 9.02 ± 3.15歳

    • 性別: 女児17名、男児29名

    • 罹患側: 左側14名、右側32名(右側が有意に多い, P = 0.008)

    • EACC分類: タイプI 10耳、タイプII 23耳、タイプIII 13耳

  2. 症状:

    • 主な症状: 耳漏(48%)、耳痛(52%)、痒み(9%)、出血(26%)

    • タイプI EACCでは痒みが多く、タイプIIとIIIでは耳漏が多かった(P < 0.05)

    • 耳痛と出血の頻度は3タイプ間で差がなかった

  3. 聴力障害:

    • 正常聴力16名、伝音性難聴13名、混合性難聴9名、感音性難聴7名、聾1名

    • タイプIII EACCはタイプIIよりも混合性難聴が多かった(P < 0.05)

    • タイプII EACCで感音性難聴が多い傾向があった

  4. 外耳道骨壁と鼓膜の損傷:

    • 下壁が最も多く侵食(69.6%)、次いで後壁(47.8%)、下壁(54.3%)、上壁(34.8%)

    • 多くの症例で複数の壁が侵食されていた

    • タイプIII EACCはタイプIIよりも鼓膜穿孔が多かった(P < 0.05)

    • タイプIII EACCはタイプIIよりも骨鱗片(scute)の損傷率が高かった(P < 0.05)

  5. 手術と経過観察:

    • 手術方法はEACCのタイプによって異なった

    • 手術方法と分類の一致率は96%

    • 4名の患者が術後1〜4年で再発

議論:

本研究では、小児EACCの発症年齢が平均9.02歳で、右耳に多いことが明らかになりました。これは、綿棒使用などの微小外傷が関係している可能性があります。聴力障害の程度はEACCのタイプによって異なり、早期診断と積極的な治療が聴力保護に重要であることが示唆されました。症状として耳漏と耳痛が最も多く、中耳炎の既往がない場合でも中耳(乳突蜂巣)の炎症が見られることがありました。CTで外耳道内の軟部組織陰影と微小な高密度像が重要な特徴であり、EACCの診断に有用です。

結論:

耳漏、聴力低下、耳鏡検査での肉芽組織の存在は、側頭骨CTスキャンの必要性を示唆します。このイメージング手法は、EACCの早期発見と正確な分類に役立ち、適切な外科的介入の選択を導き、聴力障害のさらなる進行を防ぐのに大きく貢献します。

文献:Zhang, Ya et al. “External auditory canal cholesteatoma in children: clinical manifestations.” European archives of oto-rhino-laryngology : official journal of the European Federation of Oto-Rhino-Laryngological Societies (EUFOS) : affiliated with the German Society for Oto-Rhino-Laryngology - Head and Neck Surgery, 10.1007/s00405-024-08892-7. 12 Aug. 2024, doi:10.1007/s00405-024-08892-7

この記事は後日、Med J Salonというニコ生とVRCのイベントで取り上げられ、修正されます。

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所感:

本研究は、小児EACCに関する貴重な知見を提供しています。特に、症状、聴力障害、画像所見の詳細な分析は、臨床現場での早期診断と適切な治療選択に寄与すると考えられます。しかし、後ろ向き研究であり、サンプルサイズが限られていることから、今後のより大規模な前向き研究が望まれます。また、中耳や乳突蜂巣の真珠腫との比較研究も、EACCの特徴をより明確にする上で有用かもしれません。小児EACCの診療においては、耳鏡検査や症状評価に加え、積極的なCT撮影を考慮することが重要であると考えられます。

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バーチャル医療研究会編集部
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