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CDジャケットを作るときのデザイナーの頭の中
こんにちは。デザイナーの市角です。
普段はデザインや映像を作りながら、
大学で准教授としてデザイン思考について教えてみたり、デザインの考え方とやり方を学生さんや企業、自治体さんに伝えたり一緒になって考えています。
その一環で、デザイナーがどんなふうに考えているのか、
思考プロセスを文章化したほうが良いよなと思いnoteに書いていくことに。
デザイナーの頭の中を公開するシリーズ。
今回はCDジャケットです!
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今回のクライアントさんは、
チューリッヒで活躍していた日本人クラッシックギタリスト、
西下晃太郎さん
その日本で発売する最初のアルバムのジャケット・デザインを
直々に依頼していただきました。
しかも依頼内容は
「そうげんさんの好きにやってください」
これ、良い依頼方法だと思います。笑
頑張るしかなくなりますよね。
まず考えたのは、音楽聴いたことない人への伝え方
晃太郎さんは海外で活躍されていた
クラシックギタリスト。
そのため、日本での本格的な活動はこれが最初となるわけですね。
彼のことを知らない多くの人が、CDジャケットを手にとってもらい
・興味をもつ
・人となりがわかる
デザインは最低限クリアしたいところ。
そこで、デザインのあちこちに
晃太郎さんならではの要素を散りばめて、
なおかつ興味を持つように考えてみました。
人となりをデザイン要素にするには
色々お話する中で、晃太郎さんの半生を反芻します。
彼は早くからニュージーランドに渡り、大自然の中で青春時代を過ごします。その後スイスのチューリッヒでクラシックギタリストとして才能を開花させるわけですが、異国の地で日本人の精神性をアイデンティティにし、禅にも深い造詣があります。
彼の人となりを一言で表すと、
「異国の自然と都市文化によって洗練された日本精神」
ということが言えそうです。
まずは自然の中で育った時代をデザインに入れていく
ジャケットのカバーの部分には青春時代を過ごしたニュージーランドで観た皆既日食をモチーフにそれを反転させて銀河系のイメージを光の中に入れています。
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ニュージーランドには行ったことがありますが
星空や月が本当に美しく、宇宙の中に生きている自分を感じざるを得ない場所だと思いました。そんな雰囲気をカバーに。
スイスの洗練された都市文化をタイポグラフィで表現
その後彼が過ごしたチューリッヒ。スイスの首都ですが、
ここはグラフィックデザイナーにとっては憧れの土地。
数々の名作書体を生み出したタイポグラフィの街です。
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ということで、本ジャケットもタイポグラフィはスイスに影響された工業デザイン的クールさを装っています。精緻で研ぎ澄まされた晃太郎さんの演奏を表す意味合いもあります。
禅の精神を抽象度の高いモチーフで表現
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西洋社会に一人生きる晃太郎さんの心の拠り所となった日本文化、
とりわけ禅の精神。
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これが加わることによりアルバムデザインにぐっと深みと面白さ
心地よい衝突と対立が生まれるようにしました。
山水画的な抽象モチーフと円相図を取り入れています。
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スッキリだけじゃ面白くない。手にとってもらうためのカオス
さて、スイスのタイポグラフィも禅も根底にあるものはミニマリズムです。そのためこの両者を同じデザインに入れると大変相性がよろしい。
しかしスッキリとつまらなく纏まるだけではなく、
なんだかよくわからないグロテスクな要素、プリミティブな要素も水彩モチーフに入れることで見ていて気になる!デザインを目指しています。
晃太郎さんと話していると、古事記や神代の時代の話や、更に昔の日本人の精神性についての知識と興味が膨大で、その良い意味での得体のしれなさ、深みをジャケットの魅力に変換したいとおもったわけです。
さて、こんな感じで、今回はCDジャケットを作るときのデザイナーの頭の中を文章に書いてみました!
そんな晃太郎さんのCDはこちら。
音楽が本当素敵なので一度聴いてみてください。
こんな感じで毎週木曜日にデザイナーの頭の中シリーズ、書いていきます。
その他のデザインのお話はこちら。