名護市長選挙に寄せて

2014-01-19T22:47:46.130+09:00

安倍首相は沖縄に礼儀を尽くそうとした。それがたとえ「お金での解決」であったとしても、沖縄尊重の意思を示したことは為政者としての誠意だったと思う。しかし今回の選挙の結果は、ある意味で、その安倍首相の思惑を超えたところにあったのではないだろうか。

私は沖縄県民が現状の政治に「NO」を示したことを非常に立派だと思う。

中にはこういう人もいる。「沖縄から米軍がいなくなったらどうするのか。中国が攻めてきたらどうするのか。沖縄県民は騒いでばかりで、米軍基地問題をこじらせ続けている。このような態度は日本人のすることではない。よって、沖縄県民は日本人ではない」。中にはそれがエスカレートし、「日本に迷惑を掛ける沖縄県民は死んでも当然である」というような過激な主張をする人々がいる。

しかし、このようなことを日本人が言うものだろうか、と私は常々疑問に思ってきた。彼らの主張といえば、ただひたすら「アメリカの意志に沿え」ということなのである。これでは、精神的にアメリカ人であるも同然ではないか。日本人はいつからこれほどアメリカ人に媚びへつらうようになってしまったのだろう。敗戦したときからか。それとも、原爆が落ちてきたときか。東京が空襲で焼け野原になったからか。

敗北の記憶は人を卑屈にする。子供のケンカでもそうだ。しかし我々は、そこから先へ進まなければならないのではないか。アメリカコンプレックスから抜け出すこと、敗北の屈辱から抜け出すこと、それが本当の「戦後レジームからの脱却」ではないのか。

近代戦争に善も悪もない。より残虐な兵器を所持したほうが勝利することもある。原爆による終戦は日本にそのことを思い知らせた。正義だけでは勝てなかった。その記憶が日本人を卑屈にしたのかもしれない。しかし、だからといって正義、大義を見失ってしまうようでは情けない。

日本はアメリカを敵に回して戦いたいと言っているのではない。ただ、対米追従の姿勢から脱却したいだけなのだ。アメリカと対等な独立国として、植民地のような扱いを受けたり、内政においてアメリカの指図を受けたくないだけである。どんな生き物にも自由への憧れがある。その思いを日本人が抱いてはいけないのか。敗北した者は何百年でも勝者の前で土下座していなければならないのか。そうではないのだと思う。

そしてアメリカは自由と正義の国だ。そんなアメリカこそ、日本人の「独立したい」という気持ちを分かってくれるはずだと私は思う。そうでなければ、それは私の考えるアメリカではない。沖縄の人々も同じである。アメリカ軍に蹂躙された記憶から立ち直りたいだけなのだ。米軍基地や補助金によって、沖縄人なのかどうか分からない人々が増えてしまい、沖縄のコンセンサスも取りにくくなっている。しかしそれでも、名護の人々は明確な意思を示した。これはけして無視することのできない意思表示である。そして、そうした民意を尊重することこそが「民主主義」ではなかったのか。

なぜ、日本人のように装いながら沖縄を貶める人々がいるのかが私には理解できない。沖縄は日本のために犠牲となった。日本の本土が空襲や原爆で焦土となっているとき、沖縄もまた米軍に蹂躙され虐殺されてきた。そうした沖縄の犠牲を忘れるとしたらそれは日本人ではないのだろうと思う。日本に復帰したいと沖縄が意志を示したとき、まさにそれは、日本と運命をともにしたいという沖縄の選択だったではないか。その選択を足蹴にしてきたのがこんにちの日本政府であり、日本人だった。

その日本の姿勢を私は情けなく、恥ずかしく思う。日本人の一人として、一度は琉球王国として独立国だったこともあるような沖縄に過度の犠牲を敷いてきたことを悲しく思う。必要なら基地は日本の各地で分担して負担することもできた。いや、そもそも、なぜ日本に米軍基地が必要なのか? 自衛隊の増強、あるいは国防軍の創設ではいけなかったのか。日本は敗戦はしたがアメリカの属国になるとは言っていない。どこかの誰かがそんなことを勝手に密約したのでないかぎり。

日本が独立したいという意志をアメリカが受け入れてくれることを望む。また、沖縄が独立したいと望むのであれば、こんにちまで彼らを踏みつけにしてきた日本人の一人として、その独立に心から理解を示したいと思う。そして願わくば、緊急時・災害時の自衛隊との連携などの面でも提携しあえる、近しい友好国として仲良くやっていきたいと思う。

いずれにしろ、民意というものは示されねばならない。示されなければ、「何も主張がない」とみなされてしまうのがこんにちの政治だ。誰も、黙っている者の心を汲み取ってくれることはない。そうした優しい人々は表舞台から姿を消してしまったからだ。

私は今回の沖縄の人々の「主張」に勇気付けられた。おりしも現在の日本はアメリカ追従の姿勢を考え直していこうじゃないかという機運が湧いてきている。沖縄はそれと歩調をともにした。沖縄は現在においてまごうかたなき日本の一部である。これからの日本政府が、日本とともに焦土となったこともある沖縄の人々に心からの理解と誠意を示してくれることを祈りたいと思う。

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以前、他のところで書いていた記事の再録です。 まだ記事数が少ないです。少しずつ追加していく予定です。 (このマガジンでは、30本程度の記事…

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