マンガレビュー 『ニーチェ―自由を求めた生涯』
以下の記事でとりあげた、『マッドジャーマンズ』を読んでから、史実をもとにしたヨーロッパのマンガに興味がでてきました。
そこで、発見したのが、ニーチェの人生を描いたマンガ。
人物マンガは、日本では数多くの種類が発売されています。
ぼくも、子供のころに小学館の『学習まんが人物館』を母親に買ってもらい、そのなかで知の巨人・南方熊楠を知りました。
そんな日本人になじみが深い人物マンガですが、ヨーロッパの人物マンガは、いままで一度も読んだことはありませんでした。
内容
ひとことでいうと、哲学の巨人・ニーチェの激しい人生と、知的格闘を描いたマンガです。
ドイツ・ライプツィヒ大学に進学し、そこでショーペンハウアーの本の虜になったのが印象的。
驚いたのが、ニーチェが弱冠24才で、スイス・バーゼル大学の古典文献学担当教授になったこと。
彼が、エリート中のエリートだったというのは知りませんでした。
そこから彼は、じわじわと狂気に陥っていきます。
1889年のイタリア・トリノで、鞭打たれる馬車馬をかばって発狂するニーチェ。
正気を失ったニーチェの目は虚で、絶望を感じます。
きわめつけは、ライプツィッヒ書店に『ツァラトゥストラ』の出版をもちかけると、「もうくるな!」と編集者に一蹴されるシーン。
ニーチェの人間くささが、より身近なものとして感じ、心を動かされました。
作者
作者のオンフレは、1959年にフランス・オルヌで生まれた哲学博士。
高等学校の哲学教師を経て、各地で市民大学を創設した人物です。
絵を担当しているロワ は、1985年パリ生まれの画家で、「ツァラトゥストラ」に魅せられ、数年かけてニーチェの足跡をたどって欧州中を取材。
本書の制作には2年を費やし、ニーチェの人生と思想世界を描き出しました。
おわりに
神の死を宣言し、現代哲学の扉をあけたニーチェ。
彼の激しい人生を、繊細な筆致により、ニーチェ自身の苦悩が伝わってくるような、リアリティを感じさせるマンガが本書。
また、哲学者であり、本書の訳者でもある國分功一郎さんの平明な解説がついており、わかりやすく解説されており、お得な気分です。
そして、登場人物紹介や年譜もついており、地味にありがたいです。
大学生のときにニーチェの代表作『ツァラトゥストラ』を読んだのですが、チンプンカンプンでした。
正直、『ニーチェ―自由を求めた生涯』を読んでも、『ツァラトゥストラ』への理解への橋渡しとなるかは微妙なところですが、ニーチェの思想の背景になったその人生、かれの人間としての苦しみを知ることができます。