レビュー 『評価経済社会』 岡田斗司夫
他人からの印象や評価って、とても大事なんだよな〜。
と、うっすらと気づいていることが、実は経済と密接に関わっていると教えてくれるのが本書。
今までのパラダイムシフトをまとめ、これからの「評価」経済を示しています。
現代は、モノを消費するかわりに、情報を消費する時代。
そんな時代では、モノではなく「価値観」を選択して所有する時代へ変わり、他人から評価され、社会に対して影響力を持つことが、貨幣よりも重要になります。
人とのつながりについて考え直すには良い本で、リアルの友人付き合いに悩む、SNSに疲れた人にとって、社会で起きていることを知るのに役立ちます。
また、今後の経済のあり方について興味のある学生や社会人に参考になります。
最近陰りはじめたオンラインサロンについて気になる人も、読むといいかもしれません。
現在の貨幣経済社会は、「貨幣」を介して「モノ」や「サービス」が交換される社会。
今後におこる評価経済社会とは、自分はどう思われているかという「評価」や「影響」を貨幣にとって変わる社会。
現在はちょうど、その2つの社会の変わり目におり、誰もが他人に影響を与えることを競争する社会ともいえます。
いままで人類は、農耕革命、産業革命、情報革命という3つの革命によって、前の時代には引き返すことができないようになりました。
今回の評価経済社会への移行も、人類が経験した3つの革命と同じように、以前には戻れないような変化であると著者は述べます。
前の時代に引き返すことができないのは、それぞれの革命後では、大切にしている価値観が変わってしまうから。
農耕社会では、「生産できる作物の量」と、その生産量を維持するための仕組みが重要。
産業革命では、「工場で働く労働者の効率性」であり、そのために教育システムや、科学技術の発展が大切。
情報化社会では、「情報の質や信頼性」が善となります。
このようなパラダイムシフトによる社会の断絶を、うまく解釈しているのが、堺屋太一の「やさしい情知の法則」です。
それは、「どんな時代でも人間は、豊かなものをたくさん使うことは格好よく、不足しているものを大切にすることは美しい、と感じる」というもの。
現代にあてはめてみると、豊かに存在しているのは「情報」で、不足しているのは「心の豊かさ」。
「心の豊かさ」とは何かというと、「同じ価値観のグループに参加」することです。
そして、一人が多様な価値観を使いわけ、自分の自気分や状況、立場、好みによって価値観を選択することで、自分の中に新しい人格を作って楽しむことができます。
その人格をコーディネートすると「キャラ」になり、そのキャラこそが、評価経済社会で求められるものといえます。
著者の岡田斗司夫さんは1958年大阪生まれ。
85年にアニメ・ゲーム制作会社ガイナックスを設立し、代表取締役として「王立宇宙軍―オネアミスの翼」などの名作を世に送り、92年退社。
「オタキング」の名で親しまれ、大阪芸術大学の客員教授も務めています。
以前までオタクというサブカルチャーの辺境にいた人ですが、いつのまにかメインストリームで活躍し、世の中のパラダイム変化を肌感覚として経験している人物。
歴史にも詳しく、本書では、長い視点で地球全体を見つめることによって、現代社会を浮かび上がらせています。
お金に代わって評価が経済となり、人気というものが強烈な力になる時代を示しています。
よって本書は、現在のコミュニケーションのあり方が中心になり、実際に評価経済社会をどのように生きていくか、というノウハウを示してはいません。
それを知るには、シリーズとして出版された、実際に評価を得るための『「いいひと」戦略』、自分と他人を4つのタイプに分け、人間関係を改善する『人生の法則』 、面白い人になるための『あなたを天才にするスマートノート』が参考になります。