絵本レビュー 『どこでもない場所』
久しぶりに、不思議な魅力を持った絵本をみつけました。
タイトルは『どこでもない場所』。
1つのストーリーではなく、一つ一つの絵につながりはなく、それぞれがだまし絵になっており一枚ずつ楽しむことができました。
遠近感があやふやの世界の世界を描いており、エッシャーのだまし絵をみているようです。
トレッキングの延長線上に遺跡探索が。
人形遊びの延長線上に、現実に人が住む家が。
うたた寝をしているソファーの延長線上に、海が。
それらの奇妙な世界をながめることで、自身の持っている「絵を楽しむ力」を絵自体に引き出してもらっている感覚をおぼえます。
本作では、文章はアメリカの作家・トムソンさんが担当し、絵をカナダの画家・ゴンサルヴェスさんが担っています。
ゴンサルヴェスさんはカナダのトロントに生まれ、レメディオス・バロ、ルネ・マグリットといった作家に影響を受けたとのこと。
大学を卒業したのち、建築家として働く傍ら、舞台の設定壁画を手がけることに。
トロントの野外美術展で絶賛されていらい本格的に創作活動を開始し、高い名声を得ています。
本作のなかで一番好きな絵は、2人の子供たちがドールハウスで人形遊びをしており、そのドールハウスが、子どもたち自身の部屋へとつながっている絵です。
他にも、海とつながった部屋のソファで寝ている絵や、積み上げられた本でできた図書室には、とても胸をうたれました。
想像力にみちたイラストレーションが、読者を奇妙な世界へさそいこむ絵本。
疲れた時に眺めると、脳の使っていない部分が刺激されて心地よい本です。
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