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50歳おめでとう、私
手術が無事済んで退院したその週、次女から大学の指定校推薦が取れたと電話があった。
ああ、よく頑張ったね。
次女の通う高校は、帰国子女や外国にルーツを持つ友達だらけ。
英会話さえ習ったことない彼女は、「小さい頃からものまね好き」「読書好き」というかなり地味な武器だけでひたすら独学で英語力を磨き、志望校の指定校推薦枠を勝ち取った(でもこの武器って、語学習得にはかなり有効なんじゃないかと最近思っている)。
今のわたしは、一緒にご飯を食べてお祝いができる。
この嬉しさは、ちょっと言葉にならない。
その日は緊急お祝いご飯をすることにして、職場帰りと学校帰りの二人で待ち合わせ。
術後間もない腸を気遣う私と、歯の矯正中で口内を気遣う次女にちょうど良い、参鶏湯を食べた。小さな韓国料理屋で、すごく良い味だった。
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翌日、今度は長女と二人で、次女の進路決定祝い。
私が長期入院している間、次女の相談に乗り続けてくれたのは長女だった。
なにしろ高校の進路面談にも行ってもらったし(笑)
次女がお父さんよりお姉ちゃんのほうが分かってるからって言うし(笑)
なのでご苦労様会。彼女は二十歳超えてますからね、お酒ありで。
もう行くことはないのかもと思っていた地元の大大大好きな居酒屋で、消化に良さそうなメニューを吟味して、〆張鶴で乾杯。
娘と飲む日本酒、沁みる。
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レバー、腸いたわり族推奨食材。合鴨の下に隠れてる。
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牡蠣が消化に良いなんて嬉しすぎる。
和の味をほのかに感じる奥深いフォンデュ。
マスター天才。
トーストしたバゲットも腸いたわり族推奨パン。
あっという間に1か月たち、術後1か月診察の日。
どこも痛くならず、病院にも行かず、平和に1か月過ごせたのはどれくらいぶりだろう。
病院行く前に銀座に寄り道して、ひとり穴子飯。
無事の1か月のお祝い。
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穴子が美味しくて嬉しくて、銀座、新宿、恵比寿、白金、歩きまくった。
食事を再開したら、ウソみたいにずんずん歩けるようになった。
食べて歩く。最高だ。
そして手術してくれた主治医と再会。
これまで診察室で毎回こらえきれず、小さじ2分の1杯くらい涙していた私だったけど、初めて笑って再会し笑ってお別れすることができた。
そして11月になり、誕生日が来て、私は50歳になれた。
初めて病気が分かったときは、散歩中のおばあちゃん、孫の世話しているおばあちゃん、とにかく世のおばあちゃんがJKなんかより眩しかった。
私も普通に年を重ねて、絶対に絶対におばあちゃんになりたい‥‥と切実に思った。道端のおばあちゃんたちをあんなに凝視したのはあの時だけだ。
あれからもうすぐ4年。
入退院を繰り返したり、坊主になったり、身体のあちこちに穴あけたりしたけど、こんなに嬉しい気持ちで50になれた。
誕生祝いに娘たちが内緒で作ってくれた動画には、闘病した私のストーリーがかなりかっこよく編集されていて、それに続く親族のお祝いメッセージのあとには遠方の友達や職場の人たちまで登場でびっくり。
私は私のことだけに明け暮れた自分ファーストな1年だったのに。
みんなは自分の日常をこなしつつ、私のことをいつも考えていてくれた。
誕生会は家族きょうだい親大集合で食卓を囲めた嬉しい1日になった。
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これはバレンシアに住んでいる友人が送ってくれた、地元の伝統工芸品の陶器。大海原を渡るツバメたちのように、50代もタフにいこう。
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手仕事を大切にしてる彼女のセンス健在で感激。
そしてそれに続き、次女が18歳になった。
彼女のリクエストで野菜ふんだんのサラダパーティー。
仕事、学校から帰ってきてみんなでわーっと準備してお祝いした。
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わたしはいつも水切りヨーグルト+生クリーム。
そして最後にとびきりのお祝い。
先日、中心静脈カテーテルのポートの抜去手術をした。
絶食中に私の命をつないでくれたありがたきポート。
緊張しながら自分の皮膚に針を刺していた3か月。
日帰り手術で久しぶりに病棟に滞在したら、たくさんの看護師さんがかわるがわる会いに来てくれた。「キャー♪ほんとによかったね!」「もう会えなくなるんだねぇ。まあ嬉しいことだけど!」
優勝して地元に凱旋したアスリートのような気分。
そして手術室では、以前病棟で仲良くしていた看護師さんがオペ室に異動していて、嬉しい再会をした。彼女も闘病しながら、日々看護師として奮闘している。
手術室に嵐の音楽がガンガン鳴り響いていた。
私が嵐ファンだという誤情報が流れていて、彼女が用意して流してくれていた(笑)。
ファンじゃないから曲名分からなかったけど、苦しかった日々を洗い流すかのようなお祝い続きの日々の締めくくりとして、手術室で聞く嵐はとても良かった。
50代、タフにいこう。ツバメのように。