尾ひれがつく
「尾ひれがつく」
話が伝わる間に実際にないことが付け加わって大げさになる。「うわさに―・く」
——大辞泉 第二版より
先日、ある学会に参加した。
興味のあるポスター展示や講演を一通り見終えた後、企業ブースをぶらぶら歩いていると、面識のない若い男性が突然話しかけてきた。
名札を見ると企業の営業ではなく、どうやら自分の出身大学の学生らしい。
学生:「(自分)さんですよね!?」
誰なんだコイツは
学生:「⬜︎⬜︎ラボで院生をしている◯◯と言います!」
⬜︎⬜︎ラボは、自分が修士課程のときに所属していた研究室で、比較的新しいラボだった。自分はそのラボで2人目の大学院生だった。つまり、◯◯は自分の後輩にあたる。
学生:「色々と噂を聞いていて、(自分)さんにぜひ会いたかったんです!」
どんな噂を聞いているんだ
学生:「⬜︎⬜︎教授と仲が悪くて、暗殺しようとしてたんですよね?」
⬜︎⬜︎教授は、ラボのボスだ。
確かに、ボスは研究ノートの書き方一つにしても細かく指導してきたので、院生時代には鬱陶しく感じることもあった。
しかし、今になって振り返ると、あそこまでしっかり指導してくれる大学教授はそう多くはないと感じており、感謝の気持ちのほうが大きい。
それにしても
暗殺しようとしていたって、どういう話だ?
学生:「僕が聞いた話では、アジ化ナトリウムを飲ませようとしたり、後ろからガロン瓶で撲殺しようとしたとか!」
おいおい。
学会会場で物騒なことを元気な声で言うんじゃないよ。
周りには知り合いもたくさんいるんだよ。
話を聞くと、その噂は代々の先輩から引き継がれてきたもので、他にも、暗殺のために10NのNaOHを調製したとか、教授の部屋のドアノブの鍵穴にパラフィンワックスを詰めようとしたとか、そんな話だった。
確かに、後輩と飲んでいるときに、ボスの愚痴を言ったり、「殴ってやりたい」くらいのことを口にしたことはあったかもしれない。
それが7年の間に「ガロン瓶で撲殺」する話にまでなっているとは。
どうやら、
殴ってやりたい
↓
殴りたい
↓
殴り殺したい
↓
鈍器で殴り殺したい
↓
(ラボにある)ガロン瓶で撲殺したい
と変化したようだ。
学生「めちゃめちゃ危険人物って聞いてたので一度ご挨拶させていただきたくて!」
学生「思ったよりも危険そうじゃないですね(笑)」
学生「給料とかたくさんもらってるんですか?」
学生「今度メシ奢ってくださいよ(笑)」
・・・なんだか失礼なヤツだな
よし
コイツの話をnoteにして
ついでに尾ひれをつけて拡散してやろう
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