小説家「伊坂幸太郎」
『重力ピエロ』
『アヒルと鴨のコインロッカー』
『ゴールデンスランバー』
聞いたことがある作品はあったでしょうか?
これらはすべて日本の小説家、「伊坂幸太郎」が執筆した小説で、
映画化された作品です。
今回は伊坂幸太郎について紹介をしたいと思います。
伊坂幸太郎について
伊坂幸太郎は千葉県松戸市出身、1971年5月25日に生誕した小説家です。
出身は千葉県なわけですが、最終学歴は東北大学法学部ということで彼の小説ではしばしば、東北大学のある宮城県仙台市が舞台となって登場します。
さて、小説といっても色々なジャンルがあるわけですが、彼はどのような
小説を書くのでしょうか。
ジャンルで言えば、ミステリーという枠組みが最も近いと私は考えます。
しかしながら、一口にミステリーと言っても、すぐにみなさんが想像する
ような推理小説かと言われるとそうではありません。
推理小説と聞くと、世界に目を向ければ古くはコナン・ドイルが執筆したシャーロック・ホームズや、日本で言えば江戸川乱歩の明智小五郎、横溝正史の金田一耕助など、探偵が活躍するものが思い浮かぶかもしれません。
しかし、伊坂幸太郎作品にはいわゆる「探偵」は登場しません。
作品全体を通して大きな謎が解明されていくという構造が多いのが特徴です。
ここからはより詳しく伊坂幸太郎の魅力について書いてみようと思います。
伊坂幸太郎作品の魅力
圧倒的な伏線とその回収
伊坂幸太郎作品を語るうえで欠かせないのが作品全体に張り巡らされた伏線です。
伊坂幸太郎作品では多くの場合、1つの物語が複数の登場人物によって語られ、一見無関係に見えることがらが終盤で一気に繋がるため、
「あのときのこのセリフ(行動)はこういうことだったのか!」
こんな発見があります。
終盤になるにつれて伏線が回収されていくのはまさに圧巻です。
具体的なことは小説の内容に触れてしまうのでなかなか書けませんが、
とにかく伊坂作品の最大の特徴と言ってもいいでしょう。
読みやすい文体
もしかしたら普段あまり小説を読まない人は、
「小説ってなんだか硬い文章が多そうだし、読むのが大変そう」
こんなイメージがあるかもしれません。
例えば、2019年に日本語訳が発表され、ベストセラーになった作家「劉慈欣」によるSF小説「三体」の文章の冒頭を引用してみましょう。
これはなんとも難しそうです。
「三体」に関してはもともと中国人作家によって書かれた文章を翻訳しているわけなので、難しくなるのは当然といえば当然ですが、普段から文章を読み慣れていない人にとっては一ページ目で挫折してしまうかもしれません。
では、伊坂幸太郎作品はどうでしょうか。
同じように冒頭を引用してみましょう。
どうでしょうか。
当然、「三体」と比較すると、日本人が書いている文章なので理解しやすいことはもちろんですが、地の文に会話文が盛り込まれていて読みやすくありませんか?
伊坂幸太郎は一人称視点で語られる地の文も比較的平易な表現で読みすいのですが、その他にはテンポの良い会話文も特徴的です。
例えば、
この間に地の文はありません。会話文が多いと普段あまり文章を読まない人でも読みやすいのではないでしょうか。
また、好き嫌いが分かれるとは思いますが、独特の言い回しも伊坂幸太郎作品の特徴です。
例えば、
や
こんな感じです。
人によっては、
「気取っている!」 「なんか合わないなあ」
こんなふうに感じる人がいるかもしれません。
でも、読んでいるうちに伊坂幸太郎ワールドにはまっていくかもしれませんよ。
やっぱり音楽
みなさんは、以前に私が書いた「ジョジョの奇妙な冒険」の紹介noteは読んまれたでしょうか。
ジョジョの魅力で
「洋楽好きにはたまらない」
こんな文章を書きました。
みなさんは小説を読み始めるときはどんなきっかけで読み始めるのでしょうか。
書店で平積みされていたから?
人に勧めてもらったから?
CMを見たから?
本屋大賞や芥川賞、直木賞を受賞したから?
タイトルに惹かれたから?
色んな理由があると思います。
私が初めて読んだ伊坂幸太郎作品は、冒頭でも少し紹介しました、「ゴールデンスランバー」です。
このタイトルはThe beatlesの曲「Golden slumbers」からとられたもので、The beatlesのファンである私は、タイトルにつられて、「ゴールデンスランバー」を手に取りました。
今流行っている音楽と比べるとずいぶん退屈な曲ですが、とっても名曲です。1969年にリリースされた曲ですから、すでに55年経っているわけですが、ファンからすれば色褪せない名曲なわけです。
このように伊坂幸太郎作品には、いわゆるオールドロックや、ジャズのスタンダードと呼ばれるような曲が度々登場します。
他には、「アヒルと鴨のコインロッカー」ではボブ・ディランの「Blowin" In The Wind(風に吹かれて)」、
「グラス・ホッパー」のCharlie Parker 「Now's The Time」
「チルドレン」ではThe beatlesの「I Saw Her Standing There」
など、名曲が沢山です。
最近の、いわゆるJ-ROCKを聴いている方には退屈な音楽かもしれませんが、普段こういった音楽を聴かない方も、小説をきっかけに聴いてみると趣味が広がって楽しいかもしれません。
作品間がリンクしている
伏線回収が見事であることが伊坂幸太郎作品の特徴と書きましたが、他に特徴をあげるとすれば、作品をまたいで登場するキャラクターがいることでしょう。
いわゆる、「クロス・オーバー」と呼ばれる手法です。
「名探偵コナン」に「まじっく快斗」の黒羽快斗(怪盗キッド)が出演するようなものです。
例えば、デビュー作である「オーデュボンの祈り」の主人公「伊藤」は後に伊坂幸太郎が注目を浴びる一つのきっかけになった作品である、「ラッシュライフ」にも登場します。さらにその後発表された「重力ピエロ」にも登場します。
ただし、登場すると言ってもメインのキャラクターとして登場するわけではありません。ほんの少し、例えば通行人や、電話の通話相手として登場するなどです。
これは伊坂幸太郎作品をたくさん読んでいると楽しい仕掛けですが、別に元の作品を読んでいなくても特に影響はありません。
ただ、読んでいて、気づくことができると楽しい、という仕掛けです。
いろんな引用がある
小説は娯楽なわけであって、勉強のために読むものではないと私は考えているわけですが、それでも本を読むことによって知識が蓄えられていくことは楽しいものです。
伊坂幸太郎作品からも、物語だけではなく知識を得ることができます。
たとえば、ゴダールやボブ・ディラン、芥川龍之介や三島由紀夫、ラスコーの壁画などが引用されています。
知識欲がある人は知らない単語やものごとが出てきたときに調べて日常会話で使ってみると、気取った人間になれること間違いなしです。
急に伊坂幸太郎ワールドを現実世界で披露すれば、キザなやつ扱いされることが保証されます。
と、色々と書いてきましたが、とにかく読みやすいので、読書を普段あまりしないという方にもオススメです。
圧巻の伏線回収や、なんとなくおしゃれな言い回し、クロスオーバーなど見どころが沢山の伊坂幸太郎作品です。
オススメの作品は?
2000年に「オーデュボンの祈り」でデビューしてからすでに20年以上経っているわけですから、作品数もそれなりに多いです。
私は先にも書いたとおり、「ゴールデンスランバー」を初めて読んだわけで、映画化もされており名作なわけですが少し文章量が多いので、あまり普段から文章を読まない方には最初の一冊としては勧められないかもしません。
伊坂幸太郎作品にはいくつかシリーズ化されているものがあります。
私のオススメは「死神の精度」、「死神の浮力」からなる「死神シリーズ」や、「グラスホッパー」、「マリアビートル」、「AX]、「777 トリプルセブン」からなる「殺し屋シリーズ」です。
「死神シリーズ」は短編の連作なので、一話一話にかかる時間がそんなに長くならず、読みやすいと思います。
あらすじは、
主人公である死神、「千葉」が一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に対象者の死が実行される。
そんな話です。基本的には登場人物の誰かが死にます。
でもそんなに鬱な話ではありません。どこか爽やかな話が多いです。
「殺し屋シリーズ」は「蝉」、「蜜柑」、「檸檬」、「槿 (あさがお)」、「天道虫」、「スズメバチ」、「兜」など、変わった名前をもつ、個性的な殺し屋たちが活躍する話です。シリーズとは言っているものの、各作品間で物語的なつながりはそこまで強くなく、単独で読んでも成立します。
が、先にも書いたとおりにクロスオーバーがありますので、一部登場人物の名前が別の作品に出てくることがあります。
別に知らなくても違和感なく読み進めることはできるので、どこから読んでも大丈夫です。
「殺し屋シリーズ」で普段あまり文章を読まない方にオススメなのが、殺し屋「兜」が主人公の「AX」です。
普段は妻に頭の上がらない主人公「兜」が家族に隠れて殺し屋稼業をしながらどうにか殺し屋をやめたい、そんな目標に向かって奮闘する話です。
こちらも死神シリーズと同様に、いくつかの短編が連なって一つの大きな物語を作っている作品なので、読みやすいことが特徴です。
また、主人公「兜」の小市民的な家族愛に、家庭を持っている人は感動するかもしれません。
私に言わせればどれも面白いのですが、死神シリーズや「AX」は非常に読みやすいので普段あまり小説を読まない方にもオススメできます。
最後に
長々と書いてきましたが、少しは興味を持っていただけたでしょうか。
このnoteは5000字あるようなので、ここまで読めた方は立派な読書家です。
伊坂幸太郎作品なんかスイスイ読めることでしょう。
万が一すこし読んでみて
「あまり合わないな」
と感じた方がいたら、無理に読むことはありません。
めちゃくちゃ暇なときに読んでみてください。
それでも読む気がわかない方は、映画を見てください。
映画をみてからでも十分小説は楽しめますよ。
気が向いたときに無理せず自分のペースで読むのが楽しいものだと私は思います。
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