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弁護士に聞こう!「賃借人が賃料保証委託契約を解約した場合、賃貸人は賃貸借契約を解除できますか」

(質問)弊社は、賃借人Aとの賃貸借契約において、Aが賃料保証会社に保証委託すること、そして賃料は賃料保証会社からの振り込みとするという特約を設けていました。
しかし、Aは、賃貸借契約を締結して間もなく、保証料の負担を嫌うようになり、保証会社との保証委託契約を解約して、賃料を直接弊社に振り込んできました。
そして、Aは、弊社が振り込みを拒絶すると今度は供託するなどして、弊社との対話にも応じません。
弊社としては、Aとの賃貸借契約を解除したいと思いますが、可能でしょうか。

(回答)結論として、貴社は、Aとの賃貸借契約を解除することは可能だと思われます。
同様のケースを扱った東京地裁平成30年6月5日判決が参考になりますこの判決の事例は、賃貸人は、賃貸借契約において、賃料保証会社と保証委託契約を締結すること、そして賃料は毎月保証会社から支払う方法によること、とする約定を取り交わしていました。
ところが、賃借人は、契約締結から1、2か月の後に、賃貸人に対して、賃料保証委託契約は賃貸人にのみ利益があり、賃借人からの解約権がないなど賃借人には何の利益もない不当な契約で公序良俗に反する無効な契約だとか、仮に有効だとしても保証委託料は賃貸人が負担すべきものだなどと主張して、保証委託契約を解約するとの通知書を送り、保証会社に対しても保証委託契約を解約するとして保証料の返還を求める通知書を送付し、賃料については、直接賃貸人の口座に振り込み始めました。
そうした態度の賃借人に対して、賃貸人は、賃貸借契約を解除して建物の明け渡しを求めたのが、この判決の事例です。
判決は、賃貸借契約において、賃料保証会社と保証委託契約を締結することとする特約があるのに、賃借人は、保証委託契約の解約と保証委託料の返還を求め、賃料は毎月保証会社から支払う方法によることとする特約があるのに、それに従わないなど、賃貸人からの連絡に対して悉く拒絶する態度であるのは、賃貸人との信頼関係が破壊されていると言わざるを得ないとして、賃貸人からの契約解除を認めております。
貴社のケースでも同様のことが言えると思われます。