いまリリースされていたらお互いが幸せだったかもしれない 『Load』 と 『Reload』 / METALLICA
スラッシュ・メタルという呼ばれ方をしながらも完成度の高いアルバムをリリースし続け、そのジャンルに留まらない影響力を発揮してきたメタリカの最新作は、2023年リリースの『72 Seasons』ということになります。ジェイムズ・ヘットフィールドとラーズ・ウルリッヒは60歳を超えていますが、そんな年齢を感じさせない、強烈にヘヴィメタルなアルバムを完成させています。
私としては前作に当たるリフの応酬だった『Hardwired... to Self-Destruct』よりも『72 Seasons』の方が断然シビれる曲が多く、「やっぱりメタリカってすごいな」と嬉しくなったアルバムでした。
しかしながら、繰り返し聴いているかというとそうでもなくて、その原因はやはり私が年を取ったという以外にないと思います。最初は興奮するのですが、長く聴いていられないのです。いやなんとも情けない。
ここ最近、メタリカで聴くのは『Load』と『Reload』です。物議を醸しながらも売れに売れた『Metallica』(通称ブラック・アルバム)の後、立て続けにリリースされたこの2枚は当時、それほど歓迎されていなかったと思います。私自身も「すっかりこの方向性なんだな~」と少し寂しく思っていました。
それでも、特に『Load』はその頃から気に入ってよく聴いていました。バンドロゴや容姿と共にその音もかなり変わりましたが、純粋に曲は良いと思っていたのです。ジェイムズもそれはそれは立派なヴォーカリストになっていましたし。
ただ、まだまだメタルの雄であって欲しかったメタリカの最新作を「なんだかマイルドになった」としか表現できなかった当時の私は、「これはこれで素晴らしい」と周りに言えるほどの確信を持てていませんでした。恥ずかしながら、言ってみれば “隠れ『Load』/『Reload』ファン” だったと思います。
年を重ねた今、改めて『Load』/『Reload』を聴くと、それはただマイルドなメタルになったということではなく、レイドバックと言いますか、ブルースやカントリー、サザンロックを含めたルーツ・ロックにも通じる感じ(ちょっと言い過ぎか?)があることに気づきます。本作からカークもリズムをプレイするようになり、ジェイソンが積極的に参加し始めたことが音の変化(バンド感)に繋がってもいたでしょう。ラーズのドラムもこのくらいの方が気持ち良く響いて、おじさんになった今の私にとって本当にちょうどいいヘヴィメタルなのです。
実質二枚組と考えている『Load』/『Reload』、兼ねてからのお気に入りは「The House Jack Built」、「Hero of the Day」、「Bleeding Me」、「The Outlaw Torn」「Prince Charming」「Attitude」「Fixxxer」辺りなんですが、最近なら「Poor Twisted Me」や「Ronnie」、「Low Man's Lyric」といった当時は異色に思えた曲も楽しめます。
(↑中でもBleeding Meにはシビれる)
いまになって思うのは、もしいまこのタイミングでこの2枚がリリースされていたらお互いに幸せだったんじゃないかなということです。
もしブラックアルバムの後に『72 Seasons』がリリースされていたら、当時の私くらいの年代(この頃で20代後半)は歓喜してそれはもう聴きまくったと思うんですよね(笑)。
そして、いま『Load』/『Reload』がリリースされていたら、メタリカの年齢的にも自然な音楽性の変化として受け入れやすく、こっち(思春期からメタリカと時代を共にしてきた私くらいの年代)もしっくりきて、お互いが幸せだったかもしれないと思ったりするのです。
「後から言ったら誰だってそんなことは言える」とは2大会連続でW杯を逃したイタリア代表の試合を振り返っていたときに出た細江克弥氏の名言(リンクの24分30秒あたり)ですが、ここで書いていることはまさしくそうでして、後からリリース順がこうだったらよかったなんてのは本当にしょうもない話ですし、いま『72 Seasons』でメタリカを好きになった若い人達や熱心なメタリカファンには怒られてしまうかもしれませんが、今のメタリカの年齢なら『Load』/『Reload』みたいな音楽の方がバンド側もやりやすかったんじゃないかなーと思ってしまうのです。やっぱりおじさんだからかな、戯言すみません。
なんにしても、いまもバンドを続けている彼らは心底カッコいいです。