彼らにとっての英雄だったエド・シーラン
京セラドームでエド・シーランを観てきました。
きっと若い人ばかりだろうと思っていましたし、実際そうでしたが、想像していたよりは幅広い年齢層だったことに安心しました。1人で来ている同じ年くらいの人も見かけましたし、さすが現代のアイコン、エド・シーランです。
1stアルバム『+』はとても気に入ってよく聴きましたし、激売れした『×』や『÷』までは結構聴いていました。
ただ、それ以降のアルバムは聴いておりませんで、そんな私が観に行っても良いものかと気後れしていましたが、追加公演のチケットが残っていたことから参加を決意。否応なくAnyPassアプリのダウンロードと登録には「やれやれ」という感じでしたが、転売問題への取り組みの難しさを知る機会になりました。(今回はAnyPassでの受け渡しは必要なかったようで、同行者が揃っていれば私の端末での認証だけで入場できました)
オープニング・アクトとして出てきたカラム・スコットの歌のうまさと礼儀正しさに驚きながら、定刻通りにエド・シーランが登場。会場の盛り上がりはすごかったです。
ライブはバンドで演奏するパートと、エドがルーパーを使いながら単独で演奏するパートに分けて進んでいきました。
センターステージの四隅に配置されたメンバーによるバンド・サウンドは、正直に言えばいささか残念なものでした。これは決して彼らに原因があるのではなく、ドームという会場と、私の座席(スタンド最上段近くで、ステージ四隅の支柱に設置されたスピーカーよりも高い位置でした)によるところが大きかったと思います。アリーナ席なら気にならなかったのかもしれません。
エドが単独で演奏するパートでは音の問題を感じることはなく、ループ・ペダルを踏みながらレイヤー・サウンドを作り上げていくエドに改めて驚愕しました。会場の大きさに負けない迫力を生み出しているのは(概ね)ギターで表現される彼のリズムによるところが大きかったと思います。歌のうまさはもちろんなのですが、少し小さめのアコースティックギターで刻むリズムはとてつもなくカッコよく、それをその場で重ねて作り出していく音楽に圧倒されました。
しかしながら、このライブで最も感動させられたのは、私の少し前方に陣取っていた7人くらいの若者達(男子)でした。一列横並びで席を確保しており、ライブ開始から熱狂していました。
前半の早いうちに“Castle On The Hill”(『÷』収録)が始まり、好きな曲に喜びながらふと前方の彼らを見ると、横一列全員で立ち上がって肩を組み、リズムに合わせて身体を左右に動かしながら(後ろから見ているのでわかりませんがおそらくは)歌っていたのです。その様子は本当に、心から楽しそうに盛り上がっていて、とてもカッコよく、その姿にめちゃくちゃ感動してしまいました。
“Castle On The Hill”で歌われているのは、故郷へ向かう車で“Tiny Dancer”を口ずさみながら(それにしてもこんなにも自然に登場してしまうエルトン・ジョンはもはや神)、若くて無茶をしていたあの頃とその仲間たちを懐かしく愛おしいものとして思い出している様子なわけですが、彼らはまさしくその若くて無茶をしている年頃の仲間たちであり、そんな彼らの“いま”を羨ましく思いました。この曲のように、肩を組んで歌ったことを懐かしく思い出す時が来るのでしょう。
もちろん音楽はみんなのものなのですが、それでもこの場所、この時間は、ルーパーを駆使したレイヤー・サウンド以上に普通の弾き語りに感動してしまうおじさん(←私)ではなく、やっぱり彼らの為にあるんだなと思い、涙腺ゆるみました。
私にとってブライアン・アダムスやエディ・ヴァン・ヘイレン、アクセル・ローズやカート・コバーンが英雄だったように、現在の彼らにとっての英雄がエド・シーランなのかもしれません。
たった1人で彼らをあんなにも熱狂させるエド・シーランは、本当に素晴らしかったです。