絶妙な洒落ポップ加減が極まった『Running In The Family』 LEVEL 42
暑い日が続きますね。無駄にビールばかり消費してますが、最近のお気に入りはサッポロのGOLDSTARです(正確にいうとビールじゃなく発泡酒ですね、すみません)。
ビールを飲みながら、暑苦しくなく、聴きやすい音楽を求めて、レヴェル42を聴いております。
レヴェル42が1987年にリリースした『Running In The Family』は、どういうわけかバンドについて一度も掘り下げることがないままに今日まで愛聴し続けているアルバムです。
せっかくなので少し調べてみると、レヴェル42は1979年にイギリスで結成されています。ドミニク・ミラーがメンバーだったこともあるそうなのですが、ベース兼ヴォーカルのマーク・キング、キーボードのマイク・リンダップ、ローランド(ギター)とフィル(ドラム)のグールド兄弟の4人がメンバーで、『Running In The Family』まではこの4人で活動しています。
マーク・キングの超絶スラップベースをはじめ、高い演奏スキルを活かしたジャズファンクバンドとして人気が出始めたそうなのですが、徐々にポップ要素を取り入れていくようになり、1985年に6枚目となる『World Machine』をリリース。ここから “Something About You” が米国トップ10ヒットとなって、私もこの曲で彼らを知りました。
バンドを知ったところでリリースされたのが本作『Running In The Family』で、CDをレンタルしてマクセルのカセットテープに録音し、「入れ込む」というほどではなかったもののかなりの頻度で聴きました。
なんといってもメロディーが好みでした。なんだか難しいことを言ってきそうな顔をしたマーク・キングの歌も、熱唱する感じじゃないのが聴きやすくて良かったのかもしれません。
冒頭から80’sサウンド全開な ⑴ Lessons In Loveですが、本当によく出来たポップ・ロックだと思います。ベースのグルーヴも洒落てます。
⑶ Running In The Family はそれまでのジャズファンク要素を残しながらもキャッチーに仕上げられたヒット曲です。そのキャッチーなメロディには似合わない歌詞で、解釈によっては恐ろしく感じます。血筋って怖いですもんね。
⑷ It’s Over も物悲しくも美しいバラードですし、⑹ Two Solitudes ではここまでコーラスで優しい声を聴かせてくれていたマイク・リンダップがヴォーカルを取り、素敵なメロディを歌ってくれるのですが、その歌詞は人と人との感情的な隔たり、心の中での孤独がテーマです。この感じがイギリスのバンドっぽさでしょうか?
現在の私のお気に入りは当時のCDだとボーナストラック扱いだった ⑼ Freedom Someday です。現在の世界情勢をみると、もっと多くの人にメロディを楽しみながら聴いてもらいたい曲ですね。
本作におけるローランド “ブーン” グールドによるギター・ソロは、コンパクトかつ構成がしっかりしていて自然と覚えてしまうようなものばかり。素晴らしいです。
そして、⑹ でヴォーカルを取るほどのマイクがいることで、どの曲もコーラスによって華やかな響きが生まれ、それがキャッチーさに繋がっていると思います。
もちろん、マーク・キングのベースは本当にすごいです。いささかうるさく感じる人もいるかもしれませんが、やっぱりこのバンドの大きな個性になっています。ライブでもこれを弾きながら歌ってますから、もう訳分かりません。
改めて聴いてみると、80’s 的な音作りではあるものの、本当に洒落てて適度にポップで素敵なメロディがたくさんあるアルバムです。それを支える演奏の確かさが、長く聴いてこれた理由なのかもしれません。
レヴェル42は洒落ポップを極めた本作で最も大きな成功を収めたと言えそうですが、それはジャズファンク路線で始まったバンドにおける音楽的方向性の違いにも繋がり、グールド兄弟は脱退してしまいます。バンドって難しいですね。