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もはやモテるのは彼のせいではないと思えてくる 『Born and Raised』 JOHN MAYER

このほど、ジョン・メイヤーがInstagramで21年在籍したColumbiaレコードから離れる旨を報告しました。背景にどんなことがあるのかはわかりませんが、これまでの名作の数々を供給してくれたコロムビアにも感謝したい気持ちです。

私がジョン・メイヤーを聴いたのは少し遅くて、音楽に関して信用できる学生時代からの友人に「ジョン・メイヤーは聴いた方がいいと思うよ」と控えめに(彼はいつも控えめ)提案されたことがきっかけでした。彼が言うのであればと早速レンタル店へ行き、そこにあった『Battle Studies』を借りてきたのが最初でした。

現代の3大ギタリストの1人という認識だけはあった私にとって、たまたま手に取った『Battle Studies』が想像を遥かに超える歌ものだったのは驚きでした。

しかしながら、車内で全くスキップすることなく聴ける曲のクオリティは素晴らしく、アルバムを通してスティーヴ・ジョーダンが関わっていることに再び驚きました。

気に入った私はすぐに借りれるものを全て借りてiTunesに取り込み、ジョン・メイヤーを全シャッフルで聴きまくったものでした。中でも特に気に入ってその背景が知りたくなり、CDを購入したのがその時点での最新作だった『Born And Raised』です。

『Born And Raised』は言ってみればアメリカーナに分類されるような音楽で、それまでとは少し違った雰囲気を持ったアルバムと言えます。

喉の不調に加えて、さすがにモテ男ぶりを騒がれ続けることに疲れたのか、都会の喧騒から離れて作られた様子の本作は、アコースティック・ギターの比重は高まっていますし、曲はポップとフォークとロック、それぞれから等距離の位置にあるような印象で、これが何度聴いても飽きずに聴き続けられる貴重なアルバムにしてくれています。

⑸ Something Like Olivia でジム・ケルトナーが叩いていたり、 ⑹ Born and Raised にデイヴィッド・クロスビー、グラハム・ナッシュが参加しているのを見ると今更ながら認められてるんだなと感じますし、グレッグ・レイスのスティール・ギターも効きまくっていて、この辺りが本作の方向性を表していると思います。

収録曲はどれも素晴らしいのですが、その中でも繰り返し聴いているのが ⑼ Walt Grace's Submarine Test, January 1967 です。

冒頭のトランペットはなんとクリス・ボッティ! スティングのトスカーナライブDVDで何度も見ていることもあってそれだけでグッときますが、曲も物語も極上なのです。顔が良くて、背が高くて、歌が上手くて、ギターは死ぬほど上手いうえに曲も書けて、そこにこんな物語をのせることができるのですからモテるのは仕方がありません。

こんな男が ⑻ Love is a Verb と歌うのですから始末に負えません。しかもこれがまたグッとくるいい曲なのです。⑵ The Age Of Worry も映画のような、とてつもない拡がりを持ったお気に入りの1曲です。

本作の雰囲気は次作『Paradise Valley』まで続きますが、その次の『The Search for Everything』では恐ろしく洒落たポップ・ロックへ向かい、2021年の『Sob Rock』ではそこに80年代の香りが加えられ、それが嬉しくなったおじさんは聴きまくりました。

Dead and Companyであんなに弾いてるギターをよくもこんなに抑えることが出来るもんだと感心しますが、各曲に散りばめられたギターはセンス、センス、そしてセンスです。

その音楽は本当に素晴らしいジョン・メイヤーですが、やっぱりそれ以上にモテ男として知られてしまっているかもしれません。最近でも、ホールジーの「3am」の曲終わりに出てくる留守電を聞くと本当に気さくでまめな人なんだなと思わされますし、こうなってくるとモテるのはもはやの彼のせいではないのでしょう。

世の中は不公平なもんですが、アデルに向かって結婚を勧めるかどうかを聞いたのにも笑わせてもらいましたし、与えてくれているエンターテイメントの全てに感謝です。

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