印象的なベースラインが満載の 『When You See Yourself』 KINGS OF LEON
Kings Of Leonの8枚目となる『When You See Yourself』は、それまでのアルバムと比べるとアリーナぶち上がりソングが少なく、地味な印象をお持ちの方が多いと思います。
本作がリリースされたのは2021年3月で、この雰囲気にはコロナ禍が影響しているのかと思いましたが、iTunesのレビューには「アルバム自体は2020年初頭には完成していた」と書かれていますので、そういうことではなさそうです。
ただ実際のところ、アルバム終盤までの間にKOLらしさを感じる曲は ⑵ The Bandit や ⑷ Stormy Weather くらいで、それ以外はさほど派手な展開がない、渋めの曲が並んでいます。『Only By The Night』あたりと比べるとかなり落ち着いたアルバムと言えます。
しかしながらそこはKOL、それらの曲もただ地味なだけにはなっていません。どの曲もスキップすることなく心地よく聴けるのは、相変わらずどの曲でもカッコいいジャレッドのベースラインによるところが大きいと思います。本作ではこれまで以上に曲の印象を決定づけるようなものが多くてシビれます。
そんなベースラインに心を奪われながら聴き進むと、遂に ⑽ Echoing でKOLらしさ全開、「キターーっ!!」となる瞬間を迎えます。この曲だけ聴いてももちろんカッコいいですが、ここはぜひ1曲目から聴いて ⑽ が始まった時の高揚感を味わってほしいです。
そしてこの盛り上がりの後、最高に優しく美しい ⑾ Fairytale が流れて本作は終わります。いやまったくもって美しい。この最後の2曲をより深く味わう為に1曲目からシャッフルせずに聴くのがこのアルバムの正しい聴き方だと思います(偉そうにすみません、聴き方は人それぞれです)。
主夫になった上に新型コロナウイルスの感染拡大も加わって、家で音楽を聴く時間が増えました。そうするとリビングで長く鳴らしていても疲れない音楽を求めるようになってきたのか、選ぶのはロックアルバム(←ヘヴィメタルやハードロックを含みます)ばかりではなくなり、クラシックを選んだ時でも交響曲より室内楽になることが増えました。
これほどまでに家での過ごし方が大切になる世界に変わってしまうとは思ってもいませんでした。
そんな中でリリースされた本作は、確かに派手さはないものの、ずっと飽きずに聴くことができていますし、リビングで少々音量を上げて聴いても疲れることがありません。
本作は(バンドがこんな表現を喜んでくれるかどうかはわかりませんが)自粛生活にもぴったりの大人ロックアルバムに仕上がっていると思います。