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暑い夏にぴったりなハードロック 『Double Eclipse』 HARDLINE
暑い日が続きますね。大阪の“危険な暑さ”は道産子にはなかなか厳しいです。
そんな暑い日にはこれ。爽快なハードロックが聴けるハードラインの『Double Eclipse』が、いくぶん過ごしやすくしてくれています。
バンド結成の経緯を見てみると、隣のスタジオを使っていたジョエリ兄弟(ヴォーカルのジョニーと兄でギターのジョーイ)のバンドを、ニール・ショーン(当時はバッド・イングリッシュのギター)が気に入り、プロデュースを引き受けたところ、自分も参加したくなったニールがディーン・カストロノヴォ(ドラム)とトッド・ジェンセン(ベース)を連れて加わって出来たのがハードラインのようです。
ジョエリ兄弟と一緒にやっていた人達はどこへ追いやられたのか心配になりますが、急に迫力のある名前が加わってできたバンドは1992年に『Double Eclipse』をリリースします。
当時、BURRN! 誌で広瀬和生氏が絶賛していたのが聴いたきっかけだったはずですが、これは本当によく聴きました。
ディーンのかっちょいいドラムから始まる ⑴ Life’s A Bitch や、典型的なアメリカン・ハードロックの ⑵ Dr. Love は、バンドのポテンシャルを窺い知ることができ、アルバムの先が楽しみになります。
そして、ここからが本作の本領発揮です。
日本盤か否かで変わってくるのですが、日本盤では3曲目にボーナストラックとなる “Love Leads The Way” が配置されています。これがファンの間では名曲の誉れが高い、大人気曲なのです。安心安全の展開が気持ち良すぎるハードロックなのですが、「何故これが日本盤のみなのか?」と私も信じられませんでした。今日も灼熱のベランダでこれを聴きながらゴキゲンに洗濯物を干しました。残念ながらSpotifyにありませんが、YouTubeでは聴くことができます。
⑷ Rhythm From A Red Car は車でよく聴きました。不思議なもので、車でCDを聴けるようになった頃よりも、カセットデッキしかない中古のジムニー(幌)で、わざわざテープに録音して聴いていた頃の方が思い出されますね。あの車でもっといろんなところへ行けばよかったなー。ニールのリフはヘヴィメタル寄りで、バンドのノリもアゲめなのですが、ジョニーのヴォーカルが全く負けておらず、超気持ちいいです。
⑸ Change Of Heart は、このバンドのもう一つのウリと言っても良さそうなメロディアス・ハードロック・バラードです。ジョニーのヴォーカルも、加わるコーラスも典型的なもので、ディーンのドラムも心地良く響きます。ニールのギター・ソロは緩急の見本です。
⑹ Everything は、中にはこれが一番好きという人もいるかもしれない良質メロディアス・ハードロックです。リフもサビも展開もお望み通りで、今聴いても安心しますね。
⑺ Takin’ Me Down では少し雰囲気を変えて、リフ主体のヘヴィな曲となります。これや ⑻ がジャーニーやバッド・イングリッシュとの違いになるかもしれません。ジョニーはこういう曲でもその声を活かして歌い上げています。
最も話題になっていたのが ⑻ Hot Cherie だったと思います。彼らのオリジナル曲ではなく、ハードライン結成以前からジョエリ兄弟が演っていた曲(Danny Spanosが1983年にリリース)になるそうなのですが、哀愁漂うサビの美しいメロディにはイチコロでした。ディーンが叩き出すビートはもちろん、全てのフィルが超効果的すぎる。
⑼ Bad Taste でハードロッキンした後、再びのバラード ⑽ Can't Find My Way です。⑸ と甲乙つけ難いですが、私はこちらの方が再生回数は多いです。ジョニーって歌上手いなーと思いますし、ニールのエンディングのギターソロは名演です。
⑾ I’ll Be There は、もう恥ずかしくなるくらいのアメリカン・爽快・ハードロックで、つまりは「こういうのが好きなんすよー」となってしまうのです。今や立派なヴォーカリストでもあるディーンですが、この頃はバックコーラスでどのくらい歌ってるんでしょう?
⑿ 31-91 はニールによるしっとりとした美しいギターインストで、ここでのメロディーは後のジャーニー『Trial By Fire』の “Still She Cries” でも出てきます。
雄大な響きで、ニールもしっかりと弾きまくる ⒀ In The Hands Of Time で終わります。 こうやって振り返ると、全曲よく聴いてたなーと思いますし、やっぱり夏には合いますね。
残念ながらこのメンバーでのアルバムは本作限りとなってしまいます。ジャーニーとは比較できないかもしれませんが、バッド・イングリッシュよりは楽しみだったので残念でしたし、再びハードラインという名前を聞くのには2002年まで待たなければなりませんでした。
何せ本作が出たのは1992年。前年にリリースされた『Nevermind』でニルヴァーナが世界を席巻していた頃で、こういう音楽は居場所を見つけにくくなっていたと思います。
ボン・ジョヴィの『Keep The Faith』やデフ・レパードの『Adrenalize』は健闘していた記憶がありますが、この年にはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやブラインド・メロンがデビューし、アリス・イン・チェインズの『Dirt』もリリースされています。
この辺りからはパール・ジャムやサウンドガーデン、スマパン、メルヴィンズなどの時代になっていき、実際に本作以降はこういったアメリカン・ハードロック・アルバムは少なくなっていきました。1994年にはカート・コバーンが亡くなり、重苦しい雰囲気はより長く続くことになった印象です。
結局は私もオルタナ / グランジ、ストーナーなんかもそれなりに聴きましたし、最近でもカイアスなんかを掘り起こして聴いていますが、当時を振り返ると、失われがちだったメロディを無意識に求めて本作を長く聞いていたのかもしれません。そう考えると私の90年代を救ってくれた1枚になりますし、本作が良質なハードロックであることに間違いはないと思います。
おじさんである私にとって、暑い夏に合う音楽はまさしくこういうのなんです。