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セクシーなだけじゃなかったマイケル・ハッチェンスとバンドの実力に驚いた 『Live Baby Live』 INXS
80年半ばから90年代にかけてのINXSの売れっぷりは本当にものすごくて、特に『Listen Like Thieves』、『Kick』、『X』からのシングルは立て続けにヒットしていました。
特に印象的だったのは、マイケル・ハッチェンスのセクシーさと映像にも凝った「What You Need」や「Need You Tonight」のMVで、その音楽や音の作りも洒落たものだったことから、いわゆるロックバンド的な要素はそれほど感じていませんでした。
そんな私の至らなさにバンド側が気づいたわけではないと思いますが、1991年にライブアルバム『Live Baby Live』がリリースされます。人気絶頂期の世界各地でのライブが収録されたアルバムはその頃の熱狂ぶりが伝わるものになっていて、そこで初めてINXSのライブ演奏を聴いて「ライブの方がロック的で何倍もかっこいい!」とバンドとしての凄さに度肝を抜かれることとなりました。
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その後、バンドは同じタイトルでウェンブリー・スタジアムでのライブをビデオテープでリリース。先のライブアルバムでその演奏力の高さと会場の熱狂を知った私はどうしても映像で見たくなり、当時決して安くはなかったライブビデオを購入、これにどハマりしたのです。
ライナーの曲リストに頭出し用の時間を書き込んだりして、それこそ擦り切れるくらいに観ました。学生時代に何度も一緒に観た友人は、卒業を控えて部屋を引き払う前にも遊びに来て、「さて、最後にINXSのライブ観ますか」と言って再び頭から観たことも思い出です。
このライブ、まず驚いたのはマイケル・ハッチェンスの歌のうまさです。そして、言うまでもありませんがどのカットでも絵になるカッコよさ。セクシーなうえにこの歌の上手さ、そりゃモテたなんてもんじゃないでしょう。
そしてバンドのうまさに心底、驚きました。特にドラムのジョン・ファリスは上手いわ、かっこいいわで惚れました。意外だったのがギターとサックス担当のカーク・ペンギリー。赤のスーツで決めたカークがこれまたいちいち絵になるのです。作曲の中心的な存在でもあるアンドリュー・ファリスはキーボードを中心に、楽器を持ち替えながらアンサンブルを形成していきます。
ライブは照明以外には特に凝った演出があるわけでなく、6人が出す音だけで進んでいきます。今だとそこかしこにあるラップトップなんかは見当たりませんし、デジタル的な制御が感じられないライブのカッコ良さには痺れます。あまりライブ向きとは思えない(ライブでの再現が難しそうな)曲でもバンドの力量なのか、むしろよりカッコいいのです。
特に『X』からの曲はどれもライブの方がロック的になることでカッコよく聴こえますし、「Hear That Sound」はこのライブでの白眉で、曲の拡がりとカメラワークは感動的です。
7万人を超えるウェンブリー・スタジアムの盛り上がりは素晴らしく、2曲目に「New Sensation」が始まるとともビートに合わせて波打つ群衆は壮観ですし、「Suicide Blonde」でピークを迎えるスタジアム全体が沸騰したかのような熱狂は、もはや恐怖を感じるほどです。
大ヒット曲「Need You Tonight」もライブでやるとスカスカになりそうな気がしますが、全くそんなこともなくひたすらにカッコいいです。マイケルの「Not Tonight」には泣けてきます。
のちにDVDで買い直したものの、長らく「これをこのまま音源でも発売してくれればなー」と思っていたところに発売になったのが「Live Baby Live Wembley Stadium 1991」です。
もともと35ミリ・フィルムによって撮影されたこのライブは長らく失われたと考えられていた(なぜこんなに大事なものが失くなる⁈)らしいのですが、元のフィルム缶が見つかり、2019年に最新の4Kワイドにアップグレード。
音源はジャイルズ・マーティンとサム・オケルがリマスターしたとされるもので、ビデオから数えて3回目となる映像購入(Apple+)と、待ち望んでいた音源をiTunesでのダウンロード。音も映像も良くなり、感激もひとしおでした。ビデオテープで観ていた頃にマイケルの足元で次の曲として表示されていながらもカットされていた「Lately」も収録された完全版であることも、30年近くの時を経て感動しました。
ウェンブリーの7万人を熱狂させたINXSですが、この頃と同じような成功が続くわけではありませんでした。その後のアルバムだってどれも素晴らしいですし、売れなかったわけではありませんが、あまりにも大きすぎる成功との乖離に悩んだのかもしれません。
マイケルは1997年に自殺と考えられる形で亡くなってしまいます。マイケルといい、クリス・コーネルといい、あんなに全てを持ち合わせたように見える人がなぜそんなことになってしまうのか、残念でなりません。
4Kリマスターで蘇ったマイケルは、変わらずにカッコいいままです。