車で音楽を聴くことがひたすら嬉しかった頃の定番 『The Extremist』 JOE SATRIANI
ジョー・サトリアーニがサミー・ヘイガー、マイケル・アンソニー、ジェイソン・ボーナムとともに来日し、ヴァン・ヘイレンの曲を演る予定になっています。ギタリストとしては大変な名誉であると同時にとんでもないプレッシャーでしょうが、やるなら彼しかいないと思います。
ジョー・サトリアーニは大好きでして、中でも『The Extremist』(1992年)は繰り返し聴いた思い出深い1枚です。何しろ初めて自分の車(中古ジムニー幌)を持った頃にリリースされ、車中で聴く定番となったアルバムなのです。
本作は ⑴ Friends から ⑽ New Blues までどの曲も素晴らしいギター・インストなのですが、車中でアホほど聴いたのが ⑻ Motorcycle Driverです。(バイクではなかったですけど)ドライブにはこれしかありません。ビソネット兄弟も最高のプレイです。
車を持つだけでも大変な贅沢ですから、その車にCDプレーヤーを付けるお金なんてありません。付いていたカセットデッキを心からありがたがり、車用にわざわざラジカセでテープへ録音して聴いていました。
ジムニーはエンジンもうるさかったですが、車体後部が幌になっていたので走行音も響き渡り、薄っぺらいドアに付いたスピーカーから出る音も貧弱でした。今思えば音楽なんて聴けたもんじゃなかったはずですが、そんなことは全く関係なく、ドライブしながら音楽を聴けるのは夢のようでした。
当時、私の友人も本作をいたく気に入り、彼の車に乗せてもらう時にもこのアルバム、中でもやっぱり“Motorcycle Driver” を何度も聴きました。彼の車にはCDプレーヤーも装備、それはもうきらびやかな音が鳴り響いたものでした。
この彼とはもう30年を超える付き合いになるのですが、先日北海道へ帰省した際に会うことができました。丸一日車を出してくれて、エスコンフィールドなんかを見に連れていってくれたのですが、その途中でふざけた4年を過ごした大学の前を通り、「せっかくだからホワイトハウスへ行ってみようよ」と言い出したのです。
ホワイトハウスとは私が学生時代に住んでいた木造ワンルームのアパートの名前でして、「ずいぶんと大層な名前だな」と思いながら4年を過ごした場所でした。
冬は信じられないくらいに寒くなる部屋でしたが、その友人も何度となく遊びに来て長居した部屋でもありました。随分前に取り壊されていることはお互い知っていたのですが、せっかく近くまで来たのだから行ってみようというのです。
そこから彼は、少し分かりにくいホワイトハウスまでの道のりを全く迷うことなく辿りついたのです。私はそのことに驚きましたが、彼は「そりゃ何回来てたと思ってんのよ」と笑いました。
もちろんホワイトハウスは跡形もなく、全く新しいアパートが建っていましたし、向かいの焼き鳥屋さんも無くなっていました。それでも、そのまま残っているアパートや燃料店もあったりして、「懐かしいね」と言い合いながら過ごした少しの時間は大切なものになりました。
レビンをぶっ飛ばしていた彼も、子供が生まれてからは家族の為の車に乗り、運転は信じられないくらい節度のあるものに変わりました。私が運転するジムニーの助手席から手を伸ばして勝手にクラクションを鳴らしていた彼と同一人物とは思えませんが、30年も経てば色々と変わります。
その日、彼の車ではアマゾンミュージックで彼の家族が「いいね」した曲がランダムで流れていました。時折、ヒゲダンやBTSに紛れて彼自身が「いいね」したオジー・オズボーンやグレイト・ホワイトが流れてきて、その度に笑い合いました。
色々と変わっても、変わらないこともありますし、それが嬉しかったです。
大阪に戻ってから聴いた『The Extremist』も、やっぱり変わらずにカッコ良かったです。
※ SkyBlueさんの記事に触発されて書いてみました。