素晴らしい音で蘇った名曲の数々に熱狂した 『Reunion』 BLACK SABBATH
私がHM/HRを聴き始めた頃、オジーもディオも既にソロ・アーティストでした。オジーの隣はもうジェイクでしたし、ディオも既にヴィヴィアンではなくなっていたような時期で、ブラック・サバスにはヴォーカルとしてトニー・マーティンが在籍していました。
80年代半ばから音楽を聴き始めた私はキラキラした音に慣れており、『Heaven And Hell』はまだ良しとしてもオジー期(特に大事な最初の2枚)はどうにも音が古臭く、こもったように感じられ、あまりのめり込めないままでした。(←お恥ずかしい限りです)
ブラック・サバスの偉大さや曲の良さは理解したつもりでいましたが、聴くのはオジーのライブ盤に収録されているサバスの曲くらいで、当時進行形だったトニー・マーティン期を聴くこともなく、「まぁ、これでいいだろう」くらいに思っていたのです。
そんな中、オリジナル・メンバーのリユニオン・ライブとして1998年にリリースされたのが本作でした。これですらもう25年前とは…、時の流れは止めようもありませんね。
全く情報もなく店頭で本作を見つけた私は、「選曲もいいし、いまの音で聴けていいかも?」と試聴してみるわけですが、何よりもまず ⑴ War Pigs でのいきなりの大合唱に圧倒されたのです。
場所はバンドの地元バーミンガムでその熱狂も当然なわけですが、その時は事情をわかっておらず「やっぱりサバスってすげー!」と遅まきながら認識を新たにし、いそいそと購入したのを覚えています。
聴いてみると(私にとっては)とにかく音が素晴らしく、数々の名曲の輪郭が初めてはっきりしたかのようでした。
トニー・アイオミのギターはそれまで記憶にあった音とは全く違って、ヘヴィかつクリア、そのエグかっこいいリフを隅々まで感じとることができ、これこそがヘヴィメタルを生んだ人なのかと痺れに痺れました。
そしてギーザーのベース…。オジー・バンドで弾いてる映像でとんでもない人なのはわかっていたつもりでしたが、なんだか曇った音ではっきりしなかったベースラインがこれでもかと押し寄せ、ビル・ワードと共に生み出すグルーヴに「あんた達、こんなにすごかったのかよ!」と歓喜したものでした。
さすがに「Sabbath Bloody Sabbath」の狂気なヴォーカルを完全再現するまでには至りませんが、それでもオジーの歌唱はまだまだ素晴らしく、全曲を見事に歌い切ってくれています。このときオジーは49歳(のはず)、このタイミングで再結成ツアーをし、レコーディングしてくれたことに心から感謝しなければなりません。
「War Pigs」 冒頭のギター、ベースの音だけでもイってしまいますが、オジーと大合唱の掛け合いに血が沸き立ち、そこから始まるグルーヴに「これが本物なのか!」と感激しますし、「Black Sabbath」のわかっちゃいるけど盛り上がってしまう5分過ぎからのリフには会場と同じように興奮します。
そして「Iron Man」、「Children Of The Grave」と続いて「Paranoid」へ突入する熱狂は本当に素晴らしいです。この流れを自分たちの曲としてできるのはブラック・サバスだけなわけで、改めてその偉大さを認識することにもなりました。
本作は他のライブ盤にありがちな、必要以上にテンポが速くなるということがほとんどないのもありがたかったです。その事が曲はそのままに音だけが良くなった感覚にさせてくれているのかもしれません。そこに加えてベスト的選曲と会場の熱気、悪いはずがありません。
ビル・ワードのドラミングを全盛期と比較する意見も見かけましたが、私にとってはこの音源がビル・ワードによるものである事実の方が大きく、「この人達が作り出した音楽なんだ」と感じられる幸せは何物にも変え難いです。
現在ではそれぞれのオリジナル・アルバムが何度かのリマスターを施されていますし、どのヴァージョンが良いかは別にして昔に比べればかなり聴きやすくなりました。そもそも年をとって録音の古さも気にならなくなりましたが、それでも本ライブ盤の価値が色褪せることはないと思うのです。
1stや2ndは、レコードで聴くとまた全然違うのかもしれませんね。