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望みを叶えてくれた 『How To Become Clairvoyant』 ROBBIE ROBERTSON

ロビー・ロバートソンも亡くなってしまいましたね。多くの追悼メッセージを見ると、その偉大さを改めて実感します。

私なりの追悼として、彼の5作目のソロアルバムとなる『How To Become Clairvoyant』(2011年)を振り返ってみたいと思います。

2nd『Storyville』(1991年)の後、ロビーは少しロックからは距離を置いたアルバムを2枚リリースしています。自身の出自とも関係するアメリカ先住民の音楽を取り入れたこの2枚に収められている楽曲は感動的なものばかりなのですが、ギターを聴けるという感じではなく、いささか寂しく思っていました。

この2枚を聴いた後には後追いでザ・バンドにも入れ込んだ分、ソロ作で今のロビーのギターを存分に聴けないことが余計に残念で、「もう少し弾いてくれれば」と願ったものでした。

そんな望みを叶えてくれたのが、『Storyville』から考えれば20年ぶりとなる本作『How To Become Clairvoyant』でした。

ゲストにはエリック・クラプトンとスティーヴ・ウインウッドの名前があり、これだけで歓喜なところに全く予想しなかったトレント・レズナーやトム・モレロ、ピノ・パラディーノまでが加わっており、まさしくロビーの“今”の音楽であることが感じられ、彼が「お待たせしたね」と言っているかのようでした。ロビーのギター、ちゃんと聴けます。

エリック・クラプトンとスティーヴ・ウインウッド(オルガン)が共に参加している ⑷ The Right Mistake(“正しい間違い”とは考えさせられる)、⑹ Fear Of Falling(クラプトンは歌ってもいます)、⑺ She's Not Mine には本当に感動しますし、ここにきてこんな楽曲を残してくれたことに感謝するばかりなのですが、やっぱり ⑸ This Is Where I Get Off [Feat. Eric Clapton]に注目しないわけにはいきません。

こちらの解釈でなんでも勝手に結びつけてはいけないとは思うのですが、おそらくはザ・バンドを終わらせた時のことであろう歌詞にはグッと来ます。何せ「ここで降りる」と歌っているのです。ザ・バンドのヴォーカルではなかったロビーの歌唱も素晴らしいと思いますし、終盤のクラプトンとのギターソロの掛け合いはまさしく神々の共演です。

本作でエリック・クラプトンは3曲を共作、7曲に参加しています。ザ・バンドに入りたかったクラプトンにとっても願ったり叶ったりだったことでしょう。

トレント・レズナーも参加した ⑻ Madame X の信じられない美しさ、多くの偉大なギタリストの名前が出てくる ⑼ Axman で現代のギタリスト: トム・モレロがその特徴的なギターを聴かせる面白さなど、ゲストの多彩さがありつつも、しっかりと2011年のロビー・ロバートソンの音楽を聴ける、聴きどころしかない1枚になっています。

リヴォン・ヘルムの自伝を読んだ時には、ロビーの功績を最大級に認めつつも作曲クレジットの在り方(日本みたいに編曲: ガース・ハドソンみたいなクレジットがあればよかったかもしれませんね)やバンドを終わらせたことへの不満に「そりゃそうだよな」と同情していましたが、映画『かつて僕らは兄弟だった』を観ると、メンバーがアルコールやドラッグの問題を抱えていく中、ストイックに楽曲制作をリードしていたのはやっぱりロビーだっただろうと思いましたし、その状況では楽曲制作やレコーディング、ツアーなんかを続けていけないと感じたのも無理からぬことだったろうとも思いました。その終わり方は残念でしたが、残してくれた音楽に感謝するしかありません。

私はザ・バンドよりも先にロビーの1stアルバムから聴いていますし、ザ・バンドの音楽や歴史はかなり時間が経ってからの後追いでしかありませんが、ロビー・ロバートソンということで言えば1987年からずっと聴いてきたアーティストになりますから、亡くなったことはやっぱり残念です。

大阪へ引っ越してきて主夫になった頃に『Sinematic』(2019年)がリリースされ、それを聴きながら慣れない様々なことに苦労した時期を乗り切った思い出もあり、ロビーには感謝するばかりです。

ご冥福をお祈りします。


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