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ライブアルバムから聴き始める難しさを学んだ 『At Fillmore East』 THE ALLMAN BROTHERS BAND

主夫になってから、ありがたいことに家で音楽を聴ける時間が増えましたので、これまで聴き込めていなかった名盤と呼ばれるものに向き合ってみることにしています。

そのうちの1枚が The Allman Brothers Bandの『At Fillmore East』です。

オールマン・ブラザーズ・バンドの代表作と言えば『At Fillmore East』であることはどの媒体を見ても明らか(Rolling Stone誌の音楽史上最高のライヴ・アルバム ベスト50では2位ですし)で、まさしく絶賛されています。

デュアン・オールマンや ディッキー・ベッツ に関する記事を読んだりして「そんなに言うなら聴いてみるか」となったときに否が応でも辿り着くのが本作だと思いますし、まずはこれから聴いてみたという人もきっと多いはずです。

私も初めて聴いたオールマン・ブラザーズ・バンドが『At Fillmore East』でしたが、その頃の私にはいささか敷居が高く、その後はほとんど聴くことがないままに数十年が経ってしまいました。

もちろん、本作を聴いてすぐに「このバンド、スゲぇ!」と夢中になった人もたくさんいるでしょうし、特に楽器をやっている人なら受け入れやすいのかもしれません。

しかしながら当時の私はまだ子供で、まずブルースやサザン・ロックの違いもわからずにただただ “古くさい音楽” と思っていましたし、ライブ盤にもまだそれほど馴染みがなく、本来ならハイライトとなって然るべき “In Memory of Elizabeth Reed” の13分や “Whipping Post” の23分がかなり長く感じました。

当時からどの雑誌でも名盤として取り上げられていた訳ですが、繰り返し聴くようにはなりませんでした。2枚組だったレコードからカセットテープに録音したものを聴いていたので、単にノイズが多いと感じたこと(CDを聴き始めた頃でもあり、その差を必要以上に感じていました)も、のめり込めなかった原因のひとつだったかもしれません。 

『At Fillmore East』は改めて向き合う名盤として欠かせませんでしたが、挫折した過去を振り返る中で「そういえばライブ盤しか聴いてないな」と思い至り、この名盤を聴く前にまず、2ndアルバムの『Idlewild South』を聴いてみました。

そこには7分の “In Memory of Elizabeth Reed” があり、これだけを何度も繰り返すほど好きになったのです(そりゃそうですよね、こんな名曲)。

そうなったうえで改めて『At Fillmore East』を聴いてみると、13分が長く感じなくなり、ライブならではの即興性、緊張感が加わっていることが理解できて、そのカッコよさに今更ながら(本当に今更ながら)圧倒されました。これは “Whipping Post” も同様で、長く感じたこの2曲がまさしくハイライトに変わります。

ここまで来ると「このバンド、マジですげぇ!みんなまだ若かったはずなのに何でこんなのライブで出来んの⁈」と大好きになり、他のアルバムも聴いてみたくなって、おじさんになってからやっと “Jessica” や “Blue Sky” に辿り着けました。危うく聴かずして人生終えるところでしたよ。

ライブ盤は即興演奏の応酬(これが聴きどころでもあるわけですが)が加わることで曲が長くなって2枚組になることも多く、推薦されているからという理由で最初に聴くものとして選んでしまうと、場合によっては失敗するかもしれません。

これはオールマンズの『At Fillmore East』に限らず、代表作としてライブ盤が推奨されているアーティストでは意外と起こりやすいことなんじゃないかと思います。

初めてのレッド・ツェッペリンをもし “Dazed and Confused” のライブから聴き始めたらその30分に訳がわからなくなると思いますし、初めてのグレイトフル・デッドを『Live/Dead』の “Dark Star” の23分から聴いてしまうとかなり大変です。ディープ・パープルだって『Live In Japan』から聴き始めたら結構きびしいんじゃないでしょうか?(どれもめちゃくちゃすごいですけどね、いきなりはちょっと)

オリジナル(というかスタジオ録音)を知った上でこそ、ライブにおけるカッコよさを体感できるという部分もあると思います。

ザ・バンド の “The Night They Drove Old Dixie Down” もブラウン・アルバム収録曲がしっかりと馴染んでから『The Last Waltz』を聴いた方が、歓声が入る瞬間なんかにより感動できると思うのです。

そのアーティストへの入り口がライブ盤になった場合には、それだけで判断しない方が良いと痛感した出来事でした。私の場合、『At Fillmore East』を聴いた時の年齢(音楽体験の少なさ)も影響したとは思いますが、今なら本作がなぜあんなに絶賛されているのかを理解できた気がします。

後にデラックス・エディション盤を入手し、全編を繰り返し聴いております。

⑹ One Way Out がとにかく最高なんですが、実はこれも当時のアナログ盤の『At Fillmore East』には収録されておらず、『Eat a Peach』に収録されていたので聴けていなかったという事実にも、ある種の巡り合わせを感じます。

何にせよ、彼らのライブは本当にめちゃくちゃすごいです。

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