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ここから先が楽しみだった 『Subhuman Race』 SKID ROW

スキッド・ロウの来日公演が近づいていますね。結成時からのレイチェル・ボラン(ベース)、デイヴ ‟スネイク” セイボ(ギター)、スコッティ・ヒル(ギター)の3人にロブ・ハマースミス(ドラム)、そしてヴォーカルに元 H.E.A.T のエリック・グロンウォールを迎えているそうでして、東京では立見チケットの販売も決まるなど、根強い人気のようです。

スキッド・ロウは1989年にデビュー、当時はボン・ジョヴィの弟分とかいう言われ方をしながらも、その楽曲の確かさでしっかりと売れたバンドでした。

実際、デビューアルバムの『SKID ROW』は今でも再生し始めれば結局は最後までスキップすることなく聴いてしまう名盤ですし、2ndアルバム『Slave To The Grind』ではビルボードで初登場1位という偉業を成し遂げています。

そんなスキッド・ロウが1995年にリリースした3rdアルバムが『Subhuman Race』です。

リリースされた頃を振り返ってみると、メタリカが通称『ブラック・アルバム』(1991)で大成功をおさめ、グランジ/オルタナの影響も加わったのか、グルーヴを重視したモダン・ヘヴィネスの流れが大きくなり、個人的な体験で言えばモトリー・クルーの『MOTLEY CRUE』(1994)やドリーム・シアターの『AWAKE』(1994)、テスタメントの『Low』(1994)、何ならラッシュの『Counterparts』(1993)でもその影響を感じられた頃でした。

中にはハーレム・スキャーレムの『Voice Of Reason』(1995)のように、大幅な路線変更が受け入れられなかったものもあったと思います(私は好きなんですが)。

この『Subhuman Race』も、言ってみればそんな流行を取り入れたアルバムだと思いますが、私にとってはもっとも良い塩梅にヘヴィネスが表現された、この時代を代表するHR/HM界の名盤なのです。

⑴ My Enemy からして「なんか随分としっかりとしたバンドになったな」と感じた(←偉そう!)ものでした。2ndも相当にヘヴィーなアルバムで、バズの歌い方も相まってかパンキッシュにも感じられたのですが、本作はヘヴィーでありながら端正でもあると言いますか、安心してその重たいグルーヴに乗れました。見てみるとプロデューサーはボブ・ロック、「そういうことですか」と妙に納得したものでした。

⑵ Firesign 以降も、1stのようなキャッチャーさ、ビッグコーラスはありませんが、(本当に偉そうで申し訳ないですけど)バンドの成熟が感じられる曲が続きます。5曲目でやっと現れる比較的キャッチーな“Eileen”でもヘヴィネスは貫かれていて、タイトル曲となる ⑺ Subhuman Race では疾走感も全開です。

⑼ Into Another はバンドを代表するような名曲と言っていいんじゃないかと思っていまして、起承転結を感じる展開やバズの歌唱が素晴らしいです。

とか言いながら、もっとも好きな曲は ⑿ Breakin’ Down でして、ここでのバンドの表現力には脱帽です。“I Remenber You”のようなバラード(?)とは言えないのですが、歌も演奏も最高に味わい深く、しかしながらヘヴィでもある美しい曲です。

基本的にはレイチェル・ボランとデイヴ ‟スネイク” セイボがクレジットされていますので、本作においても彼らの功績が大なのは間違いありませんが、ロブ・アフューゾのドラミングには驚かされました。

このグルーヴ重視の感じが彼に合っていたのか、ツアーを重ねて上手くなったのかわかりませんが、「こんなにカッコよかったのか。ロブよ、ごめん」と謝ったものでした。ボブ・ロックの手腕も大きかっただろうと思います。

バズの歌は好みが分かれるのかもしれませんし、私も1stが売れている頃はなんとも思っていなかったのですが、振り返れば最初からうまかったですし、もはやグロウルに近いと感じることも増えていった歌唱は、むしろエモーショナルと表現して良いと思います。

こんな風に感じていたバンドのここから先を楽しみにしていたのですが、セバスチャン・バックとロブ・アフューゾは脱退してしまいます。このメンバーでの続きを聴くことが出来なかったのはかなり残念なことでした。

1stはキラキラしたグラム・メタル時代の傑作だと思いますし、2ndはNo.1を獲得した歴史的アルバムなわけですが、そこまでの成功をおさめることが出来なかった本作も、負けず劣らずカッコいいです。

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