建築実務者は知っておきたい脱炭素社会のキーワード
頻発する異常気象は地球温暖化が引き起こしています。
少なくとも加速していることは間違いありません。
脱炭素社会を実現するため、世界は、日本は、企業は、個人は何をすべきなのでしょうか。
そのために知っておきたいキーワードを解説します。
脱炭素社会のキーワード:COP27
地球温暖化対策について国際的な目標や協力体制を決める国際会議です。
会合で気候変動対策の世界の枠組みを作ってきました。
多くの国や地域が条約を締結しています。
排出削減の努力義務を課しており、各国はこの目標を意識して対策に取り組んでいます。
COPとは、締結国会議を意味する「Conference of the Parties」の略です。
1995年以降、原則毎年1回世界各地で開かれています。
2022年は27回目のためCOP27と呼びます。
環境保全の視点ですべての生き物の個性と、つながりを意味する「生物多様性」について話し合うCOPもあります。
脱炭素社会のキーワード:カーボンニュートラル
二酸化炭素排出量を抑制するための概念です。
2020年、日本政府は「2050年までに温室効果ガス(温暖化ガス)の排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指す」と宣言しました。
ゼロはCO2を中心とした温暖化ガスの「排出量」から、植林や森林管理などによる「吸収量」を差し引いた合計を実質ゼロに近づけることを意味します。
民間企業や団体ではカーボンゼロなどが使われるが、厳格な定義はありません。
カーボンニュートラルの一般的な呼称として用いられています。
脱炭素社会のキーワード:パリ協定(1.5度目標)
2020年以降の温暖化ガスの排出量削減に向けた世界共通の新たな取り組みです。
2015年にフランス・パリで開かれたCOP21で採択されました。
長期目標として世界の平均気温の上昇を工業化以前に比べ2度より低く抑えて1.5度以内の水準にすることが掲げられました。
気温が上昇すると熱波や洪水など自然災害の被害がより甚大になるという共通した認識があります。
脱炭素社会のキーワード:GX(グリーントランスフォーメーション)
「Green Transformation」の略です。
脱炭素社会に向けた変革の取り組み全体を指します。
日本政府は温暖化ガスの排出実質ゼロを企業にとって成長の好機と捉え、推進するための「GX実行会議」を設けました。
今後10年間、官民で150兆円以上の投資額が必要と見込んでおり、うち20兆円規模を新たな「国際GX経済移行債(仮称)」の発行によって充てる考えです。
調達した資金は企業の投資支援に役立てる予定です。
脱炭素社会のキーワード:エネルギーミックス
発電量を電源構成で見た場合にどのエネルギーから調達しているかを示す比率です。
日本は石炭、天然ガス、石油の化石燃料による火力発電が全体の7割以上を占めます。
脱炭素電源である太陽光、風力など再生可能エネルギーは約20%、原子力は約7%です。
2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故により、一時は全ての国内原発が停止しました。
再稼働は進みますが、火力発電で補う状況が続いています。
温暖化ガスの排出量の多い化石燃料への依存をどう下げて再エネにシフトするかが課題です。
脱炭素社会のキーワード:カーボンプライシング
CO2排出量に応じて企業に負担を求める制度です。
日本政府は2030年代に導入する方向で検討しています。
排出量が多い火力発電所を持つ電力やガス、化石燃料を輸入する石油元売り企業などから資金を集め、脱炭素事業に取り組む企業の支援財源にする仕組みです。
電気やガソリンの料金に転嫁されると消費者負担が増すことになります。
企業に賦課金のような支払いを求める形式となる方向です。
課税する炭素税の導入は先送りされました。
値付けと言う点では排出量取引にも大きく関わります。
脱炭素社会のキーワード:排出量取引/カーボンクレジット
CO2など温暖化ガスの排出削減手法の一種です。
事業者ごとに排出量の上限を割り当て、排出枠として売買する仕組みです。
実際の排出量が上限を超える企業は、余裕のある他社から排出枠を買う必要があります。
温暖化ガスの「実質ゼロ」を目指す企業は、排出枠を買えば実現に近づきます。
実証事業として2022年9月にカーボンクレジット市場の取引を東京証券取引所で実施され、幅広い業界が参加しました。