木造マンションが誕生!木造化・木質化への新たな可能性
「木造マンション」が誕生していることをご存じでしょうか?
マンションといえば鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)もしくは鉄筋コンクリート造(RC造)が圧倒的多数です。
木造の共同住宅というとアパート、もしくは連棟型のタウンハウスやテラスハウスが一般的です。
近年、大手ハウスメーカーにより東京都内に5階建ての木造マンション(賃貸物件)が建てられました。この木造マンションは、1階はRC造、2階から5階が木造です。
木造マンションが、なぜ「画期的」なのかについて、その理由をまとめます。
劣化対策等級3でRC造と同等の減価償却期間運用が選択可能
この木造マンションは、国土交通省「サステナブル建築物等先導事業」に採択されており、数々の先進的な取組みが採用されています。
https://www.mitsuihome.co.jp/property/mocxion/
性能面では、木造のメリットを活かしながら、耐震性、断熱性、省エネ性等を高めています。
特に注目されているのは、住宅性能表示制度で建物を評価する項目の一つである、劣化対策等級を最高レベルの3で取得していることです。
「劣化対策等級3」とは、適切な維持管理により75~90年の使用に耐える建物であることを示しています。
画期的なのは、RC造と同等の減価償却期間運用が選択可能になりました。(企業会計において法定耐用年数を超える減価償却期間を採用する場合には、公認会計士等との協議が必要になりますので注意が必要です)
今までは事業計画において、減価償却の法定耐用年数によりRC造が選択されることも多かったですが、これからは木造も選択肢となり得る可能性があります。
非住宅用途の木造建築が普及しない一因としては、木造住宅の法定耐用年数が22年であることに起因するのではないかという仮説もあります。
法定耐用年数とは「減価償却資産が利用に耐える年数」のことで、これが過ぎると税務上の資産価値がゼロになるという意味です。
あくまで計算上の数字であって、築22年で住めなくなるわけではないのですが、現実的にはマイナスイメージにつながっています。
あくまでも上記の木造マンションは一例であり、現段階ではまだ公的なルールとなってはおりません。
これからの脱炭素社会に向けて木造化・木質化が普及する中で、期待される分野です。
カーボンニュートラル実現に向けて木造化・木質化は必須
この木造マンションの特筆すべき性能、特徴は主に下記です。
・建物の梁や床、壁など建物の主要部分は木造で、建設時のCO2排出量はRC造の約半分。
・建物は断熱性が高く調湿作用があり、ALC100mm厚の約4分の1の床衝撃音。
・耐震等級3という極めて高い耐震性能
・耐用年数75~90年という耐久性を誇る劣化対策等級3
・鉄骨造やRC造よりも軽量で工事期間の短縮とコスト削減が可能となること(この木造マンションは竣工まで約1年)
・国内の木材資源の活用によって国内林業の活性化に資する
木造マンションの開発はカーボンニュートラル実現の取組みに直結しています。
2050年までにCO2ほか温室効果ガスの排出量と吸収量を等しくするためには、鉄やコンクリートに代えてCO2の放出量が圧倒的に少なく、かつ吸収量も高くて固定化が可能な木材を有効活用することが、建築業界に求められる施策です。
木造建築は、通気性や吸湿性に優れ、日本の高温多湿な気候にも適応する快適性や柔らかさ、香りによるリラックス効果などもあります。
デメリットとして想定されることは、特に耐火性や遮音性能です。
・耐火性:木材は住宅建材サイズであれば熱伝導が遅く、表面だけが燃えて炭化し、内部まで火が通るのには時間がかかるので、総合力でいうと耐火性能に大きな違いはないという判断もできます。
・遮音性能:近年では技術的にRC造と変わらない性能を実現できるようになっています。
「木造マンション」の今後の課題としては、木材で大きな建物を造る経験値が高い建築実務者が少ないことです。
都市の木造化・木質化の鍵となる木造マンションの基準
木造マンションと表記するための基準は主に下記です。
・共同住宅であること
・3階建て以上であること
・住宅性能表示制度による住宅性能評価書の取得
・劣化対策等級(構造躯体等)が等級3かつ、下記の①もしくは②の等級・条件を満たすこと
①耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)が等級3であること
②耐火等級(延焼の恐れがある部分(開口部以外))が等級4もしくは耐火構造であること
新たな住宅のスタイルとして、またカーボン・ニュートラル実現の切り札として、木造マンションおよび木造オフィスビルは今後普及することが期待されます。
都市の木造化・木質化の鍵となる木造マンションの課題
木造マンション普及への課題は主に下記です。
・コスト:資材価格の上昇によって、以前ほどの差はないものの、鉄骨造やRC造と比べて現状ではやや割高。計画や設計・仕様によりコストダウンは可能。
・経済合理性の確立:発注者、ユーザー、建築実務者など
木造を民間建築主にとって合理的な選択とするために、まずは公的需要が先導し、供給体制整備を動機付けることが現実的です。
さらに、木造賃貸の共同住宅に至っては「木賃アパート」と呼ばれ、どれほど高品質・高性能でも一括りに「アパート」に分類されてしまうという難点がありました。
「安かろう悪かろう」のイメージを払しょくするために設定されたのが「木造マンション」という概念です。
木造マンションをはじめ、中大規模構造の木造建築物は環境負荷軽減の観点からも注目を集めており、国も木造建築を推進する立場で利用法の改正を含め後押しをしています。
さらには耐火構造認定の問題もあります。
現行の1時間耐火構造の国土交通大臣認定では、純木造で最高4階建てまでですが、梁と柱で2時間耐火の認定を取得すれば5階以上14階建てまでの木造建築物が建てられます。
まとめ
ハウス・ベース株式会社は、施設建築の木造化・木質化を支援するサービスを展開しています。
それが、プロジェクトマネジメント(施設づくりの発注者支援)です。
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