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弁護士の交渉学【不貞をした配偶者との交渉編③】

新刊書籍『弁護士の交渉学―事例にみる実践的交渉スキル―』の一部を抜粋してお届け!
第1弾は「第2章 離婚事件の交渉学」の「不貞をした配偶者との交渉」から、Scene1・3・6を特別公開します!

[受任事件]
Xは45歳の主婦であるが、18年前に結婚した会社員の夫Y(47歳)の帰宅がしばしば深夜になったために、不貞を疑い、調査会社に依頼して尾行調査をしてもらった。
すると、調査会社から、ラブホテルから出てくるYと女性Cを撮影した写真を添えた報告書が提出された。
Xは、知り合いの紹介を経てA弁護士に電話をかけ、相談した。

▶Scene1は、こちらから
▶Scene3は、こちらから

S c e n e 6  依頼者と方針を協議する

数日後、A弁護士は、Xから電話を受け、面談した。

A お考えになった結論はいかがですか。

X よく考えた末離婚することにしました。

A そうですか。苦渋の決断だと思います。

X 離婚条件ですが、子どもの親権は私がとりたいです。養育費は、裁判所の算定表のとおりで結構です。財産分与については、自宅マンションは私が取得して、夫に残りの住宅ローン400万円を払い続けてもらいたいと思います。預金は、夫婦合わせて1000万円くらいありますが、これは半分もらえるということですよね?

A うーん、希望として相手方に伝えることはできますが、相手方に残ローンを支払ってもらって自宅マンションを取得するのに、預金も半分ほしいと言っても、相手方はなかなか同意できないかもしれません。

X そうですか……。子どもの生活が不安定にならないように、自宅マンションはぜひほしいと思っています。こちらを優先して取得してもらえれば、預金は場合によってはもらえなくても構いません。

A 承知しました。慰謝料についての検討はされましたか?

X 慰謝料は、いくらでもよいからとりたいと思います。
 ただ、時間と費用を考えると、夫に対する訴訟は避けたいです。相手方女性に対しても請求するつもりですが、まずは夫の問題を片付けて、すっきりしたいのです。

A そうですか。慰謝料額によっては、相手方女性に対する請求が認められなくなる可能性があることについては、いかがですか。

X 裁判をして認められなければ、それはそれで構いません。
 ただ、自分のしたこととその結果についてはちゃんと自覚して反省してもらいたいので、そのための請求だけはしたいですね。主人から相手方に請求しないことを条件とされた場合は、そのときに考えます。

A それでは、Yさんと交渉してみます。最初からXさんの腹を明かすわけにはいきませんから、少し強気で交渉してみましょう。

※本文中に登場する事例は筆者らの創作によるものです。実在する事例とは一切関係がありません。


不貞をした配偶者との交渉のポイントは、書籍にて解説!
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