消渇3
古典における消渇病の記載について
今回は古典の中でも巣元方≪諸病源候論≫、孫思邈≪千金方≫、丹波康頼≪医心方≫の古典三書を主体に書いていく。
≪諸病源候論≫は病名、病因、病機を書いたもの。≪千金方≫は当時の治法を全面的に書いたもの。≪医心方≫はこの2つを日本の風土やその時代の状況に合わせて書いたものと考えて取り扱う。
≪諸病源候論≫における消渇
諸病源候論において、消渇は喉が渇いて小便が出ないものというのが基本的な症状となっている。又、病因としては様々な薬を長期間服用する事によって腎で虚熱が起こり、多くが癰疽に変わるが、経絡における氣血の流れが悪くなる事で瘡膿にもなると書かれている。つまり、口渇、下焦の虚熱による尿の利、不利、癰疽等が主たる症状としてあげられ、近代中医学が示す三消に関する情報は含まれていない事から、情報としては若干物足りなさを感じる。
≪千金方≫
基本的には諸病源候論と同じだが、酒の熱、干し肉の塩等を長期間服用することで三焦に猛烈な熱が生じ、そこから五臓が乾燥し、焦げて口渇が起こるとしている。また、治法に関しては種類が多く記載されている。
≪医心方≫
医心方では、上記2つの病因を引用して示しながらも、≪小品方≫からも引用し、消渇を更に詳細に分類している。これらが、後に三消と称されるものになっていくと考えられる。
(4)治法
代表的且つ現代でも取り入れやすい治法は、
①竹の根を濃く煮て飲む
②青い粟米の汁を煮て飲む
③栝楼の粉は口渇を治める
④竹瀝を多く作り、口に馴染ませて飲むと数日で頻尿が治る。≪葛氏方≫
⑤栝楼根を薄く切って炙り、水と煮て飲む。同上
⑥小麦、栝楼、麦門冬を水で煮て、半分の量になったら飲む。≪録験方≫
⑦生葛の汁を飲む≪新録方≫
⑧生胡麻油を頓服すると直ぐに効果がある≪龍門方≫
⑨葵を煮て汁にし、冷やして口渇が出る度に飲む。同上
更に、口渇、頻尿、尿不利、水腫等によって様々な治法があるが、ここでは割愛する。