ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと 奥野克己2018年6月亜紀書房
人生でなにより重要なのは生き抜くこと
プナンは日々、生きるために食べる。生きるためには、食べなければならないというテーマがあるのみ。そのことがプナンの日常の中心にどっしりと根を張っている。
■ボルネオ島の森のなかにある。狩猟民プナンは物も知識も能力も個人の持ち物ではなく、集団に属する。狩猟した獲物もみんな平等に分ける。そしたら、向上心なくなるのでは?そう、プナンでは生活をよくしようとか、ダメなところを改善しようという考えがない。人生でなにより重要なのは生き抜くことで、それ以外の欲は捨てている。
o 「貸して」と言われモノやお金を貸しても決して返ってこない
o 「ありがとう」「ごめんさい」に相当する言葉がない
o 基本、日々反省せずに生きている。
o それゆえにか鬱病や自殺がほぼない
o 食料は主に狩猟で得られる野生の動物。万一、獲物が獲れない時はジッと数日間でも我慢して次の収穫をひたすら待つ
o 生みの親と育ての親がいて、そこに優劣がなくみんなで子育てを行う
■森で採れるもの
ヒゲイノシシ、シカ、ジャコウネコにマーブルキャット。猿はブタオザル、テナガザル、リーフモンキー、カニクイザルの4種類。鳥はサイチョウやセイラン、キジなど、爬虫類はオオトカゲ、ヘビ。それからあらゆる魚の類。昆虫以外は何でも食べる。あえて昆虫を食べないのは、それだけ森に食べるものが豊富にあるから。
■狩猟は頑張った人も、怠けて何もしなかった人も、獲物は平等に分け与えられる。向上心がない。目の前にあるものがその人にとって必要ならば必要なんだ。所有の概念がない。
■死者が出たら周りが名前を変える。死者の遺品は即全て処分。死者のことを話題にしない。未来のことも考えない。子ども達に将来の夢は?と聞いてもキョトンとしている。
■赤ちゃんはオムツなし。うんち後は犬が舐めてくれる。
【感想・行動】
こんな世界が残っていることに驚きました。しかも日本から近いところで。面白いですねぇ。うつ病や自殺もない世界。誰かを支配しようとか、自分だけ得しようとかいう概念もない。自己責任を課せられ、ストレス満載の先進国の生活とどちらがどうかはわかりませんが、このプナンを、観光地化とかして資本家によって壊されたくないですね。一応現金は持ち込まれているようで、お金で町で買い物をすることもあるようです。ずっと壊されず残りますように。
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