『虫』と私たちの関係性
現代社会において虫とは、私たち人間から遠い存在になりつつあります。実際畑へ農業体験などに来る都心部の学生たちはバッタ1匹に悲鳴を上げ、逃げ惑うなんてことも。そんなようでは畑仕事などできないのですが、普段そのような環境にいるのだから仕方のないことなのかもしれません。
しかし、私たちが住む地球という環境は昆虫や幼虫がそこらかしこにいるのが当たり前です。それらに触れない生活をしていることの方がマイノリティだという事に私たちは気が付くべきでしょう。とはいえ、気持ちの悪い昆虫を好きになれと言っているわけではなく、あくまで彼ら虫たちと共生していることを理解するべきという話です。
何故今更そんな話をするのかというと、私たちの生活に虫の生態というものが関わってきていると気が付いたからです。農業というのは野菜作りではなく、土づくりであるとともに、昆虫たちとの戦いでもある。私はそのように考えています。それを実際に言い表すだけでなく、現象としてあらわしている事件が世界では起きています。
サバクトビバッタ(上記の画像はイメージです)
聞き馴染みのない名前ですが、このバッタが現在アフリカからインドにかけて大量発生していることをご存知でしょうか? たかがバッタですが、彼らが私たち人類の文化や暮らしを崩壊させうる可能性を持っているのです。
サバクトビバッタは1日に最長130キロを移動し、集団で穀物を食い荒らしていきます。日本で言えば、東京スカイツリーから茨城県日立市まで移動するイメージです。人間が1日かけて徒歩移動できる距離が40キロくらいだとすると、人間の3倍以上の移動能力です。ただのザクと赤ザクくらいの機動性の違いですかね…。
過去にもサバクトビバッタの蝗害(バッタなどの大量発生によって引き起こされる災害)は見られ、決して珍しい事象ではないとされています。
1870年代にネブラスカ州を襲ったロッキートビバッタの群れの大きさは、幅160キロメートル、長さ500キロメートルである(この面積は日本の本州全面積の3分の1ほどである)。平均高さ800メートル、場所によっては1600メートルであったと報告されている。また、同じ場所では6時間以上にわたって観察された。この群れが移動するため、被害面積はこれよりもはるかに大きくなる。ただしこれは観察された最大級のサイズの群れであり、通常はここまで大きな群れになることはない。
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2億ドルの予算を組んで10か国でおおよそ130万ヘクタール以上の農地で1800万人分の年間食糧に当たる270万tの食料損失を防いでいますが、エチオピアやケニアなど5か国では既に3500万人以上が食糧不安を抱えるほどの被害が発生しています。アフリカのように乾燥地域では一定の条件が揃うとこのような被害を起こす蝗害が発生するようですが、これは決して対岸の火事ではないでしょう。
世界の経済は否応なくつながっています。遠い世界の裏で起こった出来事でも私たちの生活にインパクトを与えることでしょう。虫一匹いない生活環境にいる私たちですが、実際昆虫たちの挙動によって経済や文化が動かされもするのです。文化や文明の上に胡坐をかき、勘違いに満ちた生活をしていてはいけない事態がそこにはあります。私のように バッタを佃煮にしたらいいのでは? と呑気に考えてはいられないのです。