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農のSDGsと ”行政の責務” とは


滋賀県が持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、農の分野で条例を制定するというニュースを目にした。保守的で変化を嫌いがちな行政が、同様に保守的な農という分野において先んじて動こうという試みのようだ。このような条例は全国初となるらしく、2021年4月の施行を目指して動くとのこと。


普段メディアから批判ばかり浴びがちな行政だが、新たな取り組みにもしっかり手を付けているようである。農の分野に身を置く私としては実に喜ばしいニュースのように思える。ただ、いささか不安を覚えるのは私だけだろうか?


このニュースの続きを読み込んでいくと、少し具体性に欠ける内容だという印象を受けた。もちろん来年4月に施行を目指しているわけだから、内容が明確に決まっているとは思っていない。ただその仮の内容がイメージ先行の本質性からずれた取り組みになりそうで心配である。ニュースの内容を少し見ていくと以下のような文面がある。


具体的には、県はスマート農業や良質な土づくりの他、気候変動に適応した新品種や栽培方法の開発に取り組む。生産性を高めて農業所得の向上につなげ、県内生産者の経営安定や県内での新規就農の機運につなげる狙いがある。


まず、狙いは良いとする。以前、記事にも書いたオーガニックの話があったが、ほぼその構造と同じ狙いを持っていることが分かる。ただ、それが現場の農家と共有できるかに問題がありそうな気がする。前記したように農家、特にベテランの農家は保守的な方が多い。遠回りだが、土台のしっかりした収益構造は、今現在ある程度稼ぎのある農家からすると手を出しにくいのだ。


何をするにも人はまず目標の設定をする。それは達成目標行動目標実行項目の3つの事柄を決めることになる。だが、この条例における達成目標が現場の農家と一致しなければ、そこから派生する2つの目標設定ができなくなる。おそらくその辺を補助金などで釣るのだろうが、その仕事に本質性は出てくるのだろうか? 本気で進める気であれば現場の農家と一体となりつつ条例を決めていく必要があるだろう。


そしてもう一点。実際に行う行動目標が曖昧な気がする。当然、達成目標が行政目線のものなので、現場に降りてくる具体案も的外れになる。当たり前の話だ。根本から見ているものが違うのだから。


具体的に

スマート農業とは何か? 

それによって何を見込んでいるのか? 

新品種とは何を目標とするのか? 

そもそも行政の見ている持続可能性とは何か?


こういった本質的問いかけにしっかり答えを見つけ、農家にそれを理解してもらったうえでの条例でなければ成功は見込めない。形だけの決め事では現場は回らないのである。


もちろん、行政のように大きな組織がSDGsや農業分野に貢献しようとする姿勢は素晴らしい。個人的には滋賀県へポジティブな印象を持ったし、ふるさと納税は滋賀県にしてもいいなぁとも思う。あとはどれだけ滋賀県が本質的な仕事を行えるかにかかっているだろう。


組織が大きくなればなるほど目標も目的もあいまいになる。形だけではなく、根拠があり説得力のある取り組みを期待したい。このような新しい取り組みのできる滋賀県をしっかり評価し、今後の成果に期待し、同時に応援もしつつ、今日はここで筆を置くことにする。



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