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#4 思いがけず一人旅

私の留学先の大学は10月の下旬の1週間授業が全くない週がある。所謂日本の学校生活で久しく経験していなかった「秋休み」だ。留学先はヘルシンキからさらに飛行機で1時間北上したところにある。北上、ということはその分冬が早くやってくるわけで、気温はもう少しで氷点下。とりわけここ1週間で空気が肌を突き刺すような冷たさになった。そんな寒さから逃げるようにこの休暇で多くの学生は南へと旅行に繰り出す。そして例にもれず私も休暇に入った今、ヘルシンキ空港にいる。ロンドンのヒースロー空港行きの飛行機を待っているところだ。一人で。

一人で…。本来なら友達も来る予定だったのだが、直前にまさかの体調不良。前日前々日はその子の部屋に食料を運びながら航空券のキャンセル手続きなど、思いがけずバタバタと過ごしてしまった。ただふっとしたときに来る不安感が思いのほか強い。一人で海外へ行って海外(留学先)に帰ってこれるのか。普段はお一人様で心地よく過ごせる私だが、「海外」という要素が加わるだけでこれほど穏やかでなくなるのか、と冷静になって思う。おまけにその子のほうがこの旅行をとても楽しみにしていたのだ。すでにしたいことリストのようにピックアップしているところが何個もあった。私は「オペラ座の怪人」が観れればそれで満足なのだ。友達の行きたいところについていってわいわいやる予定だった。

そんな中突然訪れた一人旅の機会。自分がこの旅行でなにがしたいのか、何を食べようか、どこに行こうか…友達など複数人で旅行計画を立てることは難しいが、自問自答しながら計画するのもなかなか苦戦するものだなと実感。それでも、私が楽しまなければ送り出してくれたその子が悲しむだけだ。自分にこれほど時間とお金を使ってあげられるのもなかなかないじゃないか。そう気持ちを奮い立たせてなんとか満足できそうな旅行予定をゆるく決めることができた。

ざっくり書き出すと(イギリス編)
・「オペラ座の怪人」を観て号泣する(号泣するまでがセット)
・大英博物館かナショナルギャラリー、またはその両方に行く(どうせすべての展示を見るのは不可能)
・ロンドンの街並みをぐるっとサイクリング(運動も欠かさず)
・ビック・ベン、バッキンガム宮殿などの観光名所を見る(ちらっとね)
・本場のフィッシュアンドチップスを堪能する(美味しいと噂の)
・カフェに入って作業する(作業してる私カッコいい的な)
・イギリスらしい陶器の食器を買う(お手頃価格のやつ)
・目当ての香水屋さんに行く(地味に二番目に楽しみかもしれない)

意外とたくさん出たが、今回絶対に(なるべく)しないことを決めることにした。それは「暇なときにyoutubeやインスタを見ない」。
要するに余計な暇つぶしをしない、ということだ。暇には絶対なるだろうが、ネットを見るだけでは休まらないことはもう既になんとなく気づいている。今回の旅は自分を労わる旅行にしようと決めた。本もたくさん持ってきたし、付近の散歩だけでも非日常が味わえるはず。私が一番恐れているのは、せっかく旅行に来たのにいつもと何も変わらないじゃん!!みたいな時間の過ごし方をすることだ。
一人旅でストレスが加わる分、しっかり休息を取ること。まだ見ぬ恐怖に恐れおののくより、今の自分の置かれた状況を最大限楽しむこと。

この一人旅が無事終わることには、(もしかしたら)一回り成長していることだろう。

旅行者みんな使うだろうパディントン駅





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