【舞台脚本小説】 Draw The Curtain (2)
この作品は2010年に公演した舞台脚本を小説にしたものです。
この【Draw The Curtain】は1時間45分の会話劇でした。
その為、膨大なセリフ量を小説にしているせいか、とても長い作品になる予定です。
ゆっくりではありますが、小説へと変換させていきますので
気長に読んでいただけると嬉しいです。
もし舞台関係者様がこの作品を読まれて、
気に入った!そして舞台で公演したい!と思った方は是非、お気軽にお問い合わせください。
※この小説にした【Draw The Curtain】は多くの方に見てもらいたいので無料で公開しますが、
舞台で公演する場合は営利目的になりますので、有料でのお貸し出しになります。
予めご了承の上、お問い合わせください。
それでは【Draw The Curtain】とはどう言う話なのか
本編をお楽しみください。
※掲載させていただいている写真はイメージです
※このお話は続きものです。
これ以前の話や続きはマガジンにまとめております。
是非ご覧ください。
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「で、泳いでたら急に何かに足を引っ張られたんですって。」
谷山は部屋に入り、話を続けながら部屋の中を歩き回る。
土井は谷山の後に続き、ため息をつきながら部屋に入った。
そして谷山の話を無理矢理聞かされながら。
「それで海に潜って確認したら…なんと、女の人が足を掴んで引っ張っていたんですよ。その男、溺れそになりながら、必死に抵抗してなんとか岸にたどり着いたんです。けど、その後が大変だったんです。」
谷山は楽しそうに話を続け、そして
「この後、どうなったと思います?」
と、急に土井に問いかけた。
土井は眉をひそめ、急に話を振られた事に驚いた。
「どうなったと思います?」
谷山は答えない土井に再び問いかける。
「さぁ…。」と土井はそっけなく答えるや否や
「衝撃の事実を聞く覚悟がありますか?」
と、谷山は土井に忠告しだした。
土井はあきれた顔で言った。
「覚悟なくても話すだろ、お前は。」
谷山は、不気味な土井に笑みを浮かべながら
「実は、その男はその後…」
と話すや否や、急に黙り込んだ。
土井は谷山の様子がおかしくなったことに気がついて、じっと見つめた。
もしかしたら、目に見えない何かに⁉︎
土井は谷山に声をかけようとした同時に、
谷山は土井にしっかり向き合って
「すいません…話のオチ、忘れちゃいました。」
と、正面から謝罪した。
「えぇぇ、衝撃!」
土井は違う意味で、衝撃を受けた。
別に話のオチを聞きたかったわけではない。
勝手に話出した挙句、オチを忘れたこの男の無神経さに対してだ。
谷山は頭を抱えながら「さっきまでは覚えてたはずなのに、何でだろう…。」
と部屋の中をうろうろし出した。
「ちょっと待ってください。部屋に入ってきた時は、話の内容を全部覚えてたんです。あれ?」
谷山は焦りながら続けた。
「ちょっと待ってください、リプレイしますから。」
土井は首をかしげて、ただただ谷山の慌てふためく様子を見守った。
「えっと、部屋に入ってきて、絵が飾られてて、『あぁ、この部屋にもあったんだ』って思って。それで見に行こうとしたら、この部屋の壁に釘が出てて、『え?何これ?』ってなって、よく見たら至る所に出てて、ちょっと気持ち悪いって思ったんです。で、目線を外したら、光がさしてて、え?この部屋は天井に窓があるんだ。他の部屋にはないのになんて思って、こりゃ夕方になると西日が入るんじゃないかなんて考えて・・あぁ、ダメだ。思い出せません。」
谷山は話しながら手を動かして、
その様子を再現しようとするが、また途中で止まってしまった。
土井はそんな事を考えながら
怖い話をしていた谷山に対して、少し感心した。
谷山は不満そうに顔をしかめ
「くそぉ、怖がらせようと思ったのに…。」
と、両膝を叩いて悔しがった。
無神経な発言とそこまで悔しがる谷山を見て、
怒るどころか呆れてしまった。
「大体なんで急に怖い話しだしたんだよ。」
すると谷山は「この建物、不気味だなって思ったら、急に頭の中に怖い話を思い出しちゃって。で、怖いから一人で処理するより親方と一緒に分かち合おうと…」と、素直で無神経な発言を放った。
土井は、谷山に対して顔をしかめながら
「巻き込むんじゃねぇよ。」と言うと、
「親方、怖い話とか苦手そうじゃないですか。だから怖がってる親方の姿を見て、俺安心したいなって。」
と、谷山は無神経にも程がある発言を半笑いでいい放った。
確かに怖い話は苦手ではある。
正直、谷山の話を聞かないようにしてたけど
勝手に耳に入ってきて辟易していた。
なので、この谷山の発言を聞いて殺意を抱きつつもも、
このまま舐められるのも癪と思い、顔を引き攣らせながら
「おい、その話のオチ、思い出したらちゃんと教えろよ。」
そういって、この話を終わらせた。
谷山は少し間を空き
「本当に怖くないんですか?強がってるだけじゃ?」
と、話を戻そうとすると、土井は口を結んで
「あのな、幽霊なんかより、生きてる人間の方がよっぽど怖いよ。」
と、谷山に向かって皮肉を言った。
「確かに、生きてる人間は、何考えてるかわかりませんもんね。」
谷山には皮肉が全く伝わってないどころか、土井の発言に感心していた。
「だってこれ見てくださいよ。他の部屋にもあったけど、何ですか、この不気味な絵?何が描きたいのか、意味がわからない。」
そう言いながら、この部屋に飾られている不気味な絵を見て、
谷山は土井に言った。
谷山の怖い話に気を取られて気づかなかった。
こういう絵が他の部屋にも飾られていると。
「そういや、これ、ここの持ち主の忘れ物かな?いいのか、ここに掛けといて?」と、この山小屋の持ち主のことを気遣った。
「もうすぐ来るから、聞けばいいんじゃないですか?あ、そろそろ待ち合わせの時間ですね。勝手に入って怒られませんか?確か、絶対入り口で待っててくれって言われてましたよね?」
土井と谷山は、この山小屋【風車】の解体を依頼してきた人と、
小屋の前で待ち合わせを約束していた時間がきていた。
土井は時計を確認しながら
「遅かれ早かれ中に入って確認しないと、壊すに壊せないんだから、ちゃんと説明したら怒りはしないよ。」
そういって谷山を納得させた。
谷山は頷き「じゃ、俺、依頼人がいるか確認してきます。」
そう言って谷山は軽快に部屋を出た。
土井は一人部屋に残され、
そして急に静まり返った山小屋の中で、
ふと不気味な雰囲気を感じた。
そして谷山の話していた怖い話が頭をよぎった。
土井は少しでも明るいところへと窓際に行き
「女の霊か…夜じゃなくてよかったぜ。」
土井はつぶやきながら、窓から差し込む光を噛み締めた。
つづく