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起業家と性犯罪〜起業したかっただけなのに

こんにちは。ほっとです。

先日NHKニュース特集で放送された「スタートアップとセクハラ」に出演させていただき、投資家のセクハラについて告発をしました。

放送ではカットになってしまいましたが、性犯罪に止まらず、その後の嫌がらせは非常に深刻なものがありました。起業家業界の問題はセクハラだけでなく、集団でのいじめ行為やネット上の嫌がらせ、DEIの意識の低さなど随所に問題があります。私は起業をしようと思い立ってから約半年でお金も仕事も人脈も全てを失うことになりました。
今回は全てを触れてもなかなか重い話なので、事件の経緯、原因、対策、今後の活動について簡単にまとめさせていただきました。簡単にまとめても長くなってしまったので経緯は個人的な話なので読み飛ばしてくれても大丈夫です。

起業家業界における深刻な実態について少しでも知っていただき、問題意識を持ってくれる人がいることを願います。一緒に業界を変えていきましょう。
私は死を覚悟したほどに辛かったので、被害者を救いたいと心から思っています。近いうちに当事者の会を作る予定です。こんな私ですが辛い人は抱え込まずに頼ってきてください。


【事件編】


事件は平穏な日々の中で起きた

誰も交通事故に遭うだろう、病気になるだろうと思いながら生きていない。私もそうだった。この先も平穏な日々が続く、なんなら起業家人生という今までより明るく刺激的な日々が待っていると信じて過ごしていたある時、突然、事件は起きた。
私の夢は小さい頃から「社長になること」だった。会社員を勤めたことはあるが、いづれ起業した時に身につけておいた方がいいスキルだと思うことで頑張った。だから私は今頃てっきり起業家として生きているとばかり思っていた。しかし、現実は違った。

加害者は権力者も多い

私の加害者は、世間のイメージでは経営者のイメージが強いかもしれない。しかし経営者の中には個人で投資をしていたり、投資事業をしていたり、意外と経営者でありながら投資家の顔を持つ人は多い。私の加害者もそんな有名な人だった。第一印象はとても良い人だった。後に性被害に遭っても、様々な嫌がらせが始まっても、まさかそこまでする人とはしばらく信じられず受け入れるまでに時間がかかった。人間不信になったのは言うまでもない。

引用:NHK

https://x.com/chico_co15/status/1829182938447298653

有名な経営者や投資家が加害をするケースも多く、被害者は口を塞がれてきた。世間のイメージとは異なるためか、「あんな優秀な人が悪いことをするわけがない」「あんたの被害妄想だ」と被害者を悪者扱いすることも多い。しかし、99人にいい顔をしていたとしても1人に加害をしたらそれは加害者だ。


性被害

話を戻すと、私は起業をするために事業計画書を持って多くの経営者や投資家に会いに行っていた。むやみやたらと会っていたわけではなく、信頼できる人に紹介をいただいた人にだけ会っていた。それでも、仕事の話が円滑に進むように、相手が万が一勘違いを起こさないように多くの対策を取っていた。

<取っていた対策>
・人の紹介でないと新しい人に会わない(怪しい人に会う確率が下がるし、何かあったときに相談できる)
・仕事だとわかるようにメガネをかける
・なるべくランチかカフェのアポにする
・ご飯だったらカウンターではなくテーブル席
・パートナーがいてもいなくても左手の薬指に指輪をつける。
・プライベートの話を振られたら楽しそうにしない、目も合わせない。
・下の名前で呼ばれたら、苗字でお願いしますと言う。
・「公私混同はしない」と口癖のように伝える

他にも思いつくことはなんでも対策を取った。
それでも、例えばランチの席でお酒が出てきたことはあるし、オフィスを訪問して押し倒されたこともある。事業計画書を持っていっても見ることさえしてもらえなかったことの方が多い。最初から「起業家」ではなく「女」としてしか見られておらず女性はビジネスの土俵に上がっていないかのようで悔しかった。

あまり描写はしたくないが、そんな中で性的な見返りを求める対価型セクハラや肉体的な接触のセクハラ、更にそれ以上のレイプは本当に辛かった。

加害者は1人ではなかったから、これは起業家業界特有の問題なのだと思い、絶望をした。しかも相手はメディアに出ている名の知れた起業家だった。その人の本を読んだことがあった。憧れていた起業家像は瞬く間に崩れ落ちた。あまり泣くことはないのだが、当時はこんなに人は泣くことができるのかと不思議に思うほどに涙が出てきたことを覚えている。そもそも性被害は魂の殺人と言われる。魂がショックを受けて耐えきれなくなっていることがわかった。3日3晩泣きじゃくって、しばらく仕事も休んだ。

体調を崩していたが、少し持ち直したかと思った頃に自分の噂を立てられていることを知った。ずっと家で寝ていただけだったが、少し休んだ後にクライアントに連絡をすると「失踪していたんだってね」と言われた。なぜか理由も告げられず「もうあなたとは仕事をしません」とか「女じゃない」などと立て続けに声をかけられた。
それまで円滑な関係性を築いていたのに、突然の変化を受け止め切れなかった。私が何をしたのだというのだ・・・!?何が起きているのだ・・・!?
SNSを見ると、加害者や加害者の知り合いからブロックされていることに気がついた。こんな起業家がいた、と私を匂わせつつ嘘の話を付け加えた誹謗中傷をしている投稿も見つけた。なるほど、私を悪者にして自分たちは一致団結をして、犯した罪を隠そうとしたのだと悟った。

無職

その時私は小さなマーケティング会社を経営していたのだが、クライアントと全く連絡が取れなくなったことで、失業をした。クライアントの態度の変貌ぶりを不審に思い、菓子折を持っていって誤解を解こうと試みたこともあったが、口も聞いてもらえなかった。
あとで知ることになるが、加害者は巧妙な手口で起業家業界から排除をすることがあるらしい。

また他の起業家の被害者も言っていたが、更に起業家を追い込む嫌がらせとして、アイディアをとことんパクられて、起業そのものを難しくさせるケースもあるようだ。加害者は加害行為を隠すためなら、なんでもやる。そんな加害者の起業家たちは表では、「起業家を増やそう」などと声をあげている。もう、何を信じたらいいかわからない。

起業したかっただけなのに


その後にもインターネットやSNSの乗っ取り、セクストーションのようなものを始めさらなるネット上の悲劇が起きた。(NetFlix「偽りなき偽りのデジタル社会〜死と嘘ep.4参照)起業家業界にいては危険だと思い、身をひいたのに、それでも追ってくる。相手の人数も多く、ああ、もう逃げ場はない。殺されるんだな、と思った。ただ起業したかっただけなのに、こんな目に遭わなくてはいけないのか。ここは溢れんばかりの想いと出来事があり、長くなるので今回は割愛をする。

調査にもあるが、セクハラがきっかけで起業を諦めたり廃業に追い込まれたりした人が約1割いる。数値だけでは伝わらない、私のような被害者も一人ではない。決して見過ごすことができない問題だ。
参考:https://smbiz.asahi.com/article/15358504


こんな劣悪な環境を、見て見ぬ振りをしてきたのが今までの業界だ。
被害に苦しんでいる間にも、加害者たちは飄々とメディアに出てせっせと事業を拡大している。野放しにすることは新たな被害者を生むこと。なんとかしなくてはいけないと焦りもがきながらも業界は変わらない数年間だった。


【原因と背景】

警察に聞いた、起業家いじめの実態

様々な被害が起きたのでもちろん警察に何度も相談をした。そこでわかったのは、前述のような被害だけでなく、起業家には起業家特有のいじめがあるということをだった。ネット上でターゲットにした一人を排除するというものだった。
それを聞いて合点がいった。だから皆で私を排除して、おかしい奴扱いをしたのだ。私の身に起きたことは決して珍しいことではなく、起業家が生き延び悪いことを隠し合うための定石だったのだ。

しかし性犯罪もネット犯罪も日本の警察は遅れていて、なかなか対応をするのに時間もお金もかかることがわかった。伊藤詩織さんの裁判も5年、事件が起きてから8年かかっている。すでに体調を崩していて無職になった私には、弁護士を探し裁判で闘うことは現実的ではなかった。

スタートアップ業界の構図

NHKの放送内でも触れられているが、起業家と起業家、起業家と投資家は雇用関係がないため、法の穴となる。それをいいことに、私利私欲のために性を利用するのが今の経営者や投資家たちだ。加害者は大抵被害者よりも地位のある経営者や投資家。被害者が被害を語っても信じてもらえなかったり、加害者の味方だけが増え、被害者の声は潰されてきた。救いの場所がない。これが今の社会構造だ。


交通事故は遭う時は遭う

私は今回の出来事を交通事故のようだったと思っている。ある日突然予期もしないところで事故に遭ってしまい、仕事も人脈もお金も失ってしまった。
被害総額を弁護士先生に計算をしてもらったことがあるが、当時会社を経営していたこともあり、被害総額は少なく見積もっても数千万以上だった。よく性被害は着ている服やこちらの態度にされることもある。もし着ている服や態度で被害に遭わないのであれば、喜んで着る服も変えるし態度も変える。でも、前述の通り、私は対策を取ってきた。
横断歩道を渡っていたって、交通事故に遭うことはある。交通事故に遭った人のことは責めないのに、性被害に遭った人のことは責めるのはおかしいのではないだろうか。

スルーすることは処世術ではない

同じ理由で、交通事故に絶対に遭わない処世術などない。
ハラスメントの対応ガイドラインにも加害者への同調はしてはいけないこと、ハラスメントを見かけたら報告することが定められている。大きい会社に勤めている人なら、皆研修で習う、「当たり前」のことだ。
自分の無知さを棚に上げて、自分はたまたま事故に遭わなかったから、事故に遭わないテクニックを紹介するのはなんとも滑稽だ。

街でお財布を拾ったら交番に届けるように、死体遺棄をしてはいけないように、事件があったら見逃してはいけない。事件を見かけた人にも対応をすることが求められる。それが被害者を守ることだし、加害者を野放しにしてまた被害者を出さないことに繋がる。


女性起業家が前に出ることはジェンダーギャップ の改善になるか

結論から言うと、必ずしもそういうことはない。高市早苗さんが総理になったとしてもジェンダー平等がむしろ後退しただろうという議論と似ている。確かに初代女性総理の誕生はジェンダーギャップ 指数を改善させることかもしれない。しかしそれは形上のことだけであって真のジェンダーギャップ 改善ではない。彼女は男性権力者に持ち上げてもらい今の地位を築いてきた人だ。

これと同じことが女性起業家にも言える。実際、私も多くの先輩女性起業家から「女をうまく使え」と言われてきた。上場している男性経営者と話をしても、「女性起業家が性を売りに誘ってくることが多い」という話もよく聞いてきた。これは男性が加害者だから男性の行動を改善しようという単純な問題ではなく、セクハラを誘発する言動をしたりセクハラを黙認してきた女性側にも問題があるのである。

今、活躍している女性起業家は男性社会の構造をうまく使い、時に加害者だとわかっても加害者へ同調をして出世をしてきた人たちが多い。もし彼女達が加害者の同調をしていなければこれらの問題は当の昔に問題視をされてきたはずだ。

そういう女性は自分の見せ方を知っている。ジェンダー 平等についてよく話題にし、セクハラは良くないと言う。
しかしそのメディアに出ている女性起業家達からも私はSNSでブロックをされてきた。心の底では男性権力者の味方なのだ。
誹謗中傷やいじめ問題は直接話し合いをすることで解決すると言う話を聞いたことがあった。その女性は私の加害者とも一緒に仕事をしていたのを知っていたので、何か誤解があるのではないか、話せばわかりあえるのではないか、と助けを求め手紙を書いたが連絡はなく、SNSもブロックをされたままでいじめは収まらなかった。報道後は「黙認はよくない」と発言をしていた。

今回の報道で「そういう時代だった」ではいけないと多くの人が感じてくれたのではないかと思う。スルーすることで膨大な損害を受けてきた人が多くいることを知って欲しい。

スルーする人が賢いという時代はもう終わりにしよう。本当に誠実な対応とは何か、真のジェンダーギャップ とは何か、今一度考え直そう。

バイスタンダーの存在

話をまとめると、これはバイスタンダーと呼ばれる存在の大切さを表している。バイスタンダーとは直訳すると「傍観者」のことである。起業家業界で起きる性犯罪はほとんどが傍観者がいると言われている。傍観者が適切な対応を取らずにきたから、今まで性犯罪を隠すことに成功できたのである。

今、私はスタートアップエコシステム協会のDEI勉強会に参加をし、このバイスタンダーが適切な行動を取ることで、性犯罪を減らしたり、ハラスメントが減るための活動を行っている。この業界をこのままにしてはいけないことを多くの人が取り組んでいる。
一人ひとりの行動がセクハラ・性犯罪をなくすことに繋がる。
言葉で言うのは誰でもできる。自分のイメージアップのための行動ではなく、ぜひ今まで見てきたセクハラや性犯罪についての行動を変えてほしい。

・加害者に同調しない
・被害を見かけたら声をあげる(通報する)
・被害者に手を差し伸べる、話を聞く

難しいことではないと思う。小学生でもできることだ。

【現状の問題】
被害者の孤立

前述してきたように、被害者は排除され、孤立する。更に被害者を孤立させるものとして、加害者の地位があることや、スタートアップ業界がここまで劣悪だということが知られておらず、被害を誰も信じてくれない、加害者の同調をする、ということがあった。

更に加害者は経営者なのでサービスを提供している。加害者のことを忘れたくても、あちこちでサービスを見かけてしまう辛さもある。

結果、誰にも相談できない、信じてもらえない、忘れたくても思い出してしまう沼に落ちていく。

声をあげることの必要性

それでも私は声をあげて欲しいと伝えたい。声をあげるのは警察でも弁護士でも友人でもいい。誰でもいいからとにかく相談をして行動を取ることをお勧めする。私は被害に遭った後、体調を崩してしまい、対応が遅れてしまった。そうこうしているうちに二次被害、三次被害が始まり、気がついた時は手遅れだった。
なかったことにしたい、という感情もわからなくはない。でも、まずは助けを求めて対応をしないと、あとで対応をしきれなくなることもある。特に性犯罪は証拠がすぐに消えてしまうから、被害に遭った直後にすぐに警察に連絡をすることが大切だ。被害は性被害だけで終わりじゃない。むしろあらゆる被害の入り口となってしまうことになる。早く手を打つことで、二次被害、三次被害を防ぐことにも繋がると思う。

【これからの未来に向けて】

行動規範の設置/相談窓口の設置

今、これらの問題を解決するために立ち上がったVCが主宰をする勉強会に参加をしている。皆、有志の集まりだが、起業家・VC・行政・弁護士と多彩な顔が揃う。その中で今取り組んでいることは行動規範の設定や相談窓口の設置である。年内には形になるように活動中である。

当事者の会の設立

個人的には当事者の会を設立したいと思っている。起業家のいじめが起きた際には居場所がなくなり孤立化をする。学校のいじめであれば転校をするという逃げ道があるが(それでもなかなか忘れられない)、起業家の場合は大きな会社を持っていることも多く、嫌でもメディアで見かけてしまったり社名やサービス名を見かけてしまったりして、仮に起業家業界から退いても、完全に忘れることが難しい。故に精神的なダメージが長引きやすく、安心できる居場所が必要だ。
臨床心理士などの専門家に話すこともぜひして欲しいが、同じ境遇の人がいることを知ってもらって、居場所を作りたいと思っている。

しかしこれらは対処療法に過ぎない。まずは加害者が加害行為をやめてくれることが第一だ。

今回の件で、被害者は大勢いることは可視化された。心ある経営者や投資家が今までの悪行を反省し、2度と性犯罪を起こさないこと、DEIへの理解を深めること、さらにはジャニーズ問題の時のように被害者への謝罪を行ってくれることを祈っている。

法改正

投資家・起業家・VCの間でセクハラをしても罰せられることがなかった。これには法改正が必要である。もともとは個人事業主も権利が不十分だったところが、様々な権利を得てきた。投資家・起業家・VC間にも法律を制定し、セクハラが起きない社会が実現されて欲しい。

これには多くの方の賛同が必要なので、署名を行っている。SNSをやってこなかったこともあり、数はまだまだ足りませんが、どうかご賛同の程よろしくお願い致します。

長文・駄文ですが最後まで読んでいただきましてありがとうございました!

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