新しい庭と秋虫
引っ越しをして小さな庭がついてきた。今までは集合住宅の二階から見下ろしていたが、今は同じ平面に庭が広がる。右隣も左隣にも緑鮮やかな芝生がふさふさとして、休日には芝刈り機で伸びた芝生を刈っている。「元々はどのお宅の庭にも芝生が植わっていたようですよ。」と右隣の奥さんが教えてくれたが、我が家の庭には雑草が生い茂っているのみである。前の住人が芝生を好まなかったのか。今植えようにもこの暑さで枯れてしまいそうだし、そもそも芝は春に植えるものでこの時期に売ってはいなのかなとも思う。とはいえ、一軒だけ雑草だらけにしておくのも気が引ける。
以前の庭では、6月のジージーという鳴き声から始まって、時間と共に種類が増し様々な虫の音を楽しめた。ネコジャラシやカヤ、メヒシバなどの茂ったその空間には、10月の終わりくらいまで虫たちが住んで、微かな声が聞こえていた。7月、新しい庭で耳を澄ますと、チッチッチッと甲高い虫の音が聞こえる。カネタタキ?でも、それだけしか聞こえない。ここには虫が住まないのだろうか。芝生だけだと虫はいつかない?しばらくすると、チ。チ。チ。チ。というゆっくりペースの鳴き声も加わった。チッチッチッとチ。チ。チ。が混ざり合って時折チリチリチリと聞こえることも。芝生にすると虫の声が楽しめないのなら、雑草のまま鬱陶しくない程度の高さで管理するのもいいかなと考えて二週間ほどが過ぎた。すると、明らかに虫の声の種類が増えている。リーリーリーやらジージージー。時折、コロコロコロも聞こえてくる。ん?芝生の庭にも虫は住む?ただ秋が深まり鳴く虫が増えただけ?それとも、雑草をそのままにしている我が家に虫たちが集まってきたのだろうか。庭の半分を芝生にし、もう半分を雑草にして実験してみるわけにもいかない。秋の庭と虫との関係。謎は深まるばかり。これから、この庭、どうしていこうか、それもじっくり考えよう。しかし、今宵は白い月の光の下、しばし虫たちの鳴き声に耳を傾けようと思う。
(風のそよぎ)