『氷の城壁』第4巻購入・紹介・感想(その1)
トップ画像ですが、第4巻の表紙がヨータ(日野 陽太)ということで、ひなん場所である日野中央公園の看板を使用しています。
美姫が落ち込んでいる状況のシーンで、ヨータが一人とって返すシーンがありますが、それを想起させるピクトグラムもあったりします。
なおググると日野市ではなく、横浜市にある日野中央公園が文字としては最初に出てきたりします(^^)。オートバイに乗っている方には、ラフ&ロードの横浜店に隣接しているので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
これまでの1・2巻/3巻の感想は、下記をご覧ください。
もちろん本記事を含めてネタバレになっていますのでご注意くださいませ。
1.プロローグ
先生の対談にあった「序盤は暗い話なんですが、自分が描きたかったのは、それが解消されるところ」からすると、とくに描きたかったのは、第3巻の第30話からこの第4巻を中心に第5巻に相当する部分までだったと思います。
また個人的には、第33話~第41話を描いたこの第4巻が一番泣ける部分の多いお話でした。友情の一側面である友達へのフォローを格別に描いている巻となります。
なお今回はセリフ等引用部分が多いのですが、本冊子『集英社』ジャンプコミックス 「氷の城壁」第4巻より引用しています。
また今回の帯がついている本の表紙は以下のとおりです。
2.友情
第4巻においては友情が大きなテーマとなる場面でして、主に以下2つのシチュエーションになります。
1つは、第3巻から引き続いている、家のなかで自分いる?(実際のセリフはヨータの「俺、いる?」)と感じているこゆんとヨータが、性別に関係なく親友になっていく過程を描いた34・35話の部分。これでヨータの暗い部分が大きく解消され、こゆんの暗い部分も相当解消されることになっています。
もう1つは、本来の自分がうまく出せていないと感じている美姫に、普段の仲間となっている3人の女子クラスメートがちょっと違うんじゃないかと思い、関係が気まずくなっていくのに対する37~41話の部分。これで美姫の暗い部分がほぼ解消されることになります。
結果としてヨータ、こゆん、そして美姫の暗い部分は相当解消されていくことになり、先生が真に描きたかった部分ではないかと思います。
なお36話はこれらのつなぎとなっているのに加え、4人の関係が混線していく様も描いていて、お話として面白く笑えるシーン多数ですが、氷の城壁というお話全体としては重要な1局面になっています。
3.道徳の教科書(副読本)的な役割
LINEマンガ、マンガmee、X(旧ツイッター)のコメントで散見される、『氷の城壁』は道徳の教科書にすべき、という趣旨のコメントに一番ふさわしいのがこの第4巻となります。990円という高価な冊子なので公立中学校ではさすがに難しいと思いますが、教材の自由と多少高い資料へも出費可能(もしくは無線LANの設備が整っていて、アプリに全員アクセス可能)という状況を有する共学の私立中学校では、どなたか先生が実践(授業3~6回程度)していただける可能性を有しているのではないかと思います。
あと無線LANの環境次第ではクラス人数1ケタの公立中学校でも、私物または貸与タブレットにアプリインストール可能ならいけるかもしれません。全員で討議できますしね。
あえて共学と書いたのは、「男女が話しているのはつきあっているかも」、などと思わず、男女間にも友情の側面はあり、それを深めるきっかけにし、男女の壁を低くしてもらいたいということ、加えて男女という性にこだわらない交流もあるということに気づいてほしいということにあります。男女別学でもできるとは思いますが、男女共学のほうが教育効果ははるかに高いような気がしています。
困難だとは思いますが、37~41話の部分は、前段階の文字説明を若干入れたうえで、タテヨミ形式で1ページあたり3行にわたって構わないので、道徳の教科書に何ページか入ってよいのではと思います。あるいは、通常のマンガ冊子形式として、道徳に使えるいくつかの話をマンガだけの副読本として作成するのもありかと思います。
4.涙を流してしまうほど感動してしまった第4巻部分(その1)。
【ヨータを救うこゆん(34・35話)】
こゆんと共通する側面を有していると感じたヨータは、自分は人とは違う、それどころか母の死後父再婚で双子が生まれ、自分以外の家族とも疎外感を感じている回想シーン的な場面のあとに、「ずっと逃げてるの」と、これまで誰にも、もちろんミナトにも話したことがないことを告白しています。
これに対しこゆんが、自分の親が離婚して片親となったあと、母がさらに仕事中心となり、孤立感を有しているという極めて自分のプライベートに関すること、都合がつけば時間を一緒に過ごしてほしいといことを告げ、
・気持ちが痛いほどわかる
・環境から逃げたところで 自分からは逃げられない
というキャプションを独白としてつけながら、次のセリフを断続的に続けます。
に対し、ヨータは「すごいねこゆん・・・ お見通しだね」ということで、すぐにこゆんからの共感を素直に受け取り、自分も親密な友人にすら語ったことをないことを告げ、こゆんと共感しあえる関係を築き上げています。
ヨータは続いて、逡巡しながらも、こゆんの幼馴染で親友である美姫のことが女性としても友達としても好きだということを伝え、こゆんもものすごく驚く一方、それどころか共感どころか喜びの感情・動作まで示します。
とはいえ、ヨータからは美姫がそう思っている気配みないことから告白するつもりがなく、「(美姫を)好きになってごめん」という気持ちすらこゆんに告げてしまいます。
このように2人だけ、しかも自分という人間そのものを規定する秘密を共有するということが描かれ、指切りげんまんをして、お互い、友達になれてよかったと、実際にことばに発し、駅で別れることになります。
なおこのシーンについて第4巻では、右ページにヨータ、左ページにこゆんと1頁の半分を超える大きな絵で対比され、Webtoonとは異なる素晴らしいマンガ表現になっているのも見どころです。
帰宅したヨータに対し、玄関で出迎えた継母が、パッと見て、表情の明るさに気づくシーンを置き、ヨータがいかに救われたかを描いています。
これにより話の展開としても、こゆん=ヨータが恋仲にはまずならないだろう、という一安心?も初読時に個人的には得られました。
しかしこの話の末尾で、美姫はバイト先の店でヨータとこゆんがお店の店員さんのいうようにカップルのように見えたことから、自分の(人間として)好きな人(ヨータ)と好きな人(こゆん)がうまくいってカップルとして幸せになってほしいというシーンを少女&ギャグ漫画調で描き、今後の話を面白くしそうな部分も作っていて、これが36話に続くことになります。
自らの壁をそれぞれ破ることによって、新たな信頼を生み出したシーンが描かれたところに、涙を流してしまったほど感動した次第です。
9月4日の発売日から10日も過ぎてしまい、だいぶ長くなってきましたので、37-41話部分などこのあとの部分については、項を改めることとします。
【追記】
この記事をアップした日の夕方、52新聞社と共同通信のよんななニュースの「文化芸能」→「エンタメ」のところで、
【インタビュー】「氷の城壁」阿賀沢紅茶さん 傑作リスト入り間違いなし 定型覆す対等な少女漫画
というタイトルで、(共同通信=川村敦)の署名入りで阿賀沢先生への下記インタビュー記事が出ました。今後各地方紙で記事がでるかもしれませんが、ぜひご一読されることをお勧めします。