エミーナの朝(8)
ナゴンの恋人 2
ナゴン「エミリン、しっかりして! あなたの旦那様はもういないでしょ!」
エミーナ「じゃあ、あれは誰?」
ナゴン「ああ、なんてこと。早く紹介すればよかった。エミリン、わたしが悪かったわ」
そう言ってナゴンはベッドから出て、「使うわよ」と言って、わたしのスマホを取り、わたしに背を向けた。
そして、電話をかけ、話し始めた。
今までに聞いたことのない強い口調である。
「今すぐここに来て、エミリンの家よ。
……何言ってんのよ。あなたの大切な人でしょ。
今よ、今! 今でなきゃだめっ!」
『あなたの大切な人』って言うことは、やっぱり……
スマホを置いたナゴンは「今、ここにくるわよ。しばらく待ってね」と優しく言った。
さらにナゴンは「あ、起きて、身支度をととのえてね。来るのはね、コーちゃん……おっとっと、光一さんよ。」
えっ『こういちさん』って……誰? そんな男性いたかしら。
書店の同僚かな? 夫には、妹はいるけど兄や弟はいないし、あとは……
アーーーッ!!!
いた、いた、いたーーーっ!!!
エミーナ「ま、まさか、あの方?」
ナゴン「わかったようね」と少し恥ずかしそうに言った。
わたしは目を見開いた。ナゴンが付き合っている人が、あの方だってぇ?
思わぬ人が出てきたことに信じられず、それ以上なにも言えなくなった。
しかし、とにかく、ここに来るというのである。
準備をしなくてはと、二人とも、ベッドの片付け、着替え、メーク、掃除、お茶……と準備に動き回った。
ナゴンは着のみ着のままだったので、わたしの服から似合うものをなんとか探し出して、着替えてもらった。
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