エミーナの朝(4)
親友 ナゴン 4
うふふ、二人ともコギャルみたいね。
そう思いながら、写真をスワイプした。
そのうち暗い情景が出てきた。
これは見たらまずいかなと思ったが、よく見ると、エミーナ自身の画像である。
あれ、こんな写真、いつ撮ったんだろう。日時を見た。今朝の二時台である。
スマホの中のエミーナは、じっと、こちらを見ている。無表情で見ている。
スワイプするとまた出てきた。前の日の同じような時刻である。じっとこちらを見ている。さらに前の日も同じであった。
まったく憶えていなかった。
「ああ……」めまいがして、顔を覆いながらソファーに体を預けた。
考えた。
ナゴンはスマホを忘れたといった。明日の夜に取りに来ると言った。でも……おそらくナゴンはわざと置いていったんだ。
面と向かって画像を見せたら、わたしが激しく動揺し興奮することをおそれたに違いない。
そんなことをされたら、取り乱して何をしたか分からない。ナゴンの気づかいだろう、きっと。
心を落ち着けて、明日、ナゴンが来るのを待とう。
目が覚めた。
明るくなっているがそれで目が覚めたのではない。わたしの部屋に誰かいる。
ハッとして、周りを見た。
あ……、違う。わたしの部屋じゃない。
しかも、近くの床に、なんとナゴンが寝ている。
ここは……、あ、ナゴンの部屋だ。
えっ、なんでナゴンの部屋で寝ているの?
起き上がって、眠っているナゴンを見た。活動的な女性を思わせる艷やかで張りのあるいい顔である。こんな顔にわたしも……
いやいや、そんなことよりも、何が起こっているの?
ナゴンの匂いのするベッドをそっと抜けた。紅茶とティーカップを探し、キッチンで二人の紅茶を淹れ、ベッドの脇のテーブルに持ってきた。
ナゴンは既に目を覚まして、下から、じっとわたしを見ていた。目が会った。
しばらくナゴンと見つめ合っていた。
涙が出てきた。泣きながら聞いた。
エミーナ「ナーチン……一体なにがあったの?」
ナゴン「もうスマホの画像は見たのよね?」
エミーナ「うん……」
ナゴン「あなたは、この前、言ったようなことを、毎日、私のところに来て繰り返していたの」
わたしは、下を向いて顔を覆ってしまった。
ナゴンは続ける。
「そして、今朝も早くにわたしの部屋までやって来てた。
気配がしたので、ドアを開けると、あなたはドアの前に無表情で立っていたの。
でもあなたの目は潤んでいた。とっさにハグしたわ。そしたら、あなたはグッタリしたの。だから部屋に抱きいれて、ベッドに寝かせたわ。
あなたはそのままベッドで寝てしまったの。だからここに居るのよ、あなたは」
ナゴンが嘘を言うはずがない。頭が混乱して、泣くしかなかった。
ナゴンは起き上がり紅茶を飲んだ。そして落ち着いた口調で言った。
「病院へ行こう。わたしもついて行く」
(エミーナの朝5へつづく)
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