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エミーナの朝(14)

記念旅行 3

亜未のホーム/亜未

  興奮さめやらぬナゴンが、飲み物の用意を始 めた。

  ナゴン「エミリン、コーヒーでいい?」

  エミーナ「いいわよー」

  ナゴン「アーちゃんも、コーヒーでいい?」

  女の子「ありがとうございます。お願いします」

  アーちゃんか。 でも、アーちゃんは、お母さんに対して、ちょっと、よそよそしい返事ね。

 勝手知ったるナゴンのアパート。

 わたしは、食器棚から、コーヒーカップ、スプーン、菓子皿、菓子用のフォークを持ってきて、テーブルに並べた。

 ナゴンは、コーヒーをドリップし、わたしはスイーツの準備。

 最初は、チーズケーキにしようと思った。

 ただ、各スイーツは、二人分づつしかないので、わたしは、シュークリームにした。

 コーヒーの香りで、気持ちが落ち着いて来た。

 最初に口を開いたのは、わたしだ。

 エミーナ「ナーチン、あなた、お母さんなの?」

 ナゴン「エミリン、ごめんね。 この子の話を全然してなかったね」

 エミーナ「そうよ、目の前で、お母さんって呼ばれるナーチン見て、びっくりしたわよ」

 ナゴン「少し前に、この子から電話があったの。 あ、この子の名前はね……」

 女の子は、「亜未といいます。 よろしくお願いいたします」と、頭を下げた。

 わたしも「エミーナです。ナゴンさんのお友達よ」と自己紹介した。

 ナゴン「亜未は、今から、ここへ、来るっていうの。 エミリンも来ることになっていたから、紹介するのに、いい機会だと思ったわけ」

 エミーナ「それで、二階の通路で待ってたのね」

 ナゴン「そうよ。 でも、この子が、エミリンと一緒に来るとは思わなかった。こっちが、びっくりしちゃったわ」

 そして、この亜未と言う子との関係を話し始めた。

 簡単に述べると、次のごとくである。

 十年ほど前、ナゴンは小さい機械メーカーで、事務員として働き始めた。

 オーナーである社長は、妻を亡くして間もなかった。

 社長には小学生の娘がいた。 その子が亜未である。 事情があって、亜未の世話が親族では難しくなった。   

 社長に頼まれて、ナゴンが住み込みで、亜未の世話をすることになった。

 一年ほど経って、亜未がなついてきた頃、ナゴンはその家を出る決心をした。 この事情については、ナゴンは、はっきり言わなかった。

 亜未の世話ができなくなったことにより、亜未が不登校になり始めた。

 社長に懇願されて、再度、通いであるが、ナゴンは、亜未の世話をすることになった。

 その間に、ナゴンは、遠く離れた街にアパートを見つけておいた。 それが、このコーポ・マツリカである。

 そして、亜未が小学校を卒業すると同時に、会社も亜未の世話もやめて、誰にも言わずに、ここに移転してきたのである。

 ただ、亜未のことは気がかりであった。 このため、以後も、誕生日とクリスマスには、ナゴンから亜未にプレゼントが、住所は伏せて届けられていた。

(エミーナの朝15へつづく)


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