大手町の森〜大都会に現れた本物の森〜
「あれ??何だここは??」「ここ山の中だっけ??」「ここ大手町だよな??」「降りる駅を間違えた??」「いいや、人が作ったはず。なんでこんなところに山があるんだ??」
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みなさんはこれまで都市の中にある公園や緑のオープンスペース(空き地)を訪れたことがあると思いますが、興味を持ってじっくりと観察したことがありますか?
都市の中にある公園や緑のオープンスペースには、人々へ癒しや安心の提供、生物多様性の保全、ヒートアイランド現象の抑制、防災性の向上、観光振興拠点の形成などといった、たくさんの機能があります。
今回は日本を代表するビジネス街、大手町で見つけた”本物の森”をご紹介します。
1、「大手町の森」とは?
2014年4月に竣工した「大手町タワー」(東京都千代田区)。その足元に、広さ約3,600㎡の人工の森が作られました。そこが「大手町の森」です。周辺には大手町のオフィス街、東京駅や皇居といった有名な場所がたくさんあります。
「大手町の森」には200本を超える樹木や草花、渡り鳥や希少な昆虫などが生息しており、生物の多様性を実感できる場となっています。
では、この森を再現するために一体どのような取り組みがおこなわれたのでしょうか?
2、ほかの緑地との違いは?
「大手町の森」を建設するにあたって、
とプロジェクトの担当者が語っています。都会のオフィス街に”本物の森”を作ることへの特別な想いが込められていることがわかります。
そのため「大手町の森」の建設には、日本初の試みである「プレフォレスト」というとても珍しい手法が採用されました。
また、周辺からたくさんの生き物が訪れ、たくさんの草花があります。
①プレフォレストとは?
「プレフォレスト」とは、あらかじめ別の場所で計画地と同じように森を作り、樹木や草花の植栽方法や管理のしかたを事前に確かめることです。
これはとても時間と費用がかかる方法です。
ですが単なる緑地ではなく、強い特徴のある”本物の森”を再現する!という夢の実現のため千葉県の君津の山林で約3年という年月をかけて行われました。
この手法を使ってさまざまな事柄の検証に取り組んだ結果、たくさんの貴重な情報を得ることができました。そして大手町にある本来の自然の再現と維持管理の方法がわかったのです。
②どんな樹木や草花があるの?
「大手町の森」には、自然の森にある3つの要素が取り入れられています。3つの要素とは、「混交」「異齢」「疎密」です。
少し説明します。
混交(こんこう)
樹木には葉っぱが枯れ落ちてしまう木(落葉樹、広葉樹)と、反対に一年中緑の葉っぱがついたもの(常緑樹、針葉樹)があります。その場所に2種類以上の性質の樹木が入り混じっている状態のことです。
異齢(いれい)
樹木の育った年月によって、古い木と若い木が混ざっていることです。大手町の森には樹齢30年〜50年ほどの若い樹木が植えられています。
疎密(そみつ)
樹木が何本も集まって空間が葉っぱで覆われているところと、閑散として空のよく見える広々とした空間になっているところの二つの状態があることです。
このように自然の森はいろいろな樹木や草花が、まばらに年月をかけて移り変わりながら生えているのです。
ここに植えられている樹木や草花は、生物の遺伝に配慮して、関東地域の山林から移植されました。
樹木
ヤマザクラ
モミジの仲間
アカガシ
アオキ
ムラサキシキブ
コナラ
その他、全部で18種
草花
ニリンソウ
カタクリ
フユイチゴ
ムラサキケマン
イカリソウ
シャガ
シダの仲間
その他、わかっているものだけで約280種
③どんな生き物がいるの?
「大手町の森」にはたくさんの虫や鳥が訪れています。
森の中に水場があることから、皇居やその周辺からたくさんのトンボの仲間が飛んできていることがわかっています。
昆虫類
スジグロシロチョウ
ムスジイトトンボ
アオモンイトトンボ
その他、およそ66種類が確認されています。(施工後1年目のモニタリング調査より)
鳥類
メジロ
キビタキ
ヒヨドリ
シジュウカラ
カワラヒバ
その他、約8種類が訪れているのが確認されています。(施工後1年目のモニタリング調査より)
④多くの表彰や認証を受けている
「大手町の森」と、隣接する「大手町タワー」は、このような自然環境の再生への取り組みによって、2014年から2018年にかけて11におよぶ表彰や認証を受けています。
表彰
2014年 第30回都市公園コンクール 企画・独創部門 国土交通大臣賞
2017年 第16回屋上・壁面緑化技術コンクール 屋上緑化部門 環境大臣賞
認証
2013年 「JDB Green building」認証 プラチナ認証(最高ランク)
2014年 いきもの共生事務所認証制度(都市・SC版)第一号認証
3、「大手町タワー」とは?
「大手町タワー」とは、大手町の森と同じ敷地内にある地上38階、地下6階の大きな複合ビルです。
高層部にはオフィス、ラグジュアリーホテルの「AMAN TOKYO」、地下には商業施設「OOTEMORI」(オオテモリ)があります。
「大手町タワー」には現在20店舗のレストランやデリがあります。お気に入りのメニューをテイクアウトしてベンチでいただくのもいいかもしれません。
個人的には地下2Fにあるフラワーショップ「les mille feuilles de liberte(レ ミルフォイユ ドゥ リベルテ)」が大好きです。
4、訪れた感想
2022年3月26日、私が「大手町の森」に来たことは全くの偶然でした。
ビルから出て森をひと目見た瞬間から冒頭の感想が沸き起こりました。頭の中がひどく混乱したのを覚えています。それくらい、そこに”本物の森”が広がっていたのです。
その日、私は東京駅のそばにある丸善書店を目指していました。大手町駅で下車し向かっていたところ、思いがけず「出会って」しまったのです。
私は目的を忘れて、森の再現性の高さに驚きながら夢中でそこを観察しました。まるで本当の山をそっくりそのまま切り取って持ってきたかのようです。
ビルから出たところに石でできた案内板があります。私はこの森がどのようにできたのかを知りました。
「すごい!これは記事にしなければいけない!」私は興奮状態のまま、さらに観察を続けます。
そこは約3,600㎡の小さな緑地であり、背景にはビルが立っているにもかかわらず、はるか遠くまで森が広がっているようでした。
山に住むシカやタヌキやヤマドリのような野生の生き物が、ひょっこりと顔を出してきそうな雰囲気。
葉の落ちた冬の山に白いヤマザクラが咲いている様子を見て、ふるさとの風景を思い出します。実家の母に急いで電話をするほど興奮していました。
5、「大手町の森」への行き方
【地下鉄】
<東京メトロ> 東西線・丸ノ内線・千代田線・半蔵門線
<都営地下鉄> 都営三田線
各線「大手町駅」下車 下車駅直結 東西線中央改札前
【駐車場情報】
利用時間:6:00〜24:30
料金:30分300円、以降30分毎300円、12時間最大料金2,700円
※利用時間外(24:30〜6:00)は入出庫できません。
【所在地】
東京都千代田区大手町一丁目5番5号
6、最後に
この森が2014年にできてから今年で8年です。
完成から1年後に実施した調査では、たくさんの昆虫や植物が生息していることがわかりました。その後のモニタリングの資料を見つけることができなかったので、今はどのように変化しているのか詳しいことはわかりません。
ですがもうすぐ森が完成して10年になります。今後の調査結果が出たら見てみたいです。
これからも、森がどのように変化していくのかとても楽しみです。
四季を通して楽しむことができる「大手町の森」、みなさんもぜひ訪れてみてくださいね。
7、参考記事
大成建設公式サイト: https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2014/141029_3927.html
大成建設設計本部公式サイト「大手町タワー」:
https://www.taisei-design.jp/de/works/2014/otemachi.html内山緑地建設株式会社 協力事例・技術紹介ページ:
http://www.uchiyama-net.co.jp/technology/ootemachi/index.htmlOOTEMORI公式サイト:
https://www.ootemori.jp/index.php