卒業生とのコミュニケーションを根本から変える!?追手門学院大学の「OIDAIアプリ」のポテンシャルを考える
高校生、在学生、卒業生とどのようにコミュニケーションをとるべきか?こんな問いをされると、自然と大学広報にかかわる問い(=課題)だと受け取ってしまうのは、私が広報関連の仕事をしているからなのか、それとも一般的にそうなのかは気になるところです。とはいえ、今回、追手門学院大学のプレスリリースを見て、実は広報的なアプローチ以外でも、この問いに応えられるかもしれないことがわかり、ちょっとドキドキしています。今後、こういうのって増えていくんでしょうか。気になるところです。
入学前から卒業後まで使い続けられる「OIDAIアプリ」
では、どんなアプローチなのかというと「OIDAIアプリ」というアプリの利活用です。このアプリは、入学前から卒業後までの学生の体験価値向上をめざており、現段階では学生の窓口業務をアプリ内で完結する仕組みを整備しているとのこと。またアプリ導入とあわせて統合データベースを構築して、教育DXにも役立てるということがリリースに載っていました。
少し前になりますが、本noteで東洋大学の在学生向けアプリを取り上げて、アプリをデータの利活用に使うのではないか、みたいなことを書いたことがあります。このときの予想を、今回の「OIDAIアプリ」は実践しようとしているんだ、という印象を受けました。
それで話は冒頭に戻るのですが、今回「OIDAIアプリ」のリリースを見て、あらためて思ったのですが、これまで高校生や在学生、卒業生とコミュニケーションを取るというと、ウェブサイトや広報誌といったメディアに伝えたい情報を載せて届けるものだと、無意識に思っていたんですね。でもってそのためには、ターゲットにまず興味を持ってもらわなければいけない、さてどうしたものかと、そんな頭でいたわけです。
でも、今回の取り組みだと、伝えたいことを伝えるのではなく、必要だから使うというスタンスで接点をつくっています。これがちゃんとできるのであれば、わざわざ何かしなくても、このアプリ経由で伝えたいことがちゃんと届くようになるのではないかと感じました。
さらにいうと、このアプリがちゃんと機能するなら、卒業生とのコミュニケーションが劇的に変わるかもしれません。
はじめることすら難しい、卒業生とのコミュニケーション
高校生は、基本的に大学の情報を求めているので、アプリがあろうがなかろうが、ある程度のコミュニケーションは成立します。在学生は、大学が生活のメインステージになっているので、自然にいろんなかたちでコミュニケーションをとります。でも卒業生って、転職するときに卒業証明書を取りに来るとか、ごく限られたケースをのぞくと、大学と接点をもつ場面も必要性もほぼないわけです。
必要性がないと、そもそも大学とつながろうとか、つながりたいという発想自体が浮かんできません。おそらくですが、ほとんどの卒業生は、大学とつながる意味とかメリットとか、そういうことを考えるずっと前段階にいるように思います。卒業生向けの広報誌をつくっても、いまいち効果が実感できないのは、おそらくここらへんが関係しているように思います。
で、ここからです。なぜ今回のアプリにポテンシャルを感じるのかというと、これが“卒業生向け”というカテゴリで区切られていないからです。在学時から(高校時から?)使われていて、それが卒業後も地続きにつながり使われ続けていく。こうなることによって、アプリを使うことが、卒業前から習慣化されるわけです。当たり前ですが、卒業生向け広報誌を読む習慣のある在学生はいないし、卒業生向け広報誌の価値を理解している在学生も基本的にはいません。
卒業生とのコミュニケーションは、そもそもそういったコミュニケーションがあるのだということに気づいてもらい、それからその意味やメリットを伝え、共感してもらって、はじめてスタートします。今回のアプリであれば、これら手順を全部すっ飛ばすことができます。もちろん、前提としてこのアプリが卒業生にとって有用である、というのは必須です。でも逆からいうと、それだけでいいんです。極端な話、学生時代と同じようにアプリを使ってもらえさえすれば、それだけで今までの大学では成し得なかったほど濃密なコミュニケーションを卒業生ととることができるわけです。
「OIDAIアプリ」のプレスリリースには、「今回、アプリの導入と合わせて、学内のあらゆる情報を集約する統合データベースの構築もスタート」と書かれていました。受験時、在学時、卒業後の自分のデータと、他のアプリ利用者や学内データを利活用することで、ある種の“人生のコンシェルジュ”のような役割をこのアプリが担ってくれたら、ずっと使い続ける卒業生も出てくるように思います。まだ夢物語かもしれませんが、アプリを習慣的に利用する関係者を増やし、データの集積を続けていくことで、徐々に実現できる土台ができてくるはずです。
将来的に卒業生がこのアプリを日常づかいするようになれば、卒業生向けの広報媒体なんていらなくなるだろうし、そもそも大学が提供する教育やサービスが大きく変わるように思います。「OIDAIアプリ」が今後どう発展していくのか注視していきたいです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?