新型コロナ収束でリスタートした大学の国際交流。今だからこそ増やしたい、留学エバンジェリストたち
新型コロナがほぼ収束したことで、大学も以前のにぎわいを取り戻したように思います。今回、見つけた大阪学院大学のイベントは、そんなコロナの収束を感じさせつつも、今だからこそより力を入れるべき取り組みなのだと、あらためて感じました。
英語授業体験ができる、在学生向け留学フェア
では、どんな取り組みなのかというと、「Study Abroad Fair 2023」という在学生に向けて留学の魅力を伝えるイベントです。学内にいながらオランダの英語授業を体験できるほか、留学相談や国際交流イベントの企画運営をするサークルの紹介などがあるようです。
これまで在学生に留学の魅力を伝える最も効果的かつスタンダードな方法は、留学経験者が語るのと、海外から来た留学生と交流するという2つだったのですが、これらは留学生が行き来する状況があってはじめて成り立ちます。コロナ禍で国際交流がストップしていたため、今年はこういった王道のアプローチが取りにくく、大阪学院大学では英語授業体験という新たなイベントに取り組んだのかなと思いました。
留学の魅力を伝える優良コンテンツが、ほぼ全滅!
大学の国際交流は、新型コロナが収束したことで、めでたしめでたし、ではなく、今こそが正念場のように感じています。
2019年12月に新型コロナ感染者が中国・武漢ではじめて報告され、2020年になるとほぼすべての大学が、国際交流プログラムを中止、もしくはオンラインに切り替えました。その後、段階的に再開したりもしましたが、本格的にもどったのは新型コロナが5類に移行した今年からです。ということはですよ、2020年~2023年(前半)の3年半の期間、満足に留学できた人はほとんどいないわけです。医学部、薬学部をのぞくと、学部は4年制のため、コロナ禍前に留学した人が徐々に卒業してしまい、今や大学の学部には海外留学を経験した学部生がほぼいないことになります。
先ほど留学経験者の語りは、留学の魅力発信の優良コンテンツの一つだと書きましたが、実はそれだけでなく、日常のなかでじわりじわりと学生たちに海外への興味を育むという役割も担っています。留学経験者という留学エバンジェリストたちがほぼ全滅してしまったことは、実はこれからしばらくの間、水面下で大学の国際化の足を引っ張る大きな要因になるのではないかと感じています。
また、もう一つの優良コンテンツである、海外から来た留学生との交流も危機的な状況です。というのも、これら交流イベントの企画運営を担う国際交流系の学生サークルが、この3年半の間に留学生が大幅に減ったことで、人数が減ったり、企画等を行うノウハウを消失したりして大幅に弱体化してしまったからです。
留学の魅力を伝えられるコンテンツは、いつ復活するのか?
留学エバンジェリストも、国際交流系学生サークルも、放っておいたら自然と昔のような状況に戻るだろうという考えは、かなり危険なように思います。というのも、留学エバンジェリストがほぼ全滅したり、サークル活動が長期間ほとんど機能しないという状況は、どの大学も今まで一度も経験したことがないからです。戻るかもしれないし、戻らないかもしれない、また戻ったとしても以前と同じにはならないかもしれない。これって、リアルに誰もわからないんですよね。であれば、自然にまかすのではなく、意識的に再構築していく方が安全ですし、この際よりよいものに作り直すぐらいの気概でやるのがいいように思うのです。
大学の国際交流系の部署は、留学が再開されたことで、今年は恐ろしく忙しいでしょう。そうだとしても、これらの立て直しに、いま力を入れておくことは、ゆくゆく大きな価値を生み出すはずです。みんなが目の前のことに精一杯だからこそ、先を見て動く…。言うのは簡単でやるのはめちゃくちゃ大変なのですが、でもだからこそチャンスになりうるわけです。これってすごく頑張りがいがあることだと思うんですね。