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地域の人々を大学に呼び込む。大妻女子大学「大妻さくら祭り」が実践する”掛け合わる”イベントづくり

地域貢献や産官学連携が大学の魅力として評価されることもあり、多くの大学が“開かれた大学”を実践するべく、さまざまな取り組みを行っています。今回、見つけた大妻女子大学の取り組みも、これに類するものなのですが、やり方が効率的かつ徹底的。参考になりそうなので、こちらについて取り上げようと思います。受験生以外を振り向かせようとするなら、これぐらいする必要があるよなと、あらためて思い知らされました。

社会に向けたイベントとコンテストを同時に開催

では、どんな取り組みなのかというと、「大妻さくら祭り」というイベントです。今回この取り組みを見つけたのは、立て続けにふたつのリリースを見つけたことがきっかけです。 

ひとつは「大妻さくら祭り」パンフレットの表紙デザイン画の募集、もうひとつは同イベントに伴って開催される俳句大賞の作品募集です。大学が地域向けのイベントを開催すること自体はめずらしくないのですが、それと連動させて広く社会を巻き込んだ取り組みをふたつも同時にやるというのは、かなり珍しいように思います。

ちなみに大妻女子大学公式サイトにある昨年のイベント紹介ページを見てみると、俳句大賞への募集は1,001句。イベントのなかの、いちプログラムだと考えると、かなりの募集数ではないでしょうか。なお「大妻さくら祭り」は、2023年度までは「大妻さくらフェスティバル」という名前で開催されていたようです。

2023年度の大妻さくらフェスティバル俳句大賞結果のPDF。俳句対象は「小学生以下の部」「中学・高校生の部」「一般の部」の3部門で開催された。

社会向けイベントと、社会一般を対象にしたコンテストを一緒にやってしまうことで、相乗効果を狙うというのは納得感があります。本イベントは、さらにコンテストを複数一緒にやってしまうところに剛腕ぶりというか、思い切りのよさを感じました。とはいえ、相乗効果が見込めるという確信があるのなら、やり切ってしまった方が、結局はいいのかもしれません。

地域のイベントと連動することで”出かける”ハードルを下げる

このイベントのやり方で秀逸なところは他にもあります。東京都千代田区が毎年開催している「千代田のさくらまつり」の一環として開催していることも、そのひとつです。うまく地域のイベントと連動させることで、告知コストが下がりますし、何より「千代田のさくらまつり」に来た人たちに”ついで”に来てもらえる。来訪者の視点に立つと、出かけるかどうかは、かなり大きな決断なのですが、ついでに寄るか寄らないかというのは、そこまで大きな決断にはなりません。そういう意味では、同じエリアの大規模イベントに乗っかることで、一番ベースとなるところのハードルを大きく下げられているといえます。

千代田区観光協会の公式サイトにある「千代田のさくらまつり」の特設ページ

さらに、というか、そもそものところかもしれないのですが、このイベントの趣旨って「千代田学」という千代田区と区内の大学が共同で行っている取り組みや、学生たちの「地域連携プロジェクト」の発表の場なんですね。大学の祭りというと、大学祭的なものをイメージしてしまいがちですが、大学×地域の活動の報告が、このイベントの主目的になります。そう考えるとTPOをちゃんとわきまえているというか、「千代田のさくらまつり」と同じタイミングにやっていることをちゃんと踏まて、イベントがデザインされているなあと感じました。

大学への興味がうすい地域の人たちをどう攻略するか

「大妻さくら祭り」は、学内の社会向けイベントとコンテスト、さらには地域のイベントと連動して開催するという、複数のものを掛け合わせることで盛り上がりを創出する戦略をとっています。これら一つひとつは、どの大学にも、どのエリアにも普通にあるものです。でも、ここまで掛け合わせているところは、そうそうないように思います。

受験生であれば、大学に興味があるし能動的に情報を取得しようとします。しかし、それ以外の人は、そもそも大学を自分と関係のある場所だと認識していない場合がほとんどです。そういった人は、大学の公式サイトに告知を載せておいても、まずは見に来ないでしょう。また受験生なら、大学のどんな情報に興味をもつかは容易に想像がつきます。でもそれ以外の人たちが何に興味をもつかは予想がつきにくいうえ、興味の在り処は人によってかなり違うはずです。

想像するとすぐわかるような事実ではありますが、こうして並べてみると、大学の地域向けイベントは、なかなかのハードモードなのだということがよくわかります。大妻女子大学は、こういった状況がわかっていて、なおかつ費用もマンパワーも限られているなかで、どうしたら上手くやれるかを考えた結果、“掛け合わせる”という手法に行き着いたのでしょう。この考え方、アプローチは、説得力があるものなので、地域向けイベントを企画するときに、頭の片隅に入れておいていいように思いました。

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