#20「Webライター」と「テント生活」の親和性を考える

「『Webライターのササキさん』って、かわいそうな人生の人が多いよね」

小学生の娘がこう言った。

娘よ。とりあえず、Webライターの佐々木ゴウさんと、ジャーナリストの佐々木俊尚さんに謝ろうか。

娘が読んでいたのは、佐々木ゴウさんのこんなブログ。

「早稲田大学法学部を卒業後、新卒でNTTに就職。その後Webライティングで独立して、半年で月商100万円突破」

「早稲田出たけど職と家がなくなったので、テントで生活することにした」


このふり幅の大きさに、小学生でなくとも驚くだろう。

さらにブログを読み進めると、佐々木ゴウさんのふり幅の大きすぎる人生像が明らかになる。

・高校時代に国語の現代文で偏差値80超え

・高校時代にモデルと付き合い、自分も読者モデルを務める

・早稲田大学法学部から新卒でNTTに就職。海外勤務。

しかし、その一方で

・幼少期より年上女性にあこがれ続け、いろいろやらかす

・ネットゲームにハマり(3年間の総プレー時間6500時間超)、浪人する

・突然ギャル男になって「鬼太郎」というあだ名をつけられる

・24歳で結婚するも、人生をめぐる価値観がすれ違い、やがて離婚

・その後、会社を辞めてテント生活に

この時代にかけられたというお母様の言葉が、圧が強い。

「住所不定無職バツイチってこと?どんな犯罪犯しても神妙な顔で "あの子ならやりかねない。。。" って言うからね」

しかし、なんだかんだいいつつも息子の生き方を受け入れるお母様、強い。そして何気に放たれる言葉のセンスたるや、最高。

ただ、ブログの時系列や内容を注意深く追っていくと、決して「お金がなくなったからテント生活を余儀なくされた」のではない。この当時、既にWebライターとして一定の収入は上げておられたのだから。

「実は家ってなくても生きていけるんじゃない?と思い」

と、自らテント生活を選ばれたことが分かるのである。

今から4年前に書かれた、佐々木ゴウさんのこのブログはとても面白い。

ただ、私がこれを目にできたのは、2022年2月現在の佐々木ゴウさんが、このブログについてTwitterでつぶやいておられたから。今や日本最大級のライター組合のトップで、ビジネス界の大物の懐にガンガン飛び込みながら、すごい勢いで自らのビジネスを加速されている「2022年の佐々木ゴウさん」を知っているからだった。そうでなくては、私はこの記事にたどりつけてすらいなかっただろう。


よく、「情報発信は『誰がするか』が重要だ」と言われる。

たとえ、全く同じ内容を発信したとしても、筆者は読者から、「お前は何者だ」ということを問われ続ける。

つまり、2017年の「テント生活をしている一人の若者」である佐々木ゴウさんの記事はそんなに読まれないが、2022年の「Webライター界における成功者」である佐々木ゴウさんの記事は多くの読者に読まれるという事実があるのである。

佐々木ゴウさんは、この「何者か」から自由になりたかったのではないだろうか。千葉高校から早稲田の法学部に入って、それからNTTに就職。おそらくこじゃれたマンションも借りて、キレイな奥様もおられて。

そんな一般的には「絵に描いたような幸せにみえる生活」から、「バツイチで無職でテント生活」への転換。

それでも、自分は自分だし、人間としては何も変わっていない。見える景色の本質は同じまま。

それを確かめたくて、わざわざテント生活を選ばれたのかな、と勝手に想像した。

ネットなどで見る限り、佐々木ゴウさんの他人との距離の取り方は、常にとてもフラットに思える。大きなセミナーで、どこかの社長さんっぽい人と語っているときも、はたまた十数名程度の校正部のネット学習会にふらっと参加されるときも。相手が社長であっても、はたまた一介の主婦であっても変わらない。

エリートな学者としての人生を全て投げ捨てて、突如ホームレス同然の伝道者となった、2000年前のあの人のように。そういえばこの人、テントをつくる職人さんでもあったんですよ。

「わたしは、自分の置かれた境遇に満足することを習い覚えたのです。貧しく暮らすすべも、豊かに暮らすすべも知っています。満腹しても、空腹であっても、物が有り余っていても不足していても、いついかなる場合にも対処する秘訣を授かっています。(フィリピの信徒への手紙4章11節)


この記事を読むと、佐々木ゴウさんの「原点」が少しだけ分かる気がします。

だから「Webライター」なのか、だから「組合」なのか、と。

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