【講演①/5】かみさまからのおくりもの親であることを楽しむために
児童書出版社、こぐま社において「友達に贈りたい本」部門の売り上げ第一位をほこる絵本、「かみさまからのおくりもの」。
その著者である樋口道子(ひぐちみちこ)さんが、2013年9月12日に行った講演の内容をまとめたものです。
こどもの幸せはどこからくる?
母親はこどもの幸せを、そして健やかな成長を願っています。
しかし、多くの母親は、毎日の生活があまり健やかでないことを感じているんです。
子育てにあれもこれもと思い、不安やイライラ、悩みにとらわれています。
では、こどもの幸せは、何によって与えられるんでしょうか。
私は小さいころ、とても引っ込み思案で、通知表には
「大きな声が出せるようになるといいですね」
と書かれていました。
でも、今ではこうして皆さんの前でしゃべらせていただいているんですけどね(笑)。
同じように、こどもはちゃんと成長するし、変わっていくんですよ。
私は大阪の大学を卒業後、中学校の美術教師になりました。
でも、こどもに成績をつけて評価することに困惑して、教師職をやめ、それから病院内学級の教師になったんです。
その後結婚して岐阜県に移り住み、長女・和子を授かりました。
どろだんごとざぶとん
そんな、和子を幼稚園に迎えに行ったある日のこと。
ほかの子はみんなジャングルジムに登ったりボールを投げたりして遊んでいるのに、わが子は一人で園庭のすみでどろだんごを作っている…。
「うちの子はなにもできない」
「それでは将来この子が困る」
そこでかつて教師だった血がさわいで、わが子の運動能力を鍛える3年間プログラムを作成。それを娘に実践させることにしたんですね。
家の中に嫁入り道具のざぶとんを敷き、娘にその上から飛び降りるようにさせたんです。
そして、とまどってこわがる娘に、
「なにやっているの」
「そんなことじゃ困るよ」
という言葉をぶつけてイライラしていました。
がんばらなくては、これはこどもの幸せのためだから、と信じながら。
うちの子じゃないような顔をして
しかしあるとき、娘が「お母さん」と自分を見る顔が、
うちの子じゃないような顔をしていました。
「どうしていいかわからない。」
「おかあさん、怒っているの?」
というような、私の表情を探り見るような顔だったんです。
そのとき、初めて娘の内面がこわれ出していることに気づきました。
「こんなことをしていてはいけない」
とハッとしたんですよね。