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#41 呪術かあさん

子どもが家庭科で裁縫の授業を受け、作品(?)を持って帰ってきた。昨今は家庭科も調理実習ができないらしく、じゃあ、どうしているのかと聞いたら、「エア調理実習」とかいう、すばらしく面白味のない授業をやっているらしい。

しかし、本人いわく、もっともイヤなのは裁縫なのだという。

「裁縫なんて習って、将来、どんな役にたつの?」

確かに、家族の晴れ着を全て手縫いしたわが祖母の時代とは違い、いまどきの主婦は裁縫のスキルなどなくても、どうにか生きていける。

ただ、一つの例外を除いて。

それは、「わが子の入園準備」である。

かくいうわたしも数年前、入園予定の幼稚園から配付された1枚のプリントを手に途方に暮れた覚えがある。

そこには、幼稚園生活に必要となる各種グッズのサイズが表記されているとともに、最後には「おかあさんのてづくりを期待します」と書いてあったのである。

いやー、期待されても、正直困るんですよねー。

しかし、「作りなさい」でも、「作れる方は作ってください」でもなく、「期待します」って、園のほうでもいろいろ考えているよなあ。

そこには「あくまで強制はしないけど、やっぱり、おかあさんたるもの、わがこのためにはてづくりの品がいいですよね」的な圧を感じるのである。

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そこで私は、しぶしぶ市販の「てづくりキッド」っぽいものを買ってきて、制作にとりかかった。これはすでに布に展開図が書いてあり、あとは指示のとおりに切ってぬうだけ!初心者でも簡単!的なセットだった。

しかし、本当の初心者というものは、まずはミシンで布が縫える状態にまでもっていくのが既に大変なのである。案の定、上糸と下糸がうまくかみ合わず、糸くずの山ができていく。

そうしてたいそう不毛な戦いの結果、どうにか絵本袋を1つ縫い上げた。しかし、残るもう一つの絵本袋と上靴ふくろは完成することがなかったのである。

「このまま手づくりを続行したら、愛情どころか呪いがこもってしまう」

そう判断し、今度はネットでハンドメイドマーケット的なサイトを開く。そして子どもが好きそうなカワイイ作品を選んで、ぽちっとな。はい、完了。

こうしたサイトでは、希望に応じた布やサイズでのオーダーメイドもしてくれるそうですよ。お金さえ積めば。

まあ、裁縫はできないよりできたほうがいいけど、ムリして苦手なことをするより、得意なことで稼いだカネで解決するという手もあるよ、とはさすがにわが子には言っていませんが。




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