#55 ああ、広報委員
「今の時代にレイアウト用紙に手書きで指示するの?」
「イラストも紙の本から選ぶの? ネットの無料素材使えないの?」
少し前、子どもの学校のPTA役員で「広報委員」をやりました。しかし、そこは子々孫々と受け継がれる「伝統」をそのまま延々とたどるだけの謎の世界。
「作業効率? 何それ? おいしいの?」
という驚愕ワールドだったのです。
広報委員のミッションは、広報誌を年3回発行すること。しかし、そのために集められた委員は全部で20人近く。
「たかだかA4、8ページそこそこの印刷物を出すだけに、こんなに人数が必要なの?」
「ぶっちゃけ、1人でできるやん」
元印刷会社員の私は、ひそかに思ったわけです。
だって、時給1,000円で9時~17時(休憩1時間)勤務だったとしても、そのために20人が1回仕事を休まなくてはいけないとなると、単純計算でも
7,000円/日×20人=14万円
なんつー費用のかかる広報紙なんだ。
しかし、PTAとは「絶対に目立ってはいけないシリーズ2022」。
「何も知らないので、教えてくださーい。言われたとおりにやりまーす」
という顔をして切り抜けるのが一番無難なんですよ。
ただ、その年の委員長さんは賢い方で、
「全体を3つのグループに分けて、各グループで1つの号を作成しましょう。全ての回に全員が出席する必要はありません」
ということになったので、事実上1回参加すればよくなったのです。
そこで各自で担当行事の写真を撮影したり、先生から原稿を集めたあと、編集を行うべく学校に集合しました。
「え、ナニコレ?」
しかし、学校で我々が目にしたのは、昔懐かしいレイアウト用紙。まさか、パソコン一つで、いや最近ではスマホやタブレットでも編集ができるこの時代に、レイアウト用紙にすべて手書きでデザイン指示をさせられるとは思っていませんでしたよ。
しかも、空いた場所に入れるイラストは、使い古されてボロボロになった昭和臭ただよう「●●イラスト集」という本から選んで指定? ネットからフリーデータをダウンロードして使ったらいかんのかい!
かくして、編集作業はほぼ丸一日に及んだのでありました。
「これ、誰かがパソコンでデザインするわけにはいかないの? そのほうが早くない?」
しかし、PTAの鉄のおきては
「誰にでもできる形でやらなくてはならない」。
つまり、もし今年、だれかがMACとかでデザインしてちゃちゃっと済ませたとしても、来年はどうするんだということですね。なんせ、PTA役員をやられるママさんたちは、
「年賀状の印刷ができなくて、パパにやってもらったわ」
というぐらい、パソコンを使えない方のほうが多いから。
だから、めちゃくちゃ効率が悪いにもかかわらず、レイアウト用紙に手書きで指示をして、それを印刷会社で組版するという流れがおそらく昭和の時代から続いてきたんでしょう。そして、令和の時代もそれが延々と継続されていくのでしょうね。
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