三鈷杵。目の前にある障害を取り除く事のできる密教法具
前回までは、金剛杵の基本的な部分と、それに続いて独鈷杵(とっこしょ)について解説しました。
今回は、金剛杵の中でも一番有名であろう「三鈷杵(さんこしょ)」について解説します。
三鈷杵の形状と意味
では今回、解説する三鈷杵と前回の独鈷杵ではどのような違いがあるでしょうか?
(独鈷杵の画像)両端が三本の鉾になっています。
それに加えて、真ん中の一本に向かって、二本の鉾が内側に向いています。
三本の鉾は、
仏・蓮・金の三部
または
身・口・意の三密
を象徴するといわれています。
前者の三部とは、仏・蓮・金を指しますが、解説が難解になりますので、今回は割愛します。
一方は仏の身・口・意の「三密」を象徴し、もう一方は、衆生(人間)の身・口・意の「三業」を象徴していると言われます。
そして、鉾が内向きなのは、この三業を三密で抑え込む。または三密と三業を一体化させ、制御するという意味があります。
三密と三業
ここで前提となる「三密と三業」について、少し触れます。
最近では、三密とは感染症の拡大を防ぐためのソーシャルディスタンスのことを指しますが、密教で使われる言葉です。
同じ「身(しん)・口(く)・意(い)」なのですが、
三密
身密(しんみつ):・手に諸尊の印契(印相)を結ぶ
口密(くみつ):(語密)・口に真言を読誦する
意密(いみつ):意(こころ)に曼荼羅の諸尊を観想する
三業
身業(しんごう):肉体に関わる行為
口業(くごう):発する言葉に関わる行為
意業(いごう):考えや思考に係る行為
このように三密は清いものであり、三業(さんごう)は人間の行う醜い行為というイメージで考えてもらえれば良いと思います。
三鈷杵の効果
経典に三鈷杵は「行者が手に三鈷杵を教らば、毘那耶伽(びなやか)も障難を為さず」と記されています。
どういった意味かといいますと、「護摩や念誦(ねんじゅ)のとき手にこれを持てば、物事が成就する」という意味です。
MEMO
念誦とは・・・心に念じて、口に仏の名や経文をとなえること
毘那耶伽(びなやか)は障害や障壁のことを指しています。
つまり、目の前にある内外の障害や障壁を取り除く事のできる密教法具です。
MEMO
高野山には、三鈷の松と呼ばれる松があり、本来2本の松葉が3本であることが有名です。
まとめ
今回は三鈷杵について解説しました。
宗教的な解説をかなり省いてわかり易い表現にしましたので、細かい意図が伝わらない可能性がありますので、ご興味のある方は調べてみてください😊
では、次回は五鈷杵について解説します。
ー高野山法徳堂
PS. 真鍮でできた本格的な三鈷杵から、ミニュチュアのお守り密教法具などもありますので、ご興味がる方は覗いてみてください😊