公民連携で小田原の未来を創る!人・もの・お金を地域でまわせ!
経済なき道徳は戯言であり、道徳なき経済は犯罪である。
小田原が生んだ偉人二宮尊徳翁の報徳思想にあるように、心豊かに暮らせる地域社会を構築するには「道徳と経済の両立」が必要です。間もなく財政赤字になる小田原においては、財政収支の悪化に合わせた新たな分度の引き直しが求められています。子育てや福祉も充実した心豊かに暮らせる町を本当に目指すなら、もっと踏み込んだ政策を行うことが必要です。収入を増やすか?黒字を維持できるまでの支出削減を行うか?これまで以上の真剣な検討が必要です。
縮小する時代にあわせた新たな分度の引き直しを
これまでも述べたように、小田原市の予測によれば人口減少と扶助費(子育て・教育・福祉・生活保護)の高騰により、2年後の2022年(令和4H34)から財政収支が赤字になると予測されています。*抜粋:「中心市のあり方」に関する任意協議会
また、市内のおよそ195ある公共施設は昭和40年代から50年代にかけて建設され老朽化したものが多く、小田原アリーナなどが建設されて以降20年余り、ほとんどの公共施設が建設されていないことをお伝えしました。
そして今後、老朽化した公共施設の維持を考えると1070億円が必要とされていますが、これに対して市が現在予定する対策を講じても、まだ約500億円が不足すると予想されています。しかも、この中には市内小中学校の計画や現在進行中の大型案件は含まれていないのです。
小田原市公共施設再編基本計画(平成31年3月)
http://www.city.odawara.kanagawa.jp/global-image/units/384398/1-20190402170700.pdf
収入が減り続け、支出が増え続けるのなら、これまでの手法だけではダメだということ。
小田原の生んだ偉人 二宮尊徳翁はかつて財政再建を図る際には、過去のデータに基づき将来の収入と支出を緻密に予測しながら、新たな分度を引き直したのです。つまり収入に見合った支出の見直しを行い、村々をあげて収入増に取り組んだのです。
現在選挙戦真っ最中ではありますが、将来の小田原の分度をどこで引き、今後4年間具体的にどのような政策を実行し、リーダーシップを発揮するのか?本来これが候補者の示すべき最も重要な事(マニフェスト)であり、争点とすべき点かと思います。
コロナウィルスの影響もありますが、この具体的な話が聞けないまま、市民間でもじっくり議論されないまま、候補者の中傷や賛美ばかりが目に付くことはとても残念な気がします。
コロナ対策として緊急財政支出が増え税収が減り、今後益々加速するであろう財政収支の悪化を予測しながら、それでも子育てや教育・福祉や介護を充実させていくためには、具体的な数字を伴ったビジョン(分度)を持ってリーダーシップを発揮し、賛否両論ある中でも、これを決断実行することが、次の任期を担う市長の仕事だと思います。
結果的に将来の子供達へツケを負わせることは避けなければなりません。「しょうがない」とか「できるだけ」では済まないのです。
稼ぐ小田原が未来を変える!
そこで私たち報徳塾が思っている具体的な方策論の概略を以下にお伝えします。稼ぐというと何かとても悪い印象や極端な想像をする方がいるようですが、ここで言う「稼ぐ」の意味は、増え続ける財政予算をカバーするために、これまでにない新たな取り組みで「町全体で稼ぐ=活性化する」という意味です。子育ても・介護も社会保障ももっと充実させたいなら、これに伴う財源を生まなければ、魅力的な政策も実行できない。現在小田原市では良い取り組みも数多く行われていることは承知していますが、今のペースでは足らないですし、間に合わない。もっと加速させないと後々大変なことになることをもっと自覚すべきだと思います。
小田原の街づくりにも経営感覚を
今後の小田原に必要な政策の考え方を単純明快にお伝えすれば、それは下の図のように①街全体の収入を増やすこと ②行政の支出を減らすこと。極めて単純ですがこの2点です。小田原の活力を上げることができれば、これは県西地域2市8町の広域にも良い効果をもたらすはずです。
①収入を増やすこと
人口減少により市民が払う税金が減少し、大手チェーン店などの台頭により地元企業が衰退し地元に納税する企業が減少し続ける中では、これを防ぐことも有効です。人口を維持増加させるには、以前の寄稿にあったような移住促進政策や、起業時のサポートにつながる政策などの「定住人口」に対する政策も有効です。
また、小田原であれば箱根や伊豆を訪れる観光客や、新幹線・小田急線・東海道線などを利用する人達に小田原を訪れた際にお金を使ってもらうのも効果的で、これら「交流人口」に対する政策を行うことも有効です。
よく観光振興というと、ある特定の業種のみが恩恵を享受するだけだという人がいますが、そんなことはありません。観光事業者が受けたお金は従業員の給与や、材料など仕入れ業者への資金となり、地域循環が構築できていれば2次、3次へと波及しながら地元経済に大きく寄与するのです。
②支出を減らすこと
次に支出を減らすのであれば、支出項目をチェックしながら様々な項目に対しての多様な方策があろうかと思いますが、ここでは公共施設再編や公共事業における公民連携事業(PPP/PFI)についてのみ言及します。
行政によくある考え方も見直しを
ご承知の通り、行政の財政予算は単年度で会計予算が組まれるため、予算が議会で成立すると節約しながら利益を出すというより、確実に使い切る(遂行する)といった意識になりがちです。一般社会であれば少しでも多く利益を残しながら費用対効果の高い事業を行ったことが評価されますが、行政だとこうした考え方とは異なり、使い切らないと次年度から予算が削られたりすることもあるので、国・県・市町村問わず決まった予算を確実に使い切ることに主眼が置かれてしまいがちです。
イニシャルコスト・ランニングコスト
また公共施設建設においては建設時に必要なイニシャルコスト(初期投資)ばかりが議論され、毎年必要となる人件費や水光熱費等々のランニングコスト(維持運営費)は見過ごされがち。大型施設を作れば作るほど年間維持費が増大して財政予算を圧迫することに気づかないこともあります。
実際、地方ではあの破綻した夕張市をはじめ、青森のアウガなど、官主導で巨額の設備投資と年間維持費が重荷となり、経営破綻に追い込まれた事業も少なくありませんので、ランニングコスト(維持運営費)にも注力し削減することが重要です。
青森アウガ https://dot.asahi.com/aera/2018021600083.html?page=1
新たな取り組みを加速せよ
指定管理者制度から公民連携事業(PPP/PFI)へ
こうした公共事業や公共施設の維持運営については現在指定管理者制度が一般的ではありますが、全てではないにせよ今後主流になりつつあるのはPPPやPFIといわれる公民連携事業です。簡単に言えば、毎年一定額で指定管理者に支払っている委託費を見直して、これを削減して支出を減らすための新たな考え方で、民間の事業者へもっと大きなカタチで委譲するというものです。小田原市でも検討や導入が始まりだしています。
*ただすべての公共事業や施設に相応しい制度ではありません。
公民連携事業とは
地方公共団体やその外郭団体に限定していた公共施設の管理・運営を、株式会社をなどの営利企業・財団法人・NPO法人・市民グループなど法人その他の団体に包括的に代行させる制度。
参考例:沼津市
ここで参考事例として近隣沼津市が行った公民連携事業をお伝えします。
これは老朽化して利用者数も減少していた市立少年自然の家を民間事業者がリノベーションし2017年9月にオープンした事例で、築後年数が経過し修繕もままならない中で利用者が少なくなっていたにも関わらず指定管理料として年間数千万円が支出されていたものをやめ、新たに選定された事業者が地元金融機関などから資金調達を行ってリノベーション(改修)し、市側は税金も使わずに新たな事業者から家賃を受け取るようにした。市民はきれいに魅力的になった施設を利用できるようになったというものです。
INN THE PARK に関する記事
https://re-re-re-renovation.jp/projects/2604
以下の図をみればわかるように、これを実現したのは民間ですが仕掛けは行政の主導です。沼津市では平成27年から市役所内に複数の部署から集めた「公民連携推進担当」プロジェクトチームを発足し、メンバーは役所内での部署を横断する権限を持ちながら、民間をバックアップする公民連携事業を実施するにあたっての体制を構築しています。実際に私もこの担当者から話を聞く機会を得ましたが、その際びっくりしたのは実際にINN THE PARKの事業者が選定された後も、OPENまでの建築確認・保健所・消防署などへの各種申請にあたってもこのチームメンバーが一緒に同席してサポートしているのです。
実際に事業を行った方ならお分かりかと思いますが、縦割り行政で止まった案件や、あきらめたもの、遅れたもの、うまくいかなかったものがどれだけ多かったことか。素直に沼津市すごいなと感心しました。
また逆に、敢えて述べますが小田原市職員の方々にはとても有能で仕事ができる行政マンが多数います。将来への危機感を持ちながら日夜懸命に努力されている方々が多数いるのですから、持続可能な社会の構築を目指すにあたり、沼津市のように「行政は民間をバックアップする公民連携事業を実施する」といった明確な方針と立ち位置を明らかにし、公と民お互いの役割分担や政策立案へのスキームを構築したらと思うのです。
ここで提言しているのは批判でも何でもありません。より良い街にするためのPDCAを続ける上で、これまでの経験から抽出した課題解決の方策として提言しているのです。
人・もの・お金を地域でまわす取り組みを!
そして、今後の小田原にとってもうひとつ大切なことは「人・もの・お金」を地域で回すことができる仕組みづくり。加えてこの公民連携をできるだけオール小田原で作り上げることだろうと報徳塾では考えます。
残念ながら、この小田原ではこれまでも活発な行政と市民の交流や活動はあっても、経済活動として新たな好循環を生む地域連携や公民連携活動は、市の主導ではなく民間主導での活動から始まったものがほとんどです。
私たちが10年前から行ってきた小田原柑橘倶楽部の活動や、震災後に始まったほうとくエネルギーなど地域社会の課題解決を目的とした活動なども最初のスタートは民間側からであり、資金も行政から補助金など受けることもなく、民間側がリスクを負って調達し事業を立ち上げたものです。
今では良好な公と民の関係が構築できていますが、それは年月とともに徐々に連携が取れていったものですから、最初から沼津のような基盤が築かれていたらもっと良い結果がでたのではと思います。
もちろん全く協力がなかったという訳ではありませんが、それは広報的なものなどが主であって、制度改革や事業構築サポートといったものではありません。*単発的なイベント開催や継続的な経済性を伴わないワークショップ的な組織づくりはこれに値しないと思います
よって小田原では、沼津市のように「行政は民間をバックアップする公民連携事業を実施する」といった明確なビジョンと立ち位置が確立されておらず、本格的な推進態勢が整っていないため、民間側の案は行政側が策定した市のTRYプランに沿っていて、市が民間の協力を求めてこなければ、新たな公民連携事業の取り組みが始まらない環境であるといっても過言ではないのです。実現のためには事業趣旨や企画内容をいろいろな部署や役職の人に会って理解を得なければならず、莫大なエネルギーと労力と時間を要するのです。
商工会議所とも良好な関係作りを
民間の経済団体でいえば筆頭は商工会議所かもしれませんが、こことも意思の疎通がうまく取り交わされているように思えません。先述の通り市が進める事業はもともと市役所内部で既に決まってから進んでいるものばかりですから、結果的に民間(会議所)が知った後に提言をしても時既に遅く、かえって批判をしているように捉えられることも多くあるような気がします。
できることなら、上図の沼津の「まちなか相談所」などのように公と民がもっと連携しながら、地元中小企業をバックアップしたり小さな地域課題解決にも力を貸してくれたらなと。
また願わくば、基本方針や政策を立案する際にも、外部の有識者ばかりでなく地元でも能力ある民間団体や企業も加えてもらえたら。従来の使える補助金を探して実施する手法でなく、予算がなくとも公民連携で新たに経済効果を生む方策を知り、地元に精通した人を加えてもらえれば、もっと良いアイデアが生まれ、公民のコンセンサス(同意)も得られるのではと思います。
地元企業にアドバンテージ(優位性)を
そして持続可能な社会を本気で構築するのであれば、人・もの・お金を地域に循環させることの大切さを認識していただき、市が公民連携事業を行うにあたっても、できるだけ地元企業(納税者)を優先してほしいと思います。もちろん不公平となる癒着や実力がない企業に任せることは論外ですが、地元業者や地元JVなどに委託できれば市内へ循環するお金の原資ともなり最終的には市への納税として還流するのではないでしょうか。
現市政への批判としてではなく、PDCAの流れに準じて今後の課題抽出するとすれば、TOTOCOの指定管理者が結果的に地元外の業者に選定されたことや、また取り下げ再考となった公共施設包括管理業務委託(市役所本庁舎や学校など93施設の保守点検・管理業務)などは、PPP/PFI的な視点で経費削減を目指していたにせよ、いかがなものかと思います。結果的に地元民間企業を圧迫するような存在を作り上げてしまう結果となれば意味がありません。
やはり今後の公共施設再編時の建設や改修・継続的な維持管理にあたっても、市民サービスと共に、いかに地元企業をバックアップし、経済循環を育むスキームが構築できるかを考えていただき、どのようなプロポーザルの条件を設ければ良いか?大資本でない地元企業の永続的な発展をサポートできるかを考えてもらえたらと思います。
「行政は稼いではいけない」という公務員の方も多くいらっしゃいますが、令和の縮小時代において、これまでの公と民の役割や関わり方を見直し、新たなコンセンサスのもと、これまで以上に円滑な地方自治が行われることを希望します。
TOTOCOに関するニュース
https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/434167/030900147/?P=1
公共施設包括管理業務委託に関するニュースhttps://www.townnews.co.jp/0607/2019/10/05/500653.html
また、この意見に異論がある方、「小田原市だってやってる!」と思う方には、以下に報徳塾の講師でもある木下斉さんの記事のリンクを貼りますのでじっくり丁寧に読んでみてください。2013年の古い記事ではありますが記事中にある岩手県紫波町のオガールプロジェクトなどは、目指す理想は同じかもしれませんが、公民連携といいつつ今小田原で行われているものとは、似て非なるものだということがご理解いただけるはずです。
木下 斉 「稼ぐインフラ ― 人口縮小社会における公民連携事業」
https://synodos.jp/society/6053
少し批判めいた記事に思われるかもしれませんが、ここでは私たちが次の任期を担う市長さんに実行していただきたいことを率直に書かせていただきました。
さあ皆さん、いかが思われますか?投票日まであと数日。投票する私たちも次の小田原の4年間の為に真剣に議論し、考え、投票すべき時が来ています。コロナウィルスの自粛期間中でもあり投票率の低下が予測されていますが、そんな中でうれしいニュースも聞こえてきました。
日本人の政治への無関心さを実感した大学生のふたりが「VOTE FOR ODAWARA」というキャンペーンを展開してくれているのです。小田原の若者たちがひとりでも多く自分たちの将来を考え投票してくれることを祈念します。未来の小田原は私たちのようなオジサン達でなく、ぜひ若者たちで。笑
小林さん、能條さん、頑張ってください!
そして選挙が終わったら、私たち市民ひとりひとりも、一円融合の報徳精神でもっと協力しあって頑張りましょう!
大学生が展開する市民への投票喚起活動
https://www.townnews.co.jp/0607/2020/05/02/526206.html
活動ページVOTE FOR ODAWARA
https://voteforodawara.studio.design/
小田原が生んだ偉人、二宮尊徳翁は全ての人々が幸せに暮らすことができる報徳思想に則り、きちんとした調査立案に基づいた事業計画(報徳仕法)を実行して、道徳と経済の両立を図り、生涯600に及ぶ村々の再興を成し遂げました。
令和の時代は、人口が自然に増えていた、かつての時代と異なり少子高齢化が進む時代の変革期。街の収入は減り続ける中でも、子育てや福祉などはもっと充実させていかなければなりません。それには具体的に小田原の課題を抽出(CHECK・ACTION)し、具体的な政策を立案(PLAN)し、迅速に実行推進(DO)しながら、地域課題解決のためのPDCAを繰り返すことが必要なのではないでしょうか?
*この投稿全体は報徳流地方創生塾 小田原特別編 実行委員会(報徳二宮神社・(株)FM小田原)が行っております。
*これらの投稿は当初予定しておりましたセミナーがコロナウィルス感染拡大防止の為中止となったことから、WEBを活用して小田原の多くの市民の皆さまを対象に配信しております。
*また、私たちは元々ライターではありませんし、現在コロナの影響も甚大に受ける中で記事を作成投稿しています。本来あるべき丁寧な校正作業もままならないまま投稿しておりますことお許しください。万一事実と異なる内容あれば速やかに訂正・お詫び申し上げます。